お化け
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第五章
「親族を殺しまくったな」
「あの因果な御仁とな」
「頼朝さんって何百年前なのよ」
「八百年以上前じゃない」
「じゃあ貴方達八百歳以上?」
「妖怪みたいね」
二人は二匹の話を聞いてこう言った、そして自分達の言葉から気付いた。
「ああ、じゃあこのトンネルに出る妖怪達って」
「つまり貴方達なのね」
「そうだったのね」
「具体的には」
「そうした噂があるのは知っていたぞ」
「気にしていなかっただけでな」
二匹は二人に飲みつつ言った。
「わし等は人の肉には興味がないからな」
「食ったこともない」
「わしは木の実や魚で充分だ」
「わしは完全なベジタリアンだ」
猿に至ってはどうして覚えたのかわからないが英単語も出した。
「柿やアケビが好きだ」
「何で人間なぞ食わねばならん」
「けれど、ね」
「あの人のことがあるから」
「私達が小学生の時にここで死んだ」
「清原さんね」
希も美奈代も彼のことを思い出した、あの札付きの不良のことを。
「あの人殺したんじゃ」
「食べないまでも何かの力で」
「貴方達がそうしたんじゃ」
「違うの?」
「?何年か前に事故で死んだ馬鹿か?」
「あ奴のことか?」
二匹は二人の今の話に首を傾げさせて返した。
「ヘルメットを被らず真夜中の山道を凄い速さで走っていたな」
「百キロは優に出ていたな」
「わし等を見る前に派手に事故を起こして死んでいたが」
「あの馬鹿者のことか」
「あれっ、事故死って」
「そうだったの?」
二人は二匹の話に目を瞬かせて言葉を返した。
「そうだったの?」
「貴方達が何かしたんじゃなくて」
「せんせん、そもそもわし等がこの時間飲んでおるのはたまだしな」
「たまにこのトンネルで飲んでおるな」
「ここは雨も入らぬしのう」
「中々いい場所だからな」
それで気に入っていてというのだ。
「色々な場所で飲んでおるが」
「人も滅多に通らぬし」
「それで飲んでおるが」
「噂を聞きつけて来る者が来たと思えば妖力で隠れておったな」
「今は急に来たから隠れられなかったが」
「多少酔い過ぎておるしな」
だからだというのだ。
「わし等はな」
「そうであったがな」
「わし等は人は食わぬし手も出さぬ」
「殺すなぞするものか」
「これでも数百年生きておって仙人にもなっておる」
「獣でも仙人にもなれるからな」
二匹は二人にそのことは絶対にだと言い切った。
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