ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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161部分:父と子とその三
父と子とその三
「そうか・・・・・・。ならば我々だけでやるしかないね」
「はっ」
「よし、じゃあ少数精鋭で行こう。兵力は五百、全て騎兵でいく。将は・・・・・・」
場を一瞥した。そして大きく頷いた。
「僕とオイフェ、アレス、そしてラインハルトで行こう。シャナン、城を囲んでカパドキアのトラキア軍を抑えてくれ」
「わかった」
シャナンが敬礼した。
「よし、行こう。一気にルテキアまで進むぞ!」
セリスが高々と剣を掲げる。一同もそれに続き雄叫びを挙げた。
ールテキア城ー
ターラと峡谷を挟んでルテキア城がある。トラキアのターラ方面への前線基地として知られている。今はトラキアの将軍でありハンニバルの旧友であもあるディスラーが守将を務めている。
ディスラーは自室いいた。窓から外を眺めている。扉をノックする音がした。
「入れ」
若い騎士が入って来た。ディスラーが彼の方を向くと敬礼した。
「コープルはどうか」
「ハッ、部屋で静かに書を読んでいます」
「そうか。なるべく不自由にさせるな。何かあってはハンニバル殿に申し訳が立たぬ。それにあの少年はやがて素晴らしい僧になる。おそらくブラギ神以来のな」
「そんなに、ですか?」
「うむ。あの歳であの魔力・・・・・・。末恐ろしいぞ。ところで戦局はどうか」
「ハッ、敵軍は只今カパドキア城を包囲し攻略に取り掛からんとしております。またターラに配していた兵をダーナまで移しました」
「カパドキアをか・・・・・・。ハンニバル殿の健闘を祈るしかないな」
「残念ながら・・・・・・」
二人がそう話している間にセリス達は進軍しルテキア城北の森に潜んでいた。森の中から城を見る。
「まさかカパドキアの北にあんな山道があったとはね」
セリスはルテキア城を見ながら言った。
「以前トラキアの動きに備えて山々を調べていた時偶然に発見したのです。軍の上層部のみ知っている軍事機密でしたがまさか使う時が来るとは思いませんでした」
ラインハルトが言った。やはり城から目を離さない。
「だがそのおかげで容易にここまで来ることが出来た。有り難う」
「いえ、そのような・・・・・・」
思わず畏まった。
「いや、本当だよ。ラインハルトがいなければここまで上手くいかなかったからね」
「はっ・・・・・・」
「さあ行こう、見たところルテキア城の守りは薄い。一気に陥としコープルを救い出すぞ!」
そう言うと自ら先陣をきり駆け出した。オイフェ達が後に続く。
城壁には僅かばかりの守備兵達だけがいた。突進してくる騎兵達を認め急いで持ち場に着き伝令を飛ばすが遅かった。
ラインハルトが前に出る。手に雷を宿らせ指を拡げて前に突き出した。
「ダイムサンダ!」
雷が波状に拡がり城門を撃った。城門はたちまち四散し砕け散った。
出て来る敵兵はまばらだった。解放軍はトラキア兵達を斬り伏せ或いは捕虜にし次々と要所を押さえていった。
扉をノックする音がした。
「どうぞ」
入って来たのはディスラーだった。深刻な顔をしている。
「シアルフィ軍が来たのですか・・・・・・!?」
コープルの言葉にディスラーは無言で頷いた。
「城の要所が次々と押さえられている。すぐにこの内城に来るだろう。コープル、早く安全な場所に隠れなさい」
暗いが落ち着いた口調である。コープルはそれに対し首を横に振った。
「どうした?」
「皆が戦っているのに僕だけ隠れているわけにはいきません。僕は戦えませんが杖で皆の傷を治したいです」
「そうか」
ディスラーは微笑んだ。そしてコープルに別れを告げると部屋を後にした。
(ハンニバル殿は幸せだ。あれ程立派なご子息がおられるのだからな)
彼は階段を降りながら心の中で言った。城内では既に剣の撃ち合う音や怒号が聞こえてきている。
廊下に出た。前に若い黒髪の騎士が立っている。
「敵将とお見受けする。我が名はラインハルト。解放軍の将の一人」
「ほお、卿があの高名な。我が名はディスラー。トラキアの将だ」
彼はそう言うと腰から剣をゆっくりと抜いた。ラインハルトも構えを取った。
「参る!」
両者は剣を撃ち合った。二つの影がぶつかる。
ルテキア城は完全に制圧された。トラキア軍の殆どの兵は捕虜をなりコープルも無事保護された。
「君がハンニバル将軍のご子息だね。僕は解放軍のセリス、話はシャルローから聞いているよ」
セリスはコープルに対し語りかけた。
「シャルロー、上手くやってくれたんだね」
「じゃあ行こう。カパドキアで将軍が待っている」
「待って下さい、その前に」
「その前に・・・・・・?」
コープルは右手に持つ杖を掲げた。
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