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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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202部分:二本の槍その四


二本の槍その四

「私の父はイードで君の父上とは母上を殺した。それも騙し討ちにしてだ。しかもレイドリックやグスタフの様な男を使ってまでしてレンスターに侵攻し多くの者を手にかけレンスター王家、君の親族も自らの手で殺した。その上君の姉を騙し己が手駒としてきた。君は自分の肉親と民達の無念を晴らしただけだ。父上は自らの悪行の裁きを受けただけだ」
「・・・・・・・・・」
「それに父上はこうなる事をわかっておられたのだと思う。御自身の結末を」
「結・・・・・・末・・・・・・!?」
「そうだ。父上は君との戦いに行かれる前に私にグングニルを託す、と言われたのだ」
「グングニルを!?」
「ああ。君も聖戦士の血脈を受け継いでいるならばこの意味がわかる筈だ。・・・・・・そしてゲイボルグを本来の場所に返すよう言われた」
「そんな、馬鹿な・・・・・・」
「信じる信じないは君の自由だ。だが君も父上と闘ってそのお気持ちを多少なりとも知ったと思う」
「うっ・・・・・・」
 その通りだった。トラバント王の槍からは敵意や憎悪、邪心といったものよりも苦しさ、哀しみ、やるせなさが伝わってきたからだ。その事はリーフも痛い程伝わり理解していた事であった。
「今まで私も愚かな意地だけでアルテナやセリス皇子と戦ってきた。そして多くの者に犠牲を強いてしまった。だがアルテナと槍を交え彼女は私の意地を払ってくれた。これからは私はダインの志を受け継ぎレンスターとトラキアの為だけでなく大陸の全ての者の為に戦いたい。今まで私の為に命を落としていった者達の為にもな」
「アリオーン王子・・・・・・」
「それはアルテナも同じだ。リーフ王子、行こう。帝国と暗黒教団を倒し大陸に平和と取り戻すんだ」
「はいっ!」
 二人は頷き合うと星々が煌く夜の空の下から姿を消した。
「これでダインも己が道に踏み出したな」
 レヴィンであった。遠くから二人を見て言った。
 夜空を見上げる。幾千幾万もの星達の中の緑の星がその輝きを一層増した。
「星達は完全に集いつつある。暗黒神が倒れる日もそう遠くはない」
 青い巨大な一際大きく輝く星を中心に多くの様々な星達が集っている。その中に緑の星もある。
「残るは二つ、トードとヘイム・・・・・・。トードもやがて目覚める時が来る。後はヘイムだけか」
 集う星達の向こう側の空にも星達が集っていた。赤く不気味な色で輝く巨大な星を中心に妖しき星や禍々しい星が集っている。とりわけ中心の赤い巨星の周りに輝く十二の星ともう一つドス黒い血の色の星の光には何やら邪悪ささえ感じられた。
「む・・・・・・!?」
 その中に白く優しく輝く星を認めた。大きいがその輝きは強くない。星よりも月の輝きに近い。
「まさか・・・・・・」
 レヴィンはその星を見て悟った。彼の他にも誰かが悟ったかの知れない。だが口に出したのは彼であった。
 よく見れば白い星の光にはかすかに青さも混ざっている。その輝きは青い巨星と同じものであった。
 同じく青い星にも白い光があった。赤い妖星にもそれは感じられる。
「そうか・・・・・・そういう事だったのか・・・・・・」
 レヴィンは全てを理解した。そして何を為すべきかも。
「シグルド、ディアドラ、心配するな。御前達二人の思いは二人に宿っている。そして二人への邪悪な手は私が必ず断ち切ってやる。必ずな・・・・・・」
 赤い星を見た。魔性の者が持つ宝玉に見えた。
「御前も・・・・・・。呪縛から解き放たれるのだ」
 レヴィンの言葉が何を意味するのか、わかり得るのはこの世の者では双瞳の男だけであろう。またこれから三つの星をどう動かさなければならないのかも。ミレトスの空の星達は何も語らないが輝きでその言葉を発しているかのようであった。
 
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