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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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165部分:聖斧その三


聖斧その三

 腕を振り上げたままガラ空きとなっていたムーサの腹を一閃した。ムーサの腹と口から血がこぼれ出る。
「流石だな・・・・・・」
 ドス黒い血と共に呟く様に言うと前のめりに落馬していった。
 解放軍からまたもや歓声があがる。主将の一人までもが倒された帝国軍は動揺を隠せない。だがその中で一人冷静な男がいた。
「騒ぐな。まだ完全に敗れたわけではない」
 ブリアンであった。太くよく響き渡る声で言った。
「まだ私がいる。私の手にある神器は知っていよう」
 斧騎士団を中心に生気が戻ってくる。ブリアンは続けた。
「この聖斧スワンチカ、この力は知っている筈だ」
 ザワザワと活気すら戻ってきた。かって斧戦士ネールが手にし持つ者を不死身にするとまで言われたこの神器の力を知らぬ者はいなかった。
「このブリアンの手にスワンチカがある限り我等に敗北は無い。勝利は我が手に!」
 帝国軍から大歓声が湧き起こった。それに対しブリアンは聖斧を振り応えた。
「遂に来ましたな」
 オイフェは馬を進めて前に出て来るブリアンを見ながらセリスに言った。
「ブリアン公子・・・・・・スワンチカの正統な継承者だね」
 セリスは呟くように言った。
「はい、その力量は歴代のドズル家の者の中でも最強と謳われ『斧戦士ネールの再来』とまで言われております」
「だとするとこちらも神器の継承者を出さなければいけないね」
「申し訳ありません、私のせいで・・・・・・」
 サイアスが二人の横で申し訳なさそうにうなだれる。だがセリスはその言葉に対し首を横に振った。
「サイアス、それは違うよ。君が解放軍にいなくても彼等は来た。それに君の知略と魔力は僕達にとって大きな力になってくれているよ」
「・・・・・・有り難うございます」
 目頭が熱くなった。涙こそ苦心して抑えたが心の中では違っていた。バーハラを出奔しセリスの下に来た。書庫で密約の文書を偶然発見してから始まりフリージ軍との戦いと解放軍の志及び行いを知り解放軍に参じた。そして今までの己の岐路を振り返り今セリスの言葉を聞き自分の行動と決意が正しかったと確信した。同時にセリスの心も知ったのだ。
「さてと、誰に行ってもらうかな」
「ここはスワンチカの攻撃をかわしきれる者が望ましいでしょう。かってランゴバルト公はリューベック城の戦いにおいて城の柱を一撃で粉砕しました。ランゴバルト公以上の使い手であるブリアンの一撃をまともに受けては生きてはおられぬでしょう」
「そうだね。だとすればシャナンかセティ、いや僕が・・・・・・」
「皇子、ちょっと待ってくれないか」
 ヨハルヴァの声がした。声のほうを見るとヨハンもいた。
「二人共・・・・・・」
「兄貴の事なら俺達が一番よく知っている。ここは俺達に任せてくれ」
「そうとも、ドズルの因果をここで変えたいのだ」
「しかし・・・・・・」
 二人の眼を見た。それを見て決めた。
「よし、任せよう。頼むよ」
「そう来なくっちゃな」
「感謝する」
 二人はブリアンの方へ駆けて行った。いちどうはそれに対し敬礼で見送った。
 ブリアンはこちらに来る二人の姿を認めて彼等を心の中で嘲笑した。二人はそれを知っていたようだがそれに構わず兄の下へ来た。
「よく連れ立って私の前に現われたな」
 ブリアンは二人に対し侮蔑の言葉をかけた。
「誇り高きドズルの名を汚した愚か者共よ。今このスワンチカで成敗してくれるわ」
「・・・・・・兄上、もうわかっておられる筈です」
 ヨハルヴァが言った。ブリアンはその言葉を聞いて蔵からスワンチカを取り出そうとしていた手を止めた。
 
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