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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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119部分:再会その五


再会その五

「それでも攻撃する時全員あの馬鹿でかい雷球受けるよ」
 フェルグスが反対する。
「ならば散開し時間差で攻撃すればいい」
「えっ!?」
 普段無口なシヴァが言ったので皆驚いた。
「・・・・・・とりあえずそれでいいんじゃないの?」
 まずラドネイが賛同した。
「動きの素早い人がまず突っ込んであの雷球をかわしてそこに他の皆が総攻撃を仕掛ける。それが妥当でしょ」
 ディムナがシヴァの考えに己が考えを付け加えて言った。
「ではそれで行きますか。異存はありませんな?」
 その場にいた者の中で最年長のコノモールが取り纏めた。誰も異存は無かった。
「よし」
 イシュタルをぐるりと取り囲みだした。半円が空と陸からイシュタルを包囲する。
(来ましたね)
 アルスター城の時とは一人一人の強さがまるで違っている。ひしひしと強烈なプレッシャーを感じる。ワープの魔法を使う暇も与えてくれそうにない。イシュタルは微笑んだ。自らの死地を解した。
(どうやら勝てそうにありませんね)
 敵側の作戦も解っていた。まず敏捷性の高い者達が何人か突進しイシュタルの放つトゥールハンマーをかわしそこに他の者で総攻撃をかける。それに対処は出来そうにない。
(しかし最後まで戦うのみ・・・・・・・・・)
 何人か前へ進もうとする。イシュタルは右手を横に掲げ雷を掲げている。今まさに放たんとする。その時だった。
“もう良い、イシュタル”
 何処からともなく声がした。高い少年の声である。
「!?」
 橋と船の炎が霧の様に消えた。そして河の中に崩れ落ちた。
 青い空が突如として夕暮れの様に暗くなり雲が瞬く間に消え去る。漆黒の巨大な渦巻きが浮かび生物の様に蠢く。その中心には台風の目の様に開いていた。
「な、何だこの寒気は・・・・・・」
 誰もが凍りつく様な寒気に襲われた。身体に纏わりつき離れない。そんな寒気だった。
 闇、否黒い光がイシュタルの側に現われた。その光は次第に人型となった。
「ユ、ユリウス皇子・・・・・・・・・」
 何人かが目の前に現われた者の名を呼んだ。そこには深紅の髪とルビーの瞳をした中性的な顔立ちの少年がいた。
 黒と金の軍服とマントに身を包んだ美しい少年である。しかし何か得体の知れぬ不気味な邪悪さが漂っている。そして怖ろしいまでの威圧的な気を放っていた。
 誰もが動けなかった。人とは思えぬ凄まじい、それでいて禍々しい気を前に顔を蒼白にさせている。
「ユリウス様・・・・・・」
「イシュタル、そなたはまだ死んではならぬ。私にはそなたが必要なのだ」
 右手でイシュタルを抱き寄せながら言った。
「し、しかし・・・・・・」
「良いな」
 紅い瞳がイシュタルの瞳を覗き込んだ。するとイシュタルはそれ以上口を開かず黙ってコクリ、と頷いた。
 ユリウスは口だけで笑うと顔を解放軍の諸将の方へ向けた。彼は構えも取っていない。だが皆動く事が出来ない。
「フフフフフ」
 まるで高位の生物が下位の生物を嘲笑う、そんな笑いだった。
「今は生かしておこう。私の楽しみの為にな」
 瞳が縦長となった。蜥蜴、いや竜の瞳に近かった。
「ハハハハハハハハ」
 ユリウスはイシュタルを抱き寄せたまま消えていった。天空の黒い渦も纏わり付く様な寒気も消え失せていた。
 ユリウス達が姿を消しても解放軍の諸将は動けなかった。セリスたちがトラキア河に着いたときそこには顔を羽毛の様に白くさせ立ち尽くす仲間達がいた。
 
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