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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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177部分:バルドの十字その三


バルドの十字その三

「ユリア、貴女オイフェさんについてどう思う?」
「堅苦しいよね」
 ティナとジャンヌが口々に言う。ユリアはそれをいつもの笑顔で聞いている。
「そうですか?とても紳士的で親切な方ですよ」
 その言葉にアルテナ以外の一同は目を点にした。
「えっ!?」
「この前セリス様にマジックシールドをかけさせていただいた後疲れた私を気遣って天幕まで運んで下さったしとてもお優しい方です」
「あの過保護教育パパが・・・・・・」
「セリス様こそ絶対の象徴で常日頃騎士道と君主論、仁愛ばかり説いている若年寄が・・・・・・」
「まさかユリアと・・・・・・」
「何かされなかった!?」
「あの親父何時の間に!?」
「それもよりによってユリアに手を付けるとは・・・・・・」
 ラクチェ、パティ、リンダ、タニア、マチュア、フェミナ達がめいめい喚くのを当のユリアはキョトンとして聞いている。
「ボ〜〜〜〜ッとしている場合じゃないわよユリア、責任とってもらうのよ!」
「そうよ、泣き寝入りだけは駄目よ!」
 ミランダ、マリータがエスカレートしていく。だがユリアは相変わらずキョトンとしたままである。
「泣き寝入りって・・・・・・?」
「決まってんじゃない、お嫁さんにしてもらうんじゃない、女の子の大切なものあげたんだからそれ位当然よ!」
「そーーそーー、相手がセリス様の軍師だからって遠慮するこたあないわよ!」
 フィーとパティが言い立てる。ここにきてユリアはようやくピントが一同と合った言葉を言った。というよりは話を最初のまともな方向に戻した。
「私、オイフェさんに送って頂いただけですけど」
「ホントに!?」
 一同驚いた。まだ疑っている。
「はい、天幕の入口まで送って頂いた後すぐに帰られました」
「嘘・・・・・・」
 本当である。
「あの、ところで皆さん・・・・・・」
「何?」
「大切なものって何ですか?それを男の方にあげたら結婚しなくてはならない程のものとは一体何なのですか?」
「あの・・・・・・ユリア」
 代表者としてラーラがおずおずと彼女に尋ねる。
「はい」
「貴女・・・・・・ひょっとして本当に何も知らないの?」
「何をです?」
 ちなみに何も知らないのはユリアだけ、経験も無いのはユリアとアルテナのみである。
「まさかここまでとは・・・・・・」
 尚この連中は解放軍にいる頃がはじめてであった。相手は言うまでもない。相手の方も殆どがはじめてであったようだが。男連中はこの時温泉の下の酒屋でクシャミをしていた。
 翌日からユリアはオイフェと二人で街を歩いたり食事をするようになった。生真面目なオイフェと無垢というより天然と言うべきユリアの関係は周囲の予想、いや願望を大きく裏切り全く進展せずセリスを加えて歳の離れた兄妹か親子のようであった。
 ターラでの休息を終え解放軍はミレトスへの玄関口であるメルゲンへ出発した。そしてそこからミレトスを解放し南よりグランベル本土へ入る計画を立てた。
 ミレトスを経路としたのは複数の理由があった。まずはイード砂漠が大軍の進軍に不適でありイードから入るグランベルの地が皇室の本領であるヴェルトマーであり帝国軍のみならず住民達の頑強な抵抗が予想される事、豊で交通の発達したミレトスは元々隣接するシアルフィ家との関係が深く住民の協力が得られ易く至近や物資の調達及び補給が容易である事、ミレトスから入るシアルフィはセリスの本来の故郷でありその地をヴェルトマーから解放する事はシグルド以来の悲願であり解放軍の大きな政治的効果になりグランベル全土解放の拠点となる事、最後に不気味な一団を率いミレトスに駐留してこの地を鎖国しているユリウス皇子の存在が大きかった。
 解放軍がミレトスに駒を進めたのは運命だったのだろう。十二の聖戦士達が暗黒竜と戦い光を取り戻したあの聖戦が再び幕を開こうとしていた。


第四夜   完


                    2004・2・6
 
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