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インフレーション

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第七章

「もう強ければいいんです」
「敵は」
「はい、とにかく滅茶苦茶強くて」
「主人公じゃないと倒せない」
「それで主人公が出るまでは」
「仲間達で時間稼ぎですね」
「そうです」
 これまで通りというのだ。
「次から次に出して」
「主人公は修行でもさせて」
「適当にさせて」
「主人公と敵のラストバトルまでは」
「それでいきましょう、まあ敵の戦闘力が何かおかしくなってますが」
 フルーツ人編で惑星を潰したりするレベルになっているがだ。
「地球で戦ってもらいましょう」
「空を飛んで気を放って」
「インパクトだけを考えて」
 最早優先ですらなかった。
「それでいきましょう」
「それじゃあ」
「はい、それで」
「次のお話も描いていきましょう」
「とにかくインパクトですね」
「そうです、あともうそろそろ主人公高校卒業ですが」
「三年ですからね」
 舞台は高校でありだ、高校なら進級していく。
「もう卒業も」
「卒業はなしで」
「留年ですか?」
「いえ、もう季節が進むのはないってことで」
「そういうのは無視してですか」
「これからは描いていきましょう」
「それで卒業はしないんですね」
 富山もそこがわかった。
「例え季節は流れても」
「サザエさんやドラえもんです」
「ああした感じで、ですね」
「やっていきましょう」
「わかりました」
 富山は間後人の言葉に頷いた。
「それじゃあそれで」
「これなら主人公卒業しませんから」
「そこでも連載は続けられますね」
そうです、漫画のストーリーのうえでも」
 そうなるとだ、間後人は笑って話した。
「よくなります、では」
「そうしていくんですね」
「展開は、あと今の話が終わって次も終わったら」
「それからはどうしますか?」
「宇宙人から神様にいきましょう」
 相手をというのだ。
「人間と神様の対決です」
「大きいですね」
「はい、もうドーーーーンとです」
「ドーーーーンと、ですか」
「話のスケールを大きくして」
 そうしてというのだ。
「神様をやっつけるんですよ」
「そしてその神様は」
「これまでの敵より遥かに強い」
「戦闘力にして一億ですか」
「それ位でいきましょう」
「今は百万位が最高ですが」
「そこをうんと上げてです」
 身振り手振りまで交えてだ、間後人は富山に明るく話した。
「一億でいきましょう」
「わかりました、そうすれば読者さんのインパクトも凄くて」
「注目されますから」
「だからですね」
「うんと大きくいきましょう」
「そうですね、じゃあそれで」
「はい、やっていきましょう」
 こうしてだ、連載は続きに続き宇宙人の話から人造人間になり人造人間達との戦いも引き伸ばしに次ぐ引き伸ばしが行われ。
 それが終わってだ、神々との戦いになり。
 漫画は果てしないく続いた、しかし僅かな者は覚えていた。その漫画の最初を。
「一巻だとラブコメだったのにな」
「もう格闘漫画だな」
「それも強さが滅茶苦茶の」
「随分遠くにいったな」
「ああ、今じゃな」
 こう言うのだった、果てしない連載の中で漫画は途方もない方向に行った。しかし富山と間後人はまだ打ち合わせで明るく話していた。
「今度は異次元人ですね」
「そうです、戦闘力は一兆」
「一兆、凄いですね」
「とにかく派手にいきましょう」
 こう話してだ、実際に描いていく。二人はもう他のことは考えずインパクトだけを考えてひたすら連載を続けさせていた。後ろを決して振り返らず。


インフレーション   完


                        2017・1・21 
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