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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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107部分:鏡を持つ少女その二


鏡を持つ少女その二

「トローン!」
 右手から雷光を放った。左にいる男の腹を撃ち抜いた。
 二撃目を連続して放つ。右の男が至近で胸を吹き飛ばされ四散する。
 左手の拳を地面に撃ち付けた。赤い地走りが走り今矢を放とうとしていた男の足下で爆発が生じ男は炎に包まれた。
「後は御前だけだな」
 禍々しい眼の男と正対しイシュトーは言った。
「くっ・・・・・・」
「この村での惨劇は貴様等の仕業だな?」
「・・・・・・・・・」
 口を開かない。だがそれは肯定の沈黙だった。
「他にもまだ仲間が大勢いるな。言え、御前達は一体何者だ?そして何の目的でこのような事をする?」
「ううう・・・・・・」
 イシュトーはジリッと前に出た。
「答えられぬか?ならば無理にでも答えてもらおう」
 その時だった。不意に男が右手を挙げた。
「死ねえ!」
「むうっ!」
 男の身体の周りで黒い渦が数個生じた。それはすぐに球状となり一斉にイシュトーに襲い掛かった。
「甘いっ!」
 イシュトーは剣を抜きながら斜め前へ跳んだ。黒い球体は生物の様な動きでイシュトーに襲い掛かったが彼はそれを全てかわした。球体に一瞬顔の様なものが見えた。
「させんっ!」
 剣にボルガノンを宿らせ横に払った。男の首は地に落ち胴体共々炎に包まれた。
「大丈夫ですか、殿下」
 心配した部下達が駆け寄って来た。
「大丈夫だ、怪我は無い。・・・・・・しかし今の魔法、見ただろう」
「はい、あの異様な魔法、今まで見た事がありませぬ」
「面妖な・・・・・・。だがこのミレトスで恐ろしい事が怒っているのは間違いない。暫くこの村を探索するぞ」
「はっ」
 村は破壊され殺戮が行なわれていたが掠奪等が行なわれた形跡は無い。生存者は誰もいなかった。またどういう訳か子供の屍は一切無かった。一行は首を傾げながらも何の手懸かりも無く探索を打ち切りイシュトーの母ヒルダが城主を務めるクロノス城へ向かった。
 移動は一目の無い森を通った。深い森の中に木の枝が人の手の様に曲がりそこに蔦が絡み深く暗い足下には丈の低い植物が繁り妖精や魔物、小人といった人であらざる者達の囁きが聞こえてきそうであった。
「深い森だな」
 そう呟いた時不意に自分を呼ぶ声がした。
「誰か呼んだか?」
 部下達は皆首を振った。気のせいか、と思い再び暗い緑の中へ足を踏み出す。
“王子”
 また聞こえたような気がした。
「?」
 気になったが小鳥の囁きだろうと考えまた歩きだす。
“イシュトー王子”
 今度は気のせいではなかった。はっきりと耳に聞こえてきた。
「誰だ?私を呼ぶのは」
 問いかけた時また声がした。
“私です”
「私?妖精か小人か。私をからかいにでも来たのか」
“いえ、貴方に用があってここに来ました”
「私に?」
“はい”
 やがてイシュトー達の目の前に人の形をした淡く白い光が浮き出てきた。
 
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