ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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227部分:決戦その六
決戦その六
アーダンはジェルモンと対峙していた。二人は互いを見て笑みを返し合った。それはまるで旧友同士のようであった。
「お久し振りです。ジェルモン殿」
アーダンが言った。
「こちらこそ。こうしてまたお会いできるとは思いもよりませんでした」
彼等はやはり旧友同士であった。それぞれの父の代からの旧知の間柄でありバーハラの戦いでは槍を交えてもいる。
「バーハラでの続きを所望致します」
「こちらこそ」
二人は互いに礼をした。そして槍を構え撃ち合いだした。
激しい撃ち合いであった。三十合を越え五十合を越えた。百合に達した。まだ決着は着かない。
百五十合に達した。ジェルモンの槍が鈍ってきた。アーダンの槍が煌いた。
その槍がジェルモンの胸を貫いた。彼はゆっくりと、大きな地響きを立て後ろに倒れていった。
「御見事でした。また腕を上げられたようですな」
胸から槍を引き抜きかがみ込み気遣うアーダンに対し声をかけた。
「ジェルモン殿こそ。素晴らしい槍裁きでしたぞ」
アーダンも倒れ付すジェルモンに声を掛けた。二人の言葉に憎しみや恨みは無かった。相手を称え合う言葉だけであった。
「最後に悔いの無いいい勝負が出来ました。礼を言いますぞ」
「はい」
「今度はヴァルハラでお会い致しましょう。それまで・・・・・・おさらばです」
ジェルモンは静かに、そして満足した顔で目を閉じた。炎騎士団の宿将がまた一人ヴァルハラに旅立った。
帝国軍の将達が次々と倒れていく中帝国軍傭兵隊長ロベルトはデューと向かい合っていた。
「ロベルト、まさかこんな所で会うなんてね」
デューの口調からは普段の明るさは無かった。哀しさが漂っていた。
「ああ。皮肉なものだな。人の出会いというやつは」
ロベルトも渋い表情で言った。
「俺らが子供の時一緒にあちこち回ったの・・・・・・覚えてるね!?」
「当然だ。宝を掘り当てたりあくどい金持ちから盗んだり色々やったな」
「憶えててくれたんだね。・・・・・・その時ロベルトが教えてくれた太陽剣、本当に役に立ったよ」
「・・・・・・そうか」
彼は静かに言った。
「それではその太陽剣、見せてもらおうか」
「うん」
二人は剣を抜いた。銀と金の火花が飛び散った。
ロベルトの突きをかわしたデューはその腹に突きを返した。剣が突き刺さった瞬間刀身が黄色く輝いた。
ロベルトは倒れた。身体中の精気を奪われた様に動けない。そのまま力が無くなっていくのがわかる。
「見事だ。俺よりも上になったな」
「うん・・・・・・」
デューは滲んだ声で答えた。
「・・・・・・泣く必要は無いぞ」
黄色い瞳に涙を滲ませようとしているデューに対して言った。
「御前は勝ったんだ。喜ぶことはあっても悲しむことはない。それに俺は今嬉しいんだ」
「えっ!?」
「こうして再び御前と会えてその成長した姿を見れたんだからな。立派になったな」
「・・・・・・・・・」
「御前と会えてアルヴィス陛下に御会いする事が出来た。いい人生だった。それが今御前に看取られて終われるんだ。悲しむ事なんか何も無いだろ」
「うん・・・・・・」
デューはゆっくりと頷いた。
「俺の剣は御前にやる。安物がが使ってくれ」
「わかったよ。大事に使わせてもらうよ」
「そう言ってくれると有り難いな。・・・・・・あばよ」
彼はそう言うと息を引き取った。
デューはロベルトの亡骸から剣を取ると自身の腰に着けた。
「さよなら」
彼はそう言うとその場を後にした。
この剣は業物として知られる名剣であった。彼はこの剣を常に腰にかけその死後は家宝として何時までも残された。
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