俯く顔照らす星
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第七章
「お酒は飲んでもいいけれどストレス解消して気持ちを切り替えて」
「そしてか」
「また書けばいいのよ」
「嫌なことは忘れろか」
「そうよ」
その通りという返事だった。
「それで書けばいいのよ、反省点を見出してそれを頭に入れて」
「前向きにか」
「それでまた書けばいいじゃない」
「そういうものか」
「そういうものっていうかそれしかないでしょ」
前向きに論文を書くしかというのだ。
「学者なんだし、ましてちゃんと書ける状況だしお仕事もあるなら」
「それだけでか」
「充分だし、もうどんどんね」
「明るく前を向いて書けばいいんだな」
「そう思うけれどどうかしら」
「そうかもな」
ヴィンチェロも考える顔になりレオノーラに言葉を返した。
「それじゃあな」
「ええ、じゃあね」
「ここは明るくいくな」
「そうしたらいいわ」
また言ったレオノーラだった。
「少なくとも今はすっきりしてるでしょ」
「走って風呂入って髭も剃ったからな」
「それならよ」
「すっきりしてか」
「やっていけばいいのよ」
「そういうものか」
「じゃあいいわね」
あらためて言ったレオノーラだった。
「また論文書きましょう」
「それじゃあな」
ヴィンチェロはここでようやくだった、レオノーラの言葉に頷いて。
そのうえでだ、こう彼女に言った。
「また書くからな」
「ええ、そうしなさいね」
「前向きにか」
「そうよ、前向きによ」
「そうすることが一番か」
「気持ちの持ちようってことよ」
レオノーラは今も明るく言った。
「それはね」
「学者の世界もそうか」
「じゃあ書くわよ」
「そうするか」
こうしてだった、ヴィンチェロはまた論文を書くことにして実際に資料を開いて学問に励みなおして論文を書いていった、それの彼を見て学生達も話をした。
「復活したな」
「ああ、髭も剃ったしな」
「酒も量が減ってすっきりした顔になった」
「また論文書くっていうし」
「頑張れるな」
「これまで見てられなかったが」
「それが変わったし」
復活したことが認められた。
「じゃあ次の論文はどうなるか」
「ちょっと見てみるか」
「前回もよかったと思うがな」
「まあ教授連中は石頭だしな」
「酷評するのが論文だって思ってるフシもあるし」
「それで落ち込んでたら仕方ない」
「忘れるのは一番だよ」
酷評にに対してはというのだ。
「それじゃあな」
「次の論文はどうなるか」
「楽しみにしておくか」
学内ではその彼を見てこうしたことを話していた、そして彼自身もだ。
レオノーラとデートをして食事を摂っている時にだ、笑ってこう言った。
「前回以上のな」
「素晴らしい論文になるのね」
「ああ、なる」
絶対にと言うのだった。
「教授連中も唸る位のな」
「確実によね、ただ」
「若しまた酷評したらか」
「その時はどうするの?」
「言われた通りさ」
明るく笑ってだ、レオノーラに返した。
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