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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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192部分:魔女その一


魔女その一

                       魔女
 暗黒教団と子供達の報告を受けた解放軍はすぐさま全軍をもって進軍をはじめた。その動きは流石と言う他無くたちまち森を包囲し子供達を全て保護した。
 ここで解放軍は兵を二手に分けた。まず歩兵及び魔道部隊を森に、騎兵はクロノスから来るであろう帝国軍正規軍に向けられた。飛兵は遊撃隊として上空に置かれ双方の動きに備えた。
 森の中を十人程度に分かれて進む解放軍はその法衣の輪を徐々に狭めていった。歩兵と弓兵、魔道師、そして僧兵をバランスよく、そして隊同士がそれぞれフォローし合えるように配されておりその攻撃は強く防御は固かった。
「所詮は魔物か。戦い方を知らぬわ」
 数体のゾンビを攻撃することすら許さず倒したラルフが言った。
「碌に武器を持たぬ旅人や小さな村を襲うのならいざ知らず死闘を潜り抜けてきた我々の敵ではない。やはり怖いのは暗黒教団の連中だけだな」
 木の陰からフェンリルを撃ってきた教団の司祭を斬り捨てた。暗く何かしら不気味なざわめきの聞こえる森をゆっくりと、だが確実に前へ進んでいく。
 解放軍が森までの戦いを有利に進めていた頃ペルルーク城へ向けて進撃する一軍があった。
 赤と黒の軍服に紅のマントと鎧、そして白地に赤い炎の紋章、グランベルに君臨するアルヴィス直属の炎騎士団である。
 かって炎騎士団は貴族出身の魔道師達を中心とする少数精鋭の騎士団だった。だがアルヴィスが自らの統治により大いに伸張した国力を背景に軍の改革を推し進め炎騎士団は身分に関係なく有能な者が取り立てkられ、かつ多様な兵種から成る大規模な軍となった。
 アルヴィスを頂点として各部隊を率いる将達がおり副官にはアルヴィスガ常に側に置き秘書でもあった異母弟アゼルが任ぜられた。清廉で不正を憎みややもすれば苛烈になりがちな兄とは違い温厚なアゼルは部隊の将達と共にこの騎士団にとって欠かせない人物であった。アルヴィスとこのアゼルを含めた十二人の将により炎騎士団は大陸屈指の精鋭と言われていた。
 そんな炎騎士団に転機が訪れたのはバーハラの戦いであった。闘いに勝ちシグルド公子を死に追いやったものの騎士団は大きなダメージを受けアゼルも兄と袂を分かった。この時から炎騎士団は変質した。
 アルヴィスが皇帝となりその地位と兵力は大幅に高められ増やされた。だが指揮官である皇帝の権限は強化されその指揮も皇帝の実子であるユリウス皇子が実質的に掌握してからは彼等の主な仕事は弾圧と拷問、虐殺等真っ当な軍人ならば目をそむけたくなるものばかりとなった。しかし彼等はアルヴィスに心惹かれた者や彼により解放された奴隷達から成り軍を離れる者は殆どいなかった。帝国を呪う声が満ち各地で反乱が起こりアルヴィスの謀議が白日の下に曝されてもそれは変わらなかった。彼等はアルヴィスに絶対の忠誠を誓い彼こそ全てだったのだ。
「誇り高き炎騎士団が悪魔共の手伝いとはな。我等も落ちたものだ」
 クロノス城の高い城壁を見上げながらこの軍を率いる将リデールは呟いた。
 平民の出だった。若い時傭兵となりヴェルトマーのある村に駐屯した時アルヴィスを見た。年老いた老婆を庇い熊に向かっていく彼を眼にしてこの方について行こうと決めた。炎騎士団に入ると頭角をあらわし将軍にまでなった。その武名と忠誠心は世の知るところである。
「シアルフィ軍の討伐かと思えばまた子供狩りだ。それも皆殺しにせよ、だ。モリガンめ・・・・・・」
 ラドス城にいるダークビショップの胸が悪くなる顔が脳裏に浮かんできた。思い出すだけで忌々しい。
「敵と剣を交えるのならともかく抵抗の出来ぬ幼な子を手にかけて何が面白い。ユリウス殿下の命でなければあの様な魔道の者・・・・・・」
 キッと唇を噛み締める。血が滲んでくる。ユリウスの銘に逆らう事は帝国、すなわちアルヴィスを裏切る事になる。それだけは出来なかった。
 
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