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シークレットガーデン~小さな箱庭~

作者:猫丸
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-荒くれザンク編- 6


「うぅ……こわい…からあっちから行こう?」
「うっ、うん……」

恐怖のあまり人形を直視できないランファは人形が差す北西とは反対の南東に歩いていくことにした。

「(でも、あの人形が指さす方向…気になるな……)」

ルシアはどうしてもあの人形が気になり、人形が見えなくなるまでジーと不気味な人形を見つめ続けた。あの人形があそこであのポーズをしているのはなんらかの意味があるのではないかと……。

またしばらく不気味にカラスが飛び交い、誰かに見られているような感覚がする不思議で気持ちの悪い森を歩き続けた…するとまた。

「ひゃぁぁっ!!」
「あっまた……」

広い空間に右手の人差し指で北西を指さしランプを持っていて、左手は腰に置いたポーズのあの不気味に笑っている人形が先ほどと同じ場所に立っていた。……同じ人形だろうか?

「ひゃぁぁっ!!」
「あっまた……」

「ひゃぁぁっ!!」
「あっまた……」

「ひゃぁぁっ!!」
「………」

人形が指さす方向とは別の方向に歩き、そしてまた人形がいる広い空間に出ること三回。人形は同じポーズで同じ場所に立ち続けている。
…最初からこの人形に違和感を感じていたルシアはその違和感を確かめてみることにした。


「ねぇもしかしたら僕たち、同じ場所をグルグル回って迷っているのかも……」

どの方角に歩いても歩いても現れる人形は同じ物とゆうていで言ってみるが

「え……錯覚じゃなにの…?」
「気になるんだ。あの人形が指さす方向にいってみようよ」

頑なに人形とは関わりたくないランファは、嫌がるが少々強引的に

「確かめてみる価値はあると思うよ」

と言い聞かせ渋々納得させて

「……うー、わかったよぉー」

ランファの私物のリボンを人形の左肘に結び付け、人形の指さす北西へと歩いて見ることにした。すると……

「…あっ、やっぱり」
「あっー!リボンがなーいっ!?」

次にあらわれた人形は東を指さし左肘に結び付けていたリボンはなかった。
今まで翻弄してきたあの人形とは別物なのだろうか…?


「よし、次はあいつが指さす方向とは逆に行こう…」

人形が指さす方向とは逆の西へ進む。すると…

「あっ!リボンっ!?」

北西を指さした人形の左肘にランファのリボンがしっかりと結び付けてあったのを見てルシアは確信した。

「やっぱりこの人形は誰かが残した道しるべなんだ」

そう人形の指さす方角へ行けば次の人形が現れ、またその人形が指さす方角へ行けば別の人形が現れる…。この森のルールを発見したのだった。

「こんなに薄気味悪いのに?」

涙目で震えた声で言うランファにルシアは強く

「不気味で怖くても、きっと人形が指さす方向にシレーナがいるはずだっ」

と言い切った。恐怖なんてものを軽く吹き飛ばしたルシアを見てランファは秘かに…

「(無駄に前向きなのは、昔からなんだ…ふーん)」
「…?」
「なんでもなーい」

心の声が漏れていたがいつものように軽く流されなかったことにされてしまった。


何体かの人形たちに驚き、他に何も仕掛けがないかチェックしながら森の奥深くへ向かってずっとずっと歩いている。…のだが

「ううっ……いつまで歩き続ければいいのぉ~?」

半泣きでダラダラと肩を落として歩きながら、疲れた疲れたと駄々をこねるランファを

「きっとあともう少しだから……ね?」

となだめようとするが…

「それ何回目?はいしゃしゃんかよっ!」
「…う」

と的確にツッコまれ言葉を失う。お互い黙って歩いていると遠くの方の目の前が少しずつ霧が晴れてっているのが見えてきた。

「あっ!光ー。やっぽーいっ出口だぁー!」
「あっ待ってっ!」

霧が晴れかけて少し森の外からの光が漏れているのを見てランファは咳ほどまでの恐怖心が何処かへ吹っ飛んでしまったのか、それともついに壊れたか、笑顔で一気に森を抜けようと走り出した。
慌ててルシアもランファを追いかけ…


「……エ?…ナニコレ」
「ど、どうし……っ!」

出口と思っていた場所で突然、呆然と立ち尽くすランファに声をかけようとして息を飲む。
光の向こう側はゴールだった。でも決してルシア達にとって良いゴールではなかった…。

「ギャハハハッ」
「きゃぁーーーー!!」
「ダ、ダレかたすけ……っ」

紅い瞳の男がお爺さんの言っていた、さらわれた町のうら若き娘たち達をバッサバッサと剣で切り付けていた光景だった。
辺りには娘たちのもわぁっとした血の臭いと、男の狂った笑い声が森中に響き渡っていた。

「ひどい……ひどすぎるよっ!」

思わず非人道的な事を行っている男に向かって言葉が出る。

「あぁ?ダレだテェメら?」

奇声を上げながら娘たちを斬り殺していた男は、ルシア達の存在に気づき死んだ娘の体に剣を突き立てゆっくりと振り向いた。


「………」

黙り込んで様子見ようと思っていたルシアだったが何にも考えずに、自分の思った通りに動き己の正義を貫くランファは空気を読ない発言をした。

「私達は勇者様御一行だぁーーー!!」
「えぇぇぇ!?」

あまりにも急な予想だにしてなかったランファの発言に驚きまくり少々引き気味のルシア。

「ギャハハハッ!!オマエらみたいなヒヨコが勇者だぁ?ギャハハハッ」

男は腹を抱えて大爆笑する。

「笑うなーー!!」
「いやっ、笑わない方が無理なんじゃ……」

頬を赤く染め恥ずかしそうに言い返すランファを少々引き気味の呆れ顔で諭す。
ランファはルシアにだけ聞こえる小声で「貴方は黙ってて!」と怒られてしまった…。何故怒られなければいけなかったのかよくわからないルシアなのであった。



 
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