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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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229部分:決戦その八


決戦その八

 ラダメスの火球が至近で放たれた。それは一度上に上がり急降下してきた。
「・・・・・・・・・」
 レックスはそれを見た。そして斧を一閃させた。
 火球は両断された。レックスは斧をそのまま振るった。
 斧はラダメスの左肩に振り下ろされた。肉と骨が潰れる音がした。紅い血飛沫が彼の肩から噴き出た。
「・・・・・・終わったな」
 レックスは言った。
「・・・・・・はい」
 ラダメスは答えた。
 斧が抜かれた。ラダメスは馬首に落ちそうになる。しかし彼は最後の力を振り絞り持ち堪えた。
「先に行っています。アゼル様と色々積もるお話がありますし」
「ああ。俺も後から行く。その時を楽しみにしている。アゼルにはそう伝えてくれ」
 レックスは彼に対して言った。
「わかりました。それではまたお会いするその日まで」
「ああ、またな」
 ラダメスは最後に微笑むとそのまま崩れ落ちた。レックスは彼に対して瞑目した。後ろから彼を呼ぶ声がした。
「・・・・・・・・・」
 レックスはラダメスから顔を離した。そして戦場へ戻っていった。
 解放軍は既にアルヴィスがいる本陣にまで迫っていた。皇帝の危機に駆けつける事が出来たのはフェリペとアイーダ、そして彼等の直属の部下達だけであった。その他にアルヴィスの下にいるのは彼を常に護衛する近衛兵達だけであった。
「他の者は・・・・・・?」
フェリペは主の問いに目を閉じ首を縦に振って答えた。
「わかりませぬ。こうも寸断され取り囲まれてしまっていては・・・・・・。皆無事だといいのですが」
「そうか・・・・・・」
「我が親衛隊もその殆どが倒れたようです」
 アイーダが言った。
「多くの者がシアルフィ軍との戦闘で倒れました。皆立派な最後でありました」
「そうか・・・・・・。惜しい者達だった・・・・・・」
 アルヴィスはそれを聞いて沈痛な声を漏らした。
「はい・・・・・・。陛下にそう言って頂ければあの者達も本望でありましょう」
「・・・・・・・・・」
 アルヴィスは前を見た。そこにはシアルフィの大軍旗が翻っている。その下にはあの若者がいた。
「ここまで来たか・・・・・・」
 彼はティルフィングを縦横に振るっている。炎騎士団の将兵達は為す術もなく倒れていっている。
(よく似ている。あの時に、そしてあの男に)
 彼は時があの時に戻ったように感じた。そしてそれが終末の時であると悟った。
「勝敗は決したな。我々の敗北だ」
「・・・・・・・・・」
 フェリペもアイーダも答えられなかった。アルヴィスはそれを見て次の言葉を口にした。
「私はこの場所に残る。そして最後まで武人として戦おう」
 彼はシアルフィの旗を見ながら言った。
「それはなりません」
 アイーダが顔を上げて言った。
「ここはシアルフィまでお逃げ下さい。そして再びシアルフィ軍に対し決戦をお挑み下さい。退路は私が確保致します故」
「馬鹿な、卿等を置いて何処へ行くというのだ」
 アルヴィスは顔を曇らせて言った。
「・・・・・・それは道です」
 アイーダは言った。
「道!?」
「はい、陛下が歩まれる真の道です」
「真の道・・・・・・!?」
 その言葉を聞いてアルヴィスはいぶかしんだ。アイーダは言葉を続けた。
「今はヴァルハラに旅立たれる時ではないということです。フェリペ殿、陛下を頼みましたぞ」
「はい」
 フェリペと近習の近衛兵達がアルヴィスの周りを固める。そして主を半ば強引に急かした。
 最早アルヴィスにはどうする事も出来なかった。こちらに背を向け目の前に迫った解放軍の大軍と対峙するアイーダの方を振り返った。
「・・・・・・死ぬなよ」
 言っても無駄なのはわかっていた。しかしそう言うしかなかった。
「勿論です」
 アイーダもそう言うしかなかった。近衛兵達が馬を走らせた。アイーダは遠くなっていく蹄の音を聞きながら心の中で言った。
(陛下、おさらばです)
 前から緑の髪の男が来る。最後の時が来た、と悟った。
 
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