ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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138部分:複雑なる正義その三
複雑なる正義その三
解放軍はまだ動かなかった。やがて二回目の夜が来た。トラキア軍は解放軍が圧倒的な戦力を持っている為依然として警戒態勢を緩めない。
三日目になった。解放軍は守りを固めているだけで動かない。またもや朝が来た。
遂に四日目となった。流石にトラキア軍も疲労の色を濃くし気の緩みが生じてきた。
四日目の夜トラキア軍の疲れは極限に達してた。地にしゃがみ込む者や立っていても瞼を閉じようとしている者もおり士気は落ちていた。
森に潜む山賊達も同様だった。哨戒も怠りがちになり寝ている者もいる。
立ったまま寝ている歩哨に影が近付く。そして後ろから飛び付き右手を口に当て左手の剣でその喉を掻き切った。
「行くわよ」
影はディジーだった。その後ろに数人続く。
森の中で山賊達が焚火を囲んで何やら話している。その中心に一人の男がいた。
「で、ランクルとボゲはすぐ来るんだろうな」
顔の下半分を黒く汚らしい髭が覆い濁ったこげ茶の眼をしている。下品なランツクネヒトの服を着たその男こそ山賊達を率いる頭領の一人トルケマダである。
ヒックスがセリスに言ったようにかってはコノート王家に仕えていた。だがレイドリック等と共に王を暗殺しトラキアにつきその後フリージ家に降り悪の限りを尽くした。そしてイシュタルに追われ今は山賊をしているのである。性質は貪欲で残忍、下劣な事で知られている。
「はい、もうすぐ来られる頃だと思いやす」
汚らしい身なりの男が言った。当然山賊一人である。
「よし、三人揃ったら会議をするぞ。あのセリスとかいう小僧の首を叩き落としてやる為にな」
ゲヒヒヒヒヒ、と下卑た笑い声を出す。
「全く宮廷から追い出されるしレイドリック様は殺られるしここ何年か碌な事が無かったがこれでまた運が向いてくらあ。そうしたらまたやりたい放題の日々になるな」
「おい」
そんな話をしていると後ろから呼び掛ける声がした。見れば火に照らされてラングルとボゲの顔がある。
「おう、遅かったじゃねえか。まあ入れ。早速始めんぞ」
「うむ」
二人はそう言うと前に出て来た。ただしそれは首だけであった。二人の首はポーン、と放物線を描いて飛び焚火の中に入った。
「ひっ!?」
彼等は悲鳴をあげた。
「だ、誰だ!?」
二人の首が飛んで来た森の方から二人の男が出て来た。トルケマダはその二人を知っていた。
「て、手前等リフィスとパーン・・・・・・。シアルフィ軍にいやがるとは聞いていたが・・・・・・」
彼は口をパクパクさせながら言った。
「そうよ、そして今手前を殺す為にここに来たのさ」
「残ったのは御前等だけだ。最後くらいは観念するんだな」
二人はそう言うと剣を構えた。隙が無い。
「くそっ、死にやがれ!」
それでも自暴自棄になった山賊達は一斉に二人に襲い掛かった。二人は豹の様な動きで前に出た。
二人の剣が焚火に照らされ闇の中に煌いた。
一瞬だった。山賊達は皆地に伏した。だが一人残っていた。
「残ったのは手前だけだな」
二人はトルケマダへ歩み寄る。彼の顔が蒼ざめる。
「ひ・・・・・・ひいィィィィィィィィッ!」
恐慌をきたして逃げようとする。だがその前に黒い服の男が立ち塞がった。
「へ!?」
男は剣を無言で振り下ろした。トルケマダは一刀のもとに両断された。
「流石だね、やっぱり強いや」
剣を拭き鞘に収めるガルザスにリフィスがニヤリ、と笑いながら言った。
「うむ」
ガルザスは一言答えるのみである。
「ちぇっ、相変わらず無愛想なおっさんだな。まあいいか。強いし」
リフィスは少しすねたような声で言った。そこにシヴァとトルード、そしてディジーが来た。
「おう、どうなった?」
ディジーはパーンの言葉に対し片目をつむって笑った。
「こっちは終わったわ」
「よし、後はシューターだけだな」
「ええ。けどあんなのが敵じゃなくて本当によかったわね」
「同感」
彼等はそういいながらガルザス達と共に南へ歩いて行った。その行く先は言うまでもなくミーズである。
トラキア軍はミーズ城の北にシューターを集中的に配置していた。その数数百二及び空からミーズを守る竜騎士団と共に鉄壁の守りを為していた。
その中を歩哨達が巡回している。そこに守将であるセイメトルが通り掛かった。
「ご苦労。異常は無いな?」
「はっ」
兵士達は敬礼をし答えた。
「うむ、しっかり頼むぞ。もしミーズに万が一の事があればトラキアは後が無くなる。我が国の命運はそなた達にかかっいるのだ」
「わかりました」
セイメトルは彼等と別れ何処かへ去った。兵士達も別のところへ行った。その後ろにシューターの間を跳ぶ様に移る二つの影があった。
「ここまでは上手くいきましたね」
緑の髪の青年が銀の髪の少女に言った。二人はトラキアの軍服を着ている。
「はい。後はシューターの武器である大槍を全て破壊するだけですね」
銀の髪の少女が子声で青年に言った。
「大槍は私がフォルセティで一掃します。貴女はサポートをして下さい」
「はい」
セティはチラリ、と少女を見た。何処かオドオドしているように見える。
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