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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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112部分:弓と雷とその三


弓と雷とその三

「撃て!」
 騎士達の拳からエルサンダーが放たれる。彼等に突き進む解放軍騎士団は身を低く屈めかわそうとするが避けきれず数騎が落馬する。
 これがテルシオと並ぶフリージの必勝戦術カラコールである。中隊規模で編成された魔道騎士団を等速度間隔で進ませ魔法が届く距離に達したならば最前列が攻撃をかける。攻撃を仕掛けた列は横からそれぞれの隊の最後尾に移動し次の列が攻撃をかける。これを繰り返し敵の戦力を削り取っていくのである。歩兵部隊のテルシオが重厚なものであるのに対してこのカラコールは機動力を生かしたものである。
「撃て!」
 二撃目が放たれる。またもや落馬していく。だが解放軍の騎士団は怯まなかった。斧や剣を手に突き進んで来る。
 それに対しフリージ軍は全く怯えたふうも無い。自分達の必勝戦術であるカラコールに対し絶対の自信を持っているらしく機械的に放とうとする。
「今だ!」
 最前列の解放軍の斧騎士達が一斉に手斧を放った。剣騎士達で魔法剣を持つ者は魔法を放った。
 フリージ軍の三撃目は放たれなかった。思いもよらぬ攻撃にカラコールの動きが止まった。
 「行くぞっ!」
 アレスの号令一下一斉に斬り込んだ。剣を手にしておらず魔法攻撃に頼っていたフリージ軍の騎士達は為す術も無く斬り倒されていく。
 アレスがミストルティンを右に左に激しく振り回す。人も馬も断ち切られ血煙が周りを真紅に染めていく。
 ヒックスが斧を振るう。その度に敵軍の将兵の頭が割られ胸が裂かれる。
 解放軍の騎士団は瞬く間にカラコールを突破した。フリージ軍の騎士達はその数を大きく減らしていた。
 右軍のラインハルトもオーヴァも感じた。最早カラコールは通用しない、と。
「ならば」
 反転した。そちらには今しがた突破した解放軍の騎士達がいる。
 全騎剣を抜いた。魔法は誰も放とうとはしなかった。
「全騎突撃!」
 二人はほぼ同じ命令を下した。両軍が激突した。
 先程とはうって変わって斬り合いとなった。数に優るフリージ軍はこれで勝てる、と思ったが違った。
 左右に配された解放軍の騎士達は全騎フォレストナイトやパラディン、グレートナイトといった剣や斧に熟達した者達である。それに対してフリージ軍の騎士達はマージナイトである。中には解放軍のオルエンやイリオスのように剣技にも長けた者もいるがやはり剣の扱いは上手くはない。次々と圧倒されていく。
 左右の戦局は圧倒的に解放軍有利となっていた。その中でもアレスの強さは群を抜いていた。
 剣を振るう度に馬の首が飛び人が胴を両断される。唐竹割りにされ袈裟斬りにされ、首が腕が動画風に飛ばされるように乱舞し血雲が立ちこめる。魔剣は血を吸い喜びに震えているようだった。
「そこにいるのはシアルフィの将の一人黒騎士アレスと見た!」
 声のしたほうを見た。そこには髪を後ろに撫で付けた若い騎士がいた。
「何だ、貴様は」
 アレスは尋ねた。
「フリージ雷騎士団のラインハルト」
 ラインハルトは答えた。
「そうか、貴様がフリージ最高の武人と謳われているラインハルト将軍か。俺はアレス、ノディオン王エルトシャンの子だ」
「やはり・・・・・・。ではその手にある剣は十二神器の一つ魔剣ミストルティンか」
「だとしたらどうする?」
 ラインハルトは腰の剣を抜く。
「卿に勝負を申し込みたい」
 アレスは不敵に笑った。
 
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