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シークレットガーデン~小さな箱庭~

作者:猫丸
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-荒くれザンク編- 3


あの日も今日と変わらない平凡でなにもないだけどそれが幸せな朝じゃった。
朝起きるといつものようにシレーナが朝ごはんにワシの好きなスクランブルエッグのせトーストを作ってくれたんじゃっ。

絶妙なふわとろ感でのぉ~一口食べただけで頬が落っこちてしまうほどじゃぁ。

「…はい。できたよ」
「おぉ~いつもながらにおいしそうじゃのぉ~。たまごがふわっふわっじゃぁ~」
「……フフフ」

シレーナは笑うことに慣れておらんから少し薄気味悪い笑い声に聞こえるかもしれんがこれは彼女の精いっぱいの笑い声なんじゃっ。勘弁してあげてぇのぉ~。

「これなら誰の嫁にいっても心配ないのぉ~」
「………え?私お嫁にいく予定なんて…ない」
「ふぉっふぉっ。まぁ、そうゆうことにしておこうかのぉ~」
「……?」

あの子は照れ屋で結構な鈍感じゃから、自分の気持ちもあんましようわかっとらんのんじゃろう。
じゃからこそっ!ルシア君には頑張って貰わんとのぉ~。

と…まぁこんな感じの日常会話をしてのぉ。

「…あ。そろそろ薬草摘みに…行ってくる」

日課の薬草摘みの時間になってのぉ。ワシはいつも通りに

「そうかい。今町で森へ行った若い娘がさらわれたと噂が出とる気を付けるんじゃぞ」
「うん。わかった…」

見送ってしもうてのぉ~。あの時!あの時!ワシが…ワシがもっと強く忠告して引き留めておればこんなことには…今頃シレーナだってシレーナだって……。

いつもなら夕刻を知らす金がなり終わる頃には、沢山の薬草が入った籠をもったシレーナが笑顔で帰ってきてくれるのに……あの日はいつまで待っても帰ってこなかったんじゃ。

まさかあの噂の人さらいにさらわれたんじゃっないかと思うて次の日町のみんなに聞いてまわったんじゃっ。
…じゃがのぉ~。

「シレーナちゃん、今日も薬草摘みかい?」
「…うん。」
「そうかい。いつもありがとねぇ。シレーナちゃんのお薬飲んだらうちの子、こんなに元気にっ!」
「シレーナお姉ちゃん、お薬アリガトウ。でも次作る時は苦いのじゃなくて甘いのにしてね…」
「まぁ…この子ったら!」
「「あははは……フフフ…」」

朝こんな風に世間話をしたのが最後だといわれてのぉ。
こりゃいかんと思うて森緑(しんりょく) の騎士団様に連絡したんじゃっ。…でものぉ。

「さらわれた証拠がありませんし、きっとその内ひょっこりと帰ってくるでしょう」

と門前払いされてしまってのぉ。全然相手にしてもらえなかったんじゃっ。

あれから三日……シレーナはまだ帰って来ておらぬ。あぁぁぁ…もし、もしものことがあったら…。


「回想しゅーりょー。ジュンジュワー」
「…じゅんじゅわー?」

お爺さんによるあの日起きたことの回想がランファのまた効果音とやらで終わった。
まだ意味がわかっていないルシアもわからないなりに、まねをし一緒になって効果音を言う。
それを見たお爺さんはキョトンとした表情で

「……ワシの話聞いてたかのぉ?」

と聞かれ心優しきルシアは

「えっあっうん。聞いてた、聞いてたよ」

とちゃんとフォローしたが正直者のランファは

「んー半分くらい寝てたっ。テヘペロッ」
「シッ!」
「………」

お爺さんも絶句するほどの自分に正直な答えだった。


気を取り直し話を本軸へ戻す。

「本当はすぐにでも探しに行きたいのじゃっ!……じゃがのぉ~」

お爺さんは痛々しそうに腰をさすり始める。

「じっちゃん腰ワルイの?」
「昔ヘマしてのぉ~」
「へぇーバカですなぁ~」

超ドストレートの言葉攻撃お爺さんの心は折れかけていた。

「ジェームズお爺さん。僕たちにシレーナが行った採取場所を教えて」

もしかしたらヨナをさらったあの般若の面の紅き鎧の騎士がそこにいるかもしれないとルシアは思い、お爺さんに聞いてみた。

お爺さんはパァ~と靄が晴れた表情で

「行ってくれのかいっ!?あ、ありがとうのぉ~。」

ルシアの手を握りしめ深々としたお辞儀を何度も何度も繰り返しながら言った。

「シレーナが行ったのはここから南に行ったところにある南の森じゃっ。あぁぁあとは頼んだのぉ~」

お爺さんの家を出ていつまでもいつまでも手を振りながら見送ってくれる お爺さんにルシアは大きな声で強く

「……うん。絶対にシレーナを助けてくるよー」

と言った。その横を歩いていたランファは何故か少しため息交じりで

「はぁーやっぱこうゆう展開になっちゃうよね~」

と肩を落とし猫背の前のべりの体制で言った。その言葉はルシアの耳には入って来なかったため、お叱りを受けることはなかった。

今まさに、ルシア達の知らぬところでなにか黒く邪悪な者達がうごめいているのであった…。


 
 

 
後書き



【無口な癒して】

名前:シレーナ
年齢:16歳
性別:女
種族;ヒュムノス
職業:看護師

容姿:色白金髪で右目が赤左目が金色のオッドアイ。
   髪型はポニーテール。白い白衣の様なワンピース。
   首からは生みの親の写真が入った銀色のロケットを下げている。
   左足は義手。

武器:癒しの杖
出身国:海の国
詳細:幼物静かで口数は少なく人見知りが少し激しく大人しい性格。…だが時折、毒を吐く。
ルシアに淡い恋心を抱いているが、大人しい性格ゆえに中々口に出せずルシアも鈍感な為中々進展しない。
幼い頃両親が離婚し父について行ったが何故か山の国の寂れた村に連れて行かれた。
そこで癒し術を学び、帰ってきて父の死を知り、禁忌とされる人体錬成を試みるも失敗。左足をを持っていかれた。
 
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