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STARDUST∮FLAMEHAZE

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第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#48
  FAREWELL CAUSATIONⅧ~Phase Act・3 Three Blaze~

 



【1】



 神々の争覇。
 血溜まりから生まれた狂獣と火から甦った神鳥が
全存在を賭けて真正面から激突する。
 星を見た者、泥を見た者、どちらも表裏一体の真理、
何れが勝つかは運命しか解らない。
 太陽が凍りついても、己の宿命に殉じる
強く気高き者達の精魂は永遠に滅びない。
『GULUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――――――
――――――――――――――ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!』
 正義でも悪でもない、それらの意味が消失し
彼岸の領域に至った王は、逃げるどころかその剛腕(かいな)を拡げ
神鳥の特攻を余す事無く受け止めた。
 既に鳳鎧の表面は空間が歪み背景が映らなくなるほどの
超高熱で覆われ周囲の空気に引火するほどの惨況で以て
征く手を遮るモノ悉くを焼塵に帰す恐懼を剥き出しにする。
 獄熱の紅い陽炎で光の投 影(シルエット)としてしか映らなくなった
その姿は正に火の鳥、自身すら燃え尽きる事を厭わない、
力の差すら意味を失くす不退転の特攻。
 ソラトでなければ、否、 “ソラト以外の徒だったなら”
末期の意すら刹那に灰燼と化していただろう。
 この焔儀は防御出来ない、“防御してはいけない”
鎧殻を充たす獄熱の殺傷力と何より
その『持続力』が凄まじ過ぎるからだ。
 超低温でスベテの物体は動かなくなるのちょうど 『逆』 、
超高温でスベテの物体は形容(カタチ)を保てなくなる。
 本能か感覚か? 正気ならば意志に叛して
防御態勢を執らざる負えない恐懼を前に、
ソラトは全身に殺戮の圧威を漲らせて真っ向から対峙した。
 如何に理屈を並べ立て小賢しく立ち回ろうとソレは結局逃げているだけ、
そこに在る危機を先延ばしにしているだけ、
現実を更に悪化させる愚劣なる者の欺瞞に他ならない。
 故にソラトは守りではなくあくまで攻めた、
王者の 『格』 は玉座に坐って発せられるモノではない、
一番の権威を与えられる者は同時に、
一番の危難に際して矢面に立たねばならぬ者。
 幾ら策を弄しようと戦う気概の無い者に
戦場に首を突っ込む資格はない。
『GALUAAAAAAAAAAAッッッッ!!!! 
GU・GU・GU!!!!!!!!!!
GUUUULULULULUWAAAAAAA
AAAAAAAAAAAAッッッッッッッッ!!!!!!!!』
 DIOもかくやという叫声をあげソラトは焔に包まれる、
その様は浄罪の劫火に焼かれようとも
尚傲慢な偶像に屈せぬという気魄を想起させる。
 グアシィィィッッッッ!!!!!
 劫火に塗れた獅子が光炎迸る神鳥を抱え込んだ。
 全身から漲る殺戮の猛気で威力を相殺しているものの
持続性では斬撃より炎熱が上回るため装甲の表面が鎔け始める。
 だが、それでも、獣の王はただ一人、
それが天空を征する神の化身だったとしても、
一度でも尾を垂れた獣はもう獣じゃない、獣は死ぬまで屈しない。
『AAッ! GAッ! GUッ! GI!! GIGIGIGIッッッッ!!!!』
 理性なき獣の脳裏に、一人の 『男』 の姿がまざまざと浮かんだ。
 獣は誰にも屈しない、だが、己の本能が主と定めた者ならば話は別。
 求める者は絶対の強者、ごく僅かな勝機の可能性すらなく、
その気になれば死の認識すらなく己を屠れる者、
微塵の恐怖をも持たぬ者。
 余計な打算や私情を挟まない分ソラトの本能は純粋だった、
そしてソレはシャナと同じように未曽有の潜在力を彼から引き出した。
 一つの覚悟が、信念が、
ものの数秒で数十年以上の精神の成長を促すように、
誰かを想うコトに正義も悪もないのだ。
『WWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWLYYYYYYYYYYYYY
YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY
―――――――――――――――――――――ッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!』
 そして、此度はその存在が完全に乗り移った、
空間を皹割る背景にその男の幻像が映るほどだった。




 ヴァグォンンンンンンッッッッッッッ!!!!!!!




 その執念が信念を勝ったか、真獣の戦いは
血染めの獅子が炎の神鳥を八つ裂きにして決着した。
 退きもせず真正面から熱塊を受け続けたソラト、
存在力に拠って強固に凝結しているとはいえ甲冑の継ぎ目は無数に有る、
その部分にだけ集束して殺傷力を送り込めば
他より脆い分だけ全身が弾け飛ぶ。
 炎の化身といえど現世に存在する以上実体を持ったモノ、
その領域を明確に認識したソラトの本能が勝利した。
 頸部を噛み砕こうとせず力を増幅するため軋らせていたのは
炎熱で内部が灼けるのを防ぐためである。
 その代償は惨憺足るもの、全身が焼け焦げ胸部は融解し
炎熱の侵蝕を受けた部分は常温の熱疲労でも外殻が剥離する程である。
 だが、美しい。
 瀟洒なリボンとフリルで包まれた人形よりも、
猛威と惨苦で覆われた獣像の方が遥かに視る者の心を打つ。
『Guuu……Lululu……』
 劫火にその身を灼かれながらも誇り高き獅子は倒れる事を拒んだ。
 片足に王としての矜持、そしてもう片方の足には別のナニカが宿っているのか、
譬え如何なるスタンド能力で在ろうとも、この獅子を屈服させるのは不可能に想える。
 コレで勝敗は決したか? 焼気漂う視線の先には裸同然の少女が一人在るのみ。
正 義(ジャスティス)』 の効果も消えていない、
鳳鎧の庇護が無くなれば彼女に毛筋ほどの傷をつける事など
造作もなき事象。
―――にもかかわらず!
 赤裸の少女が剥き身の刀身を諸手に獅子へと襲い掛かった。
 まるでこのコトを予期していたかのように、肌に残る残留烈気、
そして真獣の激突で弾かれた『正 義(ジャスティス)』の霧、
スベテ織り込み済みでソラトと云えど極僅か気が緩む殆ど絶妙のタイミングで、
小細工など何も無い真刀の一撃を大上段から振り下ろした。





 グアッッッッッッッッギイイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィ
ィィィィィィィィィッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!




 ボロボロになった凄爪で、ソラトは辛うじてその一撃を受け止めた。
 膠着状態の鍔競り合い、紅世の宝具『吸 血 鬼(ブルート・ザ・オガー)』必勝の戦形である。
 流石に消耗が激しいが先刻の激突に較ぶれば、
一呼吸の後に能力を発動させる事など苦もなきコト。
ましてや鳳鎧の庇護なき少女等、
実力もないのにしゃしゃり出る餓鬼に等しい。
 焦壊したとはいえ装甲に身を包んだ獅子と一糸纏わぬ少女、
残された互いの能力を比すれば勝負の趨勢は明らかである。
「――ッッ!!」
『LULULU!! GIィィィ!!』
 焼けた装甲に存在力が集束しだす、スタンドと同じように、
不屈の精神さえあれば
本体が瀕死の状態で在っても能力は消えない。
 その時だ。
 勝敗は正に、この一瞬の相克だった。
 その時の天秤が傾きにより、
後の『運命』が大きく変わってしまうほどの。
「オ……」
 極東に伝わる、古の剣技が極意。
 ソレは、相手の剣を躱し己が一刀のみを打ち込むのでもなく、
相手より早く初動にて切り伏せるものでもない。
 寧ろそれは不作法、卑怯者の所業と誹りを受ける。
「オォ……!」
 本来 『刀』 とは本刃ではなく “鍔元” で斬れと云われている。
刀身の長さを活かしその間合いで立ち回るなら相手の剣も当らないが
自身の剣も永遠に届かない、一撃必殺には到底及ばない駄技に堕ちる。
 故に真の(つわもの) とは己が斬られる事を厭わない、
生き残ろうとも考えない、後も先もない、
ただ眼の前の一瞬へのみ死に狂いで殉じるのみ。
 捨て身や特攻とは根本的に違う、
人間の 『宿命』 を(つまび) らかに現した時、
殆どのものは意味を喪くし実体も感覚も遺らない。
 その永劫の虚無の中、如何に生きようとするか、如何に人として在るべきか、
『正義の道を歩む事こそ運命』 であるように、その身命こそが極意である。
 真・灼眼の能力と極限まで燃え盛る気炎により、
一瞬にしろその領域に至った少女は
文字通り生まれたままの姿で苦難へ挑んだ。
 ソラトの殺傷力も『正 義(ジャスティス)』の霧も関係ない、
死ぬことを怖れていないなら
如何なる脅威も絶無(ゼロ)となる。
 そして生死の彼岸へと至った少女が討ち出すは
渾心の力を込めた鍔競り合いならぬ “鍔迫(つばぜま)り”
「オオオオォォッッッッ!!!!」
 否、ソレすらも凌駕した 【鍔刳(つばえぐ)り】!!
 渾心の力を込めた背を起点として莫大な剣力が放射状に弾け散る、
スベテを捧げし者に剣の 『(ひじり)』 は宿りその一刀は 『神』 となる。
 ヴィシィィィィッッッッ!!!!  
 その剣力へ呼応するように獅子の凄爪に亀裂が走った、
同様に既に、耐久度の限界を超えた装甲の至る箇所に破綻が呻きをあげている。
 限界を超える能力(チカラ)、「個」に執着する者は
その反動を己で受け止めなければならないが
「他」を想い遣る者にその反動はない、
欲望(じしん)から発生する力では無い故に。  
 




『オッッッッッッッラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――――――
―――――――――――――ッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!』



 喊声鳴動。
 鬨の声を置き去りにまず凄爪が砕けゼロコンマ一秒の
タイムラグもなく全装甲が木端微塵に砕け散った。
 鋼の鬣が、勇猛たる体躯が、屹立する四肢が、
先鋭なる尾が、その獅子の風貌が。
そして裡にいた愛染の美少年にも衝撃は如実に伝わり纏った防具が大破、
服もズタズタに引き裂かれ戻った意識も感覚と直結する前に霧散する。
 死とほぼ同義である白色の双眸、
回復出来るとはいえその精神までは戻らない完全敗北。
 戦いの趨勢は未知数、寧ろソラト優勢だったにも関わらずその逆境を覆したのは、
遠隔、中距離、超至近の能力を巧みに組み合わせた
未曽有の『三重極撃(スリー・ブレイズ)
 ただの連撃に有らず、相乗作用でもない、
己と相手を相対して最大限の効果を生み出す、
針の孔よりも遥かに小さい機と間を正確に穿つ精密動作性の勝利。
 大刀を振り抜いたまま一糸纏わぬ姿で屹立する少女を鳳翼の庇護が再び包み込む、
自己修復能力、例え灰燼に帰しても、不死鳥はそこから炎と共に甦る。
 フレイムヘイズ・装甲紅煉煌殻再着鎧。
 想えば鳳鎧特攻の後、防備に徹する事も出来た筈、
だが敢えてリスクを取り攻撃に特化した。
 攻防連体のこの業には無数の解 除 系 統(キャンセル・ルート)が存在する、
緩急自在、千変万化、状況に拠って
攻・攻・防、防・攻・防、等と使い分けるコトが出来る強み。
 無論刹那の交錯故に思考を上回る技巧が必要とされるが
神経速度を加速させられる無明の双眸がソレを可能せしめる。
 鳳神と獅子王、真獣の決着はついた、だが戦いそのものはまだ続く。
「――ッ!」
「――!?」
 何の脈絡もなく、背後から現れたティリエルが
シャナを甲冑越しに裸締めにした。
 正確に云おう、実は 『正 義(ジャスティス)』 の霧を体表ギリギリに展開し、
それを保護色のように迷彩して封絶の光を屈折、
余程眼を凝らしていなければ僅かな “ゆらぎ” にしか視えない
幻影と成って少女の背後を取る事に成功したのだ。
 周囲には炎の生み出す無数の陽炎、
加えてソラト撃破後の間隙を突かれたというのもデカイ。
正 義(ジャスティス)』を使わず炎儀、法儀が使えたのなら
この体勢、このタイミングで逆 詰 み(リバース・チェック)を掛けられたのかもしれない、
だが前者がなければ近寄る事能わず、後者が無ければ決め手に及ばない。
 故に彼女の出した結論は。
「あぁっ!! ううぅぅぅッッッッ!!??」
 自ら灼熱の鳳鎧に躰を埋め動作を封じるという原初的対処。
 乳房に焼き鏝を当てられる何処(どこ)ろではない、
油を塗った銅柱を罪無き者に抱かせる
暗愚の狂帝が生み出した炮烙(ほうらく)に等しい。
 だが言うまでもなく策有ってのコト、
燐子 “ピニオン” を中継して発せられる恒常的回復能力。
自動制御のため本体が瀕死の重傷を負わないと発動しないが
この捨て身の戦形ならその条件を充たしながら相手を封じる事が出来る。
 筆舌に尽くしがたい地獄の苦しみに我が身を焼く事になるが
今の彼女にはその全てを背負う覚悟が有る、
最後まで諦めない決意が在る。
 無明の双眸を介する間もなくそのコトに感応出来る少女は、
何も言わずその気高き姿を見つめていた。
 甲冑の温度を上げる処か下げようとする心情も生まれたが
結局どちらもしなかった。
 何も、変わる事はないのだ。
 正義だろうと、悪だろうと、大切な者を護ろうとする真情は。
 そう、誰も、孤独などではない、
懸命に生きようとする者は、独り残らず、誰も。
「――ッ!」
 一切の光を透さない筈の瞳が、微かに憂いを含んだように視えた。
 それは、これから先の 『結末』 を
見据えているからかも知れなかった。
 自分と同じ存在の、その生命の終わりすらも。
 


←TOBE CONTINUED……



 
 

 
後書き


はいどうもこんにちは。
あと2~3回でストックが切れるのでこんな更新ペースになっております・・・・('A`)
まぁこんな一方を称えまくり一方をディスりまくってるヤツの作品に
(まぁその「折衝」でこの作品は出来てると考えますが)
結構多くの皆様が付きあってくださっているコトに厚く感謝を申し上げます。
(更新してないのにたまにPV伸びるのよネ。
まぁ話数が多いからか・・・・('A`))

結局、イイものはイイとしか言えないし、悪いものは悪いとしか言えない。
個人の「嗜好」はあるにしても、作品としての「絶対的優劣」は存在する。
という性分のヤツなのでこんなカンジでここまでヤってきておりまする。
以前「ジョジョを利用してシャナを貶めている」と言われた事がありますが、
ソレはある意味「正しい」とは言っておきましょう。
(本人は中傷目的なのでそこまで考えてないでしょうが)
だって何をどう考えても「上」なんですから
(キャラクター、ストーリー、テーマ、演出、見せ方、
構成、設定、作者の人柄他多数
何より致命的なのがキャラに「精神性」が無いコトです。
だから名場面や名台詞というものが存在しない)
一緒に並べた場合、劣った方の拙い部分が剥き出しになるのは仕方がないのです。
だって片や一介のラノベ作家、片やデビュー当時からマンガの神様に認められた
「天才」なのですから、コレを「平等」に見ろという方が「悪良識」です。
上記の方に限らず、今日日「オレは荒木先生と同等だ!」等とホザく輩がいたら
それは余程の莫迦か勘違い野郎というコトになるでしょう。
作品の「価値」に「善悪」はなく、ただ上と下があるのみです。
ソレを「シャナがジョジョに劣って見えるのはお前の所為だ!」
と言われても困ります。事実劣っているのですからどうしようもありません。
それはワタシではなく原作者の方に言ってください。
あんな○○みたいな主人公ではなくもう少しマシな話描けと。

決して自負ではありませんが、多分ワタシみたいな(頭が○○な)ヤツじゃないと
こーゆーモノは描けないでしょう。
(だって女の着替え覗く承太郎とか、アメ玉一個でケンカする承太郎なんて
描きたくねぇ・・・・('A`)ってかソレもう承太郎じゃねーだろ・・・・・('A`))
まぁ色々御意見はあると想いますが
自分の描きたいモノを描いた、自分に嘘はつかなかったという自負だけは
全話通して込めていたと言っておきます。
それより何より、やはり「荒木先生は偉大だ」というコトは
声を大にして言いたいですネ。
ソレでは。ノシ
 
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