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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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223部分:決戦その二


決戦その二

 まず徹底した訓練により魔道師の魔力と技量を上げた。次に騎士団の部隊と共同訓練を進めその連携を緊密なものとした。
 とりわけ特筆すべきはその用兵にあった。魔道師達を横に並べ長方形の方陣を作った。その方陣からメテオを斉唱させたのである。
 これは凄まじい威力であった。扱いの難しさからくる命中率の悪さが弱点とされていたメテオであったが斉唱することによりそれは問題とはならなくなった。否、アルヴィスの手で厳しく鍛え上げられた彼等のメテオは恐ろしい程正確であった。
 空から舞い降りる星々の直撃を受け敵軍の将兵達は吹き飛んだ。そこへヴェルトマーの精兵達が突入する。人呼んで『流星陣』と名付けられたヴェルトマーの必勝戦法を知らぬ者はいなかった。その証としてこれ程遠距離魔法を効果的に用いているのは今の時点においてアルヴィスだけである。如何に画期的な戦術であるかだ。
 先の大戦で最も有名な戦いである『バーハラの戦い』もこの戦術を応用した。シアルフィ軍の決死の戦いにより思いもよらぬ損害を被ったもののシアルフィ軍の過半数を討ち大陸随一の勇将シグルドを死に追いやったのである。
 そのことにおいても解放軍にとっては忘れられない陣であった。流星陣の打倒とはセリスにとってもオイフェにとっても避けては通られぬ路なのである。
「御安心下さい。今日の夕方には大陸の趨勢は決しております。帝国軍はこのシアルフィの平原を死の寝床とするでありましょう」
 オイフェは主君に対して言った。
「というと何か策があるんだね」
「はい」
 彼は答えた。
「それは!?」
 セリスは問うた。
「・・・・・・この陣を御覧下さい」
 ここでオイフェはようやく笑った。いぶかしんだセリスは首を傾げたがすぐに気付きその首を戻した。
「お解りになられましたな」
「うん、うん」
 彼はしきりに首を縦に振った。
「さあ角笛の音を待ちましょう。ギャラルホルンが鳴った時全ての幕が開き全ての幕が閉じられます」
 騎士達が鞍から角笛を外した。戦いの火蓋が切って落とされた。
 角笛の音が戦場に高々と響き渡る。両軍が一斉に動き出した。
 まずは帝国軍の果敢な攻撃から始まった。圧倒的な敵の兵力を前にしても帝国軍は全く怯まなかった。一丸となって突撃を仕掛けてくるその姿はさながら平原を紅に染め上げる燎原の炎であった。
「流石ね。ユグドラル最強の軍と謳われただけのことはあるわ」
 マチュアは向かって来る敵兵の剣を受けその腹を蹴りつけた後で斬り倒し言った。
「これは楽に勝てそうにないわね。激しい戦いになるわ」
「その割には楽しそうですね、マチュアさん」
 ラナが杖で自軍の兵士を癒しつつ彼女に対して言った。
「えっ、そうかしら」
「はい。何だかうきうきしている様に見えますよ」
「ふふふ、そうかしら」
 そう言い終わると足を払おうとした戦斧を上に跳びかわした。そしてそのまま前転し戦斧を振ってきた敵兵の脳天に踵落としを浴びせ止めに剣を振り下ろした。
 解放軍は個々の技量においては帝国軍を凌駕しながらも帝国軍の決死の突撃の前に押されていった。次第に後へ後へと引いていく。
「どういう事だ?聞いていた今までの戦いとは全く違うではにあか。これがあの解放軍か?」
 帝国軍に傾いていく戦局を見てこう言ったのはセリスではなかった。アルヴィスであった。
「だが戦局は我が軍に有利になってきている。今は動く時か」
 右手をサッと挙げた。一人の騎士が彼の側へ駆け寄って来た。
「メテオはどうなっている」
 アルヴィスは問うた。
「ハッ、後一時間程で敵主力を射程に入れられます」
 騎士は敬礼をし答えた。
 
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