お化け
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第三章
「皆死んでよかったって言ってるわ」
「相当嫌われてたのね」
「ええ、そうよ」
実際にというのだ。
「嫌われていたわ」
「やっぱり」
「とにかくね、その人死んだから」
そうなったというのだ。
「あのトンネルで十二時にね」
「怖い話ね」
「ええ、本当に死んだからね」
「お化けに殺されたのかも」
「知れないわね」
二人でこんな話をした、二人は中学は一緒で高校は別だった。だが二人共家から通える大学に合格したが。
その合格発表の場でだ、二人は顔を見合わせて笑い合った。
「同じ大学の同じ学部だったのね」
「受かったのね」
「そうみたいね」
「じゃあまた一緒ね」
「一緒に楽しくやっていきましょう」
「そうしましょう」
二人で楽しく話してだ、共に合格を祝った。そして入学すると。
二人は大学の自転車部に入った、言うまでもなく自転車に乗ってツーリングをする部だ。その部活に入ってだ。
二人はツーリングを楽しんだ、自転車は存外金がかかりアルバイトもしつつそうしていた。そしてこの日は。
たまたま遅れてだ、二人の街まで帰ろうとするが。希は美奈代に時計を見つつ言った。
「もうすぐ十二時よ」
「そうよね」
美奈代も自分の時計を見つつ言う、二人共自転車競技の服とヘルメットを着けて自転車に乗っている。
「遅れたわね」
「お母さんには連絡したけれど」
「私も」
これは二人共だった。
「けれどね」
「外真っ暗だし」
「車は少ないけれど」
「参ったわ」
二人で真っ暗の街道を進みながら話す。
「急がないと」
「早くお家に戻らないと」
「すぐにね」
こう話しつつ全速で戻っている、だが。
ここでだ、美奈代は希にこう言った。
「ねえ、もうすぐあのトンネル行くけれど」
「トンネル?」
「あのトンネルよ」
「ああ、あのトンネルね」
「そう、十二時でしょ」
「じゃあ」
「出るかも知れないわね」
かなり深刻な声でだ、美奈代は希に言った。
「ひょっとしたら」
「私達が子供の時に」
「そう、あそこで死んだ人いたってね」
「お話したでしょ」
「じゃあ」
「出たらどうする?」
かなり真剣にだ、希は美奈代に問うた。
「その時は」
「振り切る?」
美奈代はこう希に言った。
「自転車だから」
「全速力で」
「そうする?」
「帰らないといけないし」
希は美奈代の言葉を受けて考える顔で述べた。
「もうね」
「遅いしね」
「だったらね」
「もう出て来ても」
噂のお化け、それがだ。
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