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真田十勇士

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巻ノ七十六 治部の動きその十一

「戦にならぬ様にされたいなら」
「多少はか」
「強引でもよいでしょうか」
「戦になれば民を巻き込みかねん」
 だからだというのだ。
「わしもな」
「それは、ですか」
「避けたいしな」
「では大坂城にこのまま」
「住む様なこともか」
「されてはどうでしょうか」
 家康が大坂を所望ならというのだ。
「そうされては」
「そうじゃな、ではな」
「はい、徐々にでも」
「ことを進めるか」
「これは上手くいくとは思えませぬが」
 天海も家康に言ってきた。
「茶々様とです」
「わしがか」
「ご婚礼を」
「申し出てはか」
「如何でしょうか」
「それはよいな」
 家康も実はそれが上手くいくとは思わなかった、だがこれが上手くいけばとだ。天海の話に乗った。
「ではな」
「はい、さすれば」
「時が来ればな」
「茶々様に」
「わし自ら申し出よう」
「それでは」
「それはよい、しかし茶々殿は非常に強情な方じゃ」
 家康も茶々のその気質はよくわかっていた、彼女を見ていてその気質を見抜いているのだ。
「勘気も強く気位もな」
「非常に高いですな」
「浅井家の姫君であられた」
 そして信長の姪でもあった、その血筋には複雑なものがある。
「しかもお拾様の母君」
「それが為にです」
「非常に気位の高い方じゃがな」
「しかしです」
「うむ、茶々殿とわしが夫婦になればじゃ」
 幸い家康には正室がいない、側室は多いがだ。
「天下も大坂もな」
「非常に容易に」
「戦もなく手に入られる」
「それでは拙僧のお考えを」
「入れようぞ」
 こう言うのだった、そして。
 本多正信と正純、崇伝にはだ。こう命じた。
「御主達は御主達の仕事を頼む」
「はい、では」
「そうさせて頂きます」
「その様にな、ではことを進めていこう」
 家康はこう言ってだ、そのうえでだった。
 一つ一つ手を進めていくことにした、まずは諸大名達との婚姻を結んでいくのをさらに強めていってだった。
 前田家についてだ、本田正純が言った。
「この様にです」
「わしを暗殺しようとしたとか」
「言えばです」
「そこからじゃな」
「はい、前田家をもです」
 天下第二の力を持つと言っていいこの家をというのだ。
「こちらに引き込めます」
「それが出来るか」
「そうなればです」
「力強いな」
「殿と江戸の竹千代様にです」
「前田家ともなればな」
 家康にとってはだった。 
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