八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百二話 長崎に来てその十一
「そうなのです」
「そうですか」
「だからです」
畑中さんは僕にさらに話してくれた。
「私は剣道をはじめたのです」
「直新陰流を」
「ある日乱暴者を街で見て私は止められませんでした」
そうしたことがあったというのだ。
「幼い頃、それを苦々しく思いました」
「街で暴れている人がいたんですね」
「そしてその暴漢を警察官の方が素手で止められていたのです」
「素手で」
「私はそれを見てです」
そのうえでというのだ。
「強くなろうと決意したのです」
「弱くて止められなかったとですね」
「そのことがわかったので」
「だからですか」
「直新陰流を学びはじめたのです」
「そして鍛錬を積まれて」
「免許皆伝にまでなり」
そしてというのだ。
「私はさらにです」
「鍛錬を続けておられますか」
「免許皆伝で終わりではないので」
「より強くなれる」
「ですから」
それ故にというのだ。
「私は今もです」
「剣道の鍛錬を積まれていますか」
「素手で闘う体術も」
そちらもというのだ。
「主に古武術を」
「剣道とルーツは一緒ですね」
「そのこともありです」
「そちらの鍛錬も積まれていますか」
「今も」
「強くなる為に」
「ただ身体が強くなるのではなく」
畑中さんは僕にさらい話してくれた。
「心身共にです」
「強くなってこそ」
「心が伴わない力はです」
「暴力ですね」
「その乱暴者や奈良県の暴力教師と同じです」
まさにそうした輩と同じになってしまうというのだ。
「心がない力は」
「暴力ですか」
「はい、私は暴力を見て自分の弱さを自覚しましたが」
「その暴力をですね」
「自分が備えてはです」
「本当に乱暴者と同じですね」
「自らが否定する輩と同じになってしまう」
それはというのだ。
「本末転倒そのものなので」
「お心もですか」
「備える様に精進しているつもりですが」
「それでもですか」
「まだまだです」
ここでまたと多くを見る目で僕に話してくれた。
「心は備わってはいません」
「そうなのですか」
「自覚するばかりです」
「僕はそうは思わないですが」
「いえ、それがです」
「違いますか」
「はい、私はまだまだです」
それこそというのだ。
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