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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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187部分:暗黒教団その四


暗黒教団その四

 他の者もそれに続く。次第に二人は人の輪の中に囲まれていった。
「これで良い。これこそが新しい時代の姿なのだ」
 レヴィンは輪から少し離れて一人呟いた。
「あの男もこれがわかっていればな・・・・・・」
 一瞬哀しい口調になった。
「だが裁いてやる。今までの罪、そしてシグルドの仇・・・・・・。ヴォータンの治めるヴァルハラでもドンナーの館でもエーギルの館でもない。ローゲの支配するムスペルムヘイムの永遠の業火の中に突き落とし魂までも焼き尽くしてくれる」
 強い口調になった。その眼には普段全く見られない憎悪の光が宿っていた。
「ガルザス」
 一人廊下を歩くガルザスにホリンが声を掛けた。
「何だ」
 ホリンの方を振り向いた。
「何だ、はないだろう。同じオードの血族に対して」
「・・・・・・俺には関係無い事だ。ホリン、そう言う御前もソファラから出たではないか」
「ふ、確かにな」
 そう言って薄く笑った。
「確かに俺は一度はオードを出た。だが戻って来た。そして今おまえとこうして再会するとはな。運命というのはわからんものだ。・・・・・・マリータもな」
「・・・・・・知っていたか」
「ブリギットとジャムカがソファラにいた頃なぜかアイラに似た女の子を養子にしファバル、パティと共に我が子として育てているとクロード神父から聞いた。もしやと思っていたがまさか今解放軍にいるとはな」
「・・・・・・・・・」
 ガルザスはそれに対し何も答えない。
「何時あの娘に本当の事を言うつもりなんだ?彼女は御前が父だとはいう事を知らないのだろう」
「・・・・・・・・・」
「言わないか。だが忘れるな。彼女に本当の素性を教えるのは父親の、マナナン王の第二子ブレスの子である御前の義務なのだぞ」
「・・・・・・言う事はそれだけか?」
「何?」
 ガルザスは踵を返した。先程まで行こうとしていた道を歩きはじめた。
「気が向いたら言おう。今はその時ではない」
「おい待て」
 彼はホリンの制止も聞かず歩いて行く。そしてそのまま行ってしまった。
「相変わらず天邪鬼な奴だ。マリータに一言素性を言って自分が父親と名乗りたいのは自分自身のくせにな」
 何処かはにかみながら言った。後ろから子供達が自分を呼ぶ声がする。彼は声のした方へ消えた。
 イシュトー、アイラ等シレジア解放軍とその軍五万と合流した解放軍は軍の再編成を行なった。シレジア軍がヴェルトマーとの国境を押さえている事により防衛する必要の無くなったイードから兵を呼び寄せた。その間に活況を取り戻したペルルークで志願兵や物資の寄付を受け力を強めた。だが暗黒教団の毒の牙が迫って来ている事に誰も気付いてはいなかった。これはこれからの解放軍の進みを考えるにあたって重要な事件を引き起こす原因となった。否、むしろ後のユグドラルにとっては良い結果と言えるだろうか。
 後世の宗教家の中にこう言う者がいる。
『ユグドラルはノルンやヴァルハラに住む神々によってのみ為されるに非ず。人がどの様な道を選び歩いたかによって決まる』
 と。この言葉をセリスやユリア、アルヴィス、そしてユリウス達に当て嵌めればそれが言えるだろう。だがそれを為し得るには勇気と強さが必要であった。セリスにはそれがあった。無いように見えたユリアにもあった。持っていなかったアルヴィスは最後で持った。ユリウス、そうユリウス自身も・・・・・・。その道は最後まで歩かなければわからない。セリスと共に歩いた者達は会えセリスと共に歩いた。アルヴィスは自ら全てを失う道を歩いた。だがそこに辿り着くまでわからないのだ。全てを得るか、全てを失うかは。
 
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