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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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184部分:暗黒教団その一


暗黒教団その一

                     暗黒教団
 かってマーファの森の奥に潜み世には殆ど知られていない巨神ユミルという神を信仰する教団があった。彼等は少人数で集団生活を営みひっそりと生き誰にも危害を加えることなく静かにただ己が神を信じていた。だがそんな生き方に不満を感じるようになった若い司教がいた。その者の名をガレといった。ある夜彼は森を出た。そして単身海を渡り遠くバレンシア及びアカネイアを渡り歩いた。バレンシアで祈祷師や妖術師の使うユグドラルのそれとは全く異なる系統の魔法を身に着け魔物を召還し操る術を知った。だがアカネイアで彼が会得したものは大陸の運命を変えてしまう程恐ろしいものであった。
 アカネイアにはマムクートという人とは異なる種族が住んでいる。外見は人とほぼ同じだが背に翼がある。特筆すべきは彼等が秘めるその能力であった。
 それは彼等が必ず手にする宝珠にあった。彼等マムクートがその宝珠を手にし何やら呪文を唱えるとたちまち巨大な竜に変身するのだった。否、変身ではなかった。彼等の言葉によればその竜の姿こそが彼等の本来の姿なのだという。主に大陸北辺の氷原地帯や火山、砂漠等人の殆どいない未開の地に人目を忍ぶようにして暮らしていた。種族はナーガという最も力が強く賢明な種を頂点に炎を使う火竜、氷を使氷竜、天空を駆る飛竜、強い耐久力を持つ魔竜等がいた。その中でガレが最も惹かれた種族があった。
 それを人は地竜と呼んだ。ドルーアという大陸奥の辺境の地に住む彼等はそこで独自の王国を築いていた。人に対して強い敵意と憎悪を抱いておりその王国には彼等に同調する他の種のマムクート達も集まっていた。地中を潜り進み全てを溶かす息吹と魔竜以上の耐久力、そして邪な魔力を持つ彼等は千年生きると脱皮し別の種族となるのだった。
 その姿を知る者はマムクートでもごく一部であった。彼等はそれを『暗黒竜』と呼んだ。今までとは比較にならぬ程巨大な身体とさらに威力を増した息吹、そしてどのような攻撃も寄せ付けぬ邪悪な気————。王をはじめごく限られた者達しかおらずそれだけに怖ろしさも際立っていた。
 ガレはその暗黒竜の中でも最も強大な王に会ったらしい。彼の野心と魔力に目をつけた王が彼を呼び寄せたのかもしれない。そして彼はそこで王と共に彼等地竜族が崇める神の存在を知った。その神こそ暗黒神とも呼ばれるロプトゥスであった。この神と血の契約、おそらくそれはロプトゥスの血と己が血を混ぜそれを飲んだのであろう。そしてそれにより暗黒神の力を身に着けた。否、精神の段階で暗黒神の分かれた魂と融合し新たな、別の神となった。ガレと暗黒神の分かれた魂の融合体、それこそグランベルを長きに渡って恐怖と絶望で支配した暗黒神ロプトゥスだったのだ。
 ユグドラルに戻ったガレはその魔力とカリスマでもって己が手足となる使徒達を増やし『十二魔将の乱』と呼ばれる反乱を起こしグランベル共和国を滅ぼすとロプト帝国を興し自ら皇帝となった。その力はガレの血を受け継ぐ代々の皇帝に受け継がれ大陸を支配した。だがその支配も終わる時が来た。
 ロプトゥスの行いを知ったアカネイアの十二の竜神達がダーナ砦に降臨し若き十二人の戦士達と血の契約を交わしたのだ。これこそ『ダーナ砦の奇跡』である。
 だが彼等は魂を融合させなかった。自分達の力が封じ込められた神器を使う力と優れた能力を与えたのみだった。これは人への過度の干渉を避けた為であった。
 十二聖戦士の活躍によりロプト帝国とガレは倒され暗黒教団も滅んだと思われた。だが滅んではいなかった。生き延びひそみ再びユグドラルを支配する時を待っていたのだった。
「そうだったのか、それではユリウス皇子の側にいた者達が・・・・・・」
「そうだ。暗黒教団の者だったのだ」
 イシュトーは従弟であるアミッドに言った。一同顔から血の気が消えている。
 
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