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歌集「春雪花」

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 雫落つる

  咲くは櫻か

   白梅か

 夕に春待つ

    梢なりけり



 冬の日は夕も早く…雲に陰れば尚更のこと…。

 ふと頭に滴が落ち、見上げた先には木の枝が空へと延びている。

 まるで桜か白梅でも咲いているかのように…その枝には雪が積もっていた。

 草木は春になれば花をつける…だが、私にそんな春は来そうにない…。


 夕の薄明かりの中、その梢にそっと…溜め息を零した…。



 手のひらに

  触れにし雪の

   溶けたるを

 悲しく思ふ

    冬の夕暮れ



 淡雪の降る夕暮れ…寒さも厳しく、街灯の灯りさえ冷たく感じてしまう…。

 手を開き、幽かに降りゆく雪を受け止めると…その小さな花は刹那に溶けて…何とも虚しく、人もさして変わらぬものだと思ってしまう。

 私の人生もまた、淡雪と同じ…刹那に溶けて消え去るように終わるのだ。

 愛しい人が共にある訳でなく…坦々と終わるに違いない…。


 願わくは…彼と共に在りたい…。

 ただ…それだけの…。



 
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