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STARDUST∮FLAMEHAZE

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第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#52
  FAREWELL CAUSATIONⅫ~Silver&Crystal Rond~

【1】


 幻 想(ファンタジー)寓 話(メルヘン)の情景。
 一人の少女の危機を、高潔な騎士と友愛の姫君が救う。
 聳える暗黒の怪物に怯みもせず、
たった一つの掛け替えのない生命を慈しむ心象。
 コレより美しい存在(モノ)がこの世にあるだろうか?
「フッ――」
 銀髪を携えた騎士、そのキラキラ光る横顔に
拳大の石が高速で飛来した。
「ぐごぉぉぉ!?」
 ヘタなスタンドバトルならそれで決着がつく一撃に、
頓狂な声をあげてその騎士、
J・P・ポルナレフがもんどり受って倒れ込む。
「テメー一体何しやがる! 
今ので死んだら世界中の女が何人泣くと、」
「うるさいうるさいうるさい! こっち見るな! 」
 背後で真王の巨眼が見据えているにも関わらず、
スタンド使いの青年とフレイムヘイズの少女は口論を始めた。
「大体助けに来てやったのにそれはねーだろ!
っつーか何でおまえ裸なの!?」
「そういう能力なのッ! 少し休まないと自己修復出来ない!」
 長い髪がほぼインナー代わりになっているが、
少女は白い稜線を手で覆い身を翻す、
まぁこのような状況でも乙女心とは複雑なのだろう。
「うぅ~」
 まだアイツにも見せた事ないのにと、
鳳鎧より顔を真っ赤した少女にフワリと大きめのパーカーが放られる。
「ま、理由は解らんが悪かった。
後は淑女(レディ)とオレに任せて休んどれや」
 そう言ってさらりと背を向ける青年の対応に、
少女は肩透かしを喰らう反面ひそかに感謝する。
「何コレ、あちこち焼け焦げててスッゴイ血の匂いがするんだけど」
「この状況でゼータク言うなよ……」
 何かの役に立つかもと拾ってきた、
スタンド使い『プラネット・ウェイブス』 本体の上着。
 気休めにもならないと想ったがこの用途ならまぁ上出来の方だろう。
 ついてる血が自分のモノだと知ったら、
まだぞろどのような罵詈雑言が飛んで来るか解らないので
青年はそのまま淑女の傍に歩み寄った。





 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!




 黄霞の封絶に聳える暗黒大樹。
 原初から在ったモノ、或いは終焉に現れるモノ、
いずれにせよ人の造りし文明の方がそぐわぬ異圧感である。
 また其の姿も、彼女に執っては西方の至高神のように
数多在る「化身」の一つに過ぎない。
 時に災厄を撒き散らす『邪龍』、豊穣を抱く『巨神』
姿形が定まらないのは“ファフニール” が魔名()の通りである。
 眼下に見降ろすスタンド使いとフレイムヘイズを認識する事もなく、
真王はその裡に宿る“冠帯” を睥睨した。




仔狐(こぎつね)――!』



永暦(とこよみ)樹麓妃(じゅれいき)様……』




 数千年の悠久(とき)を越えて、交わる言葉。




(ほう)? やはり(わらわ)は、其方(そのほう)の主上で在ったと見ゆる』



 幾千を越える魔眼が樹幹の至る所に浮かび上がり、
桜麗の九尾を眇めた。



()れば無粋な従属共々、(ひざまづ)無沙汰(ふさた)を乞わぬかえ?
想い尽さば先刻の非礼、不尽(ふじん)にしてやらぬでもない』





 王と真王、名は似ていてもその存在には桁違いの開きが在る。
 ティアマトーがまだ生まれたばかりの頃、
既に此の王は紅世の象徴処か『司柱』として、
世界そのものの「局」として君臨していたのだ。
 以前のティアマトーならば、是非も無く膝を折りその「威」に屈していただろう。
 しかしこの御方が紅世より消えたその日から、
永き時の渡りの中辿り着いた今の自分、は――
『できませぬ』
『ぬ?』
『我が子の前で、卑を晒す “母” が何処におりましょう?」
 どんなに苦しくても、気高さだけは失ってはならない。
 嘗て己が子を生かすため、焼け爛れた手に糧を受け続け与え続けた者、
その疵が死に至るその時まで――
 現実がどれだけ残酷で在ろうとも、運命がどれだけ理不尽で在ろうとも、
子を想う母親とはそういう存在(モノ)
快楽(けらく)、快楽。妾の樹根(あし)に纏わり微睡んでいた仔狐も、
いつのまにか親狐になっていたという事か。
時の流れとは(たえ)なるモノ。
今 生(こんじょう)に執心は無いと申すか?』
貴公(あなた)様に刃を向けし慮外(りょがい)
(ひとえ)に私の不義で御座いますれば、
伏して御詫び申し上げ致しましょう。
しかし矮小なる仔狐にも、命を賭して庇護するものが在るので御座いまする』
 通常というより(これ)ほどに喋れたのかと、
普段の彼女の寡黙さを知るなら驚嘆すべき光景。
 それほどまでに【真王】の圧威が絶大だったとも云える。
 断頭に架けられた仔狐、その表顕そのままに。
()かろう。(ちこ)()やれ」
 その言葉だけで、首を刎ねられるのが解っているにも関わらず
侍りそうになる誘引力。 
『貴女の仔狐が生んだ “子” で御座います。
御照覧あれ』
 瞬間、契 約 者(ヴィルヘルミナ)の手が眼前を薙いだ。
 途端に解れ、桜色の糸と為る晶玉の髪飾り。
 神器ペルソナ、其の名称そのままに白面の妖狐(きつね)と成りて
淑女の風貌を覆っていく。
 対して真王は盤石の構え、変貌の僅かの瞬間、
仮面諸共に斬り刻むのは可能であったが
淑女、ティアマトーの全力を(あそび)としてしか認識していない存在には、
容易い勝利の方が塵芥に等しき無聊で在った。
「“桜 蓮 漆 拾 陸 式 麗 滅 焔 儀(セイクリッド・ヴァレンタイン・ブレイズ)”」
 幸か不幸か、これから刳り出す(わざ)さえも、
防御すらせず真正面から受け止める心構え。
 絶対的な強者にのみ存在する恐るべき倦怠、
ソレに比すれば己の寝首を掻く者など
時空を超えてでも焦がれる渇望である。
四 精 霊 の 幻 想 曲(エレメンタル・アラベスク)火 戦 姫(サラマンドラ)!!!!!!!!!!!!!!』
流式者名-ヴィルヘルミナ・カルメル
破壊力-AAA+ スピード-A++ 射程距離-最大半径150メートル
持続力-AAA 精密動作性-B 成長性-C



 フレイムヘイズの名が如く、同系統の業の中では最大の威力を持つ奥義。
 神器ペルソナの能力でそのスベテは加圧(ブースト)される。
 そのコトに拠り通常の火の大刃による斬乱舞が一転、
宛ら自分の分身を生みだすスタンド能力が如く、
炎で生み出された戦姫を無数に『召喚』する!
 その総数(かず)35体。
 伝説のフレイムヘイズ、マティルダ・サントメールの秘儀を彷彿とさせるが
異なる点が二つ。
 一つは完全に攻撃に特化された能力なのでその一体一体の戦闘力が
“攻撃だけなら” 支配者(本体)のヴィルヘルミナに比肩し得るコト。
 もう一つは自律機動のスタンドと同じように
各々が「意志」を持っているという点である。
 このコトに拠りその行動が相手は疎か術者であるヴィルヘルミナですら
予測がつかない、スタンドと違う点はあくまで「術」なので
本体に造反する可能性が無い事であり術者が命じぬ「特攻」も
容易に行うというコト。
「殲ッッ!!」
 白面を被った淑女が命じるのを最後に、
炎の衣に甲冑を纏った戦姫達が待ち兼ねたといった様相で
緋色の帯を空間に描きながら側背面は無論、上下も含めた文字通り全方位から
現世に聳える暗黒大樹を襲撃する。
 その形容、悪神、邪神に勇ましく立ち向かう戦 乙 女(ヴァルキリー)もかくやか?
 その手に握られた炎の剣、槍、斧、矛、槌、鎌、弓、
銃を除く古のありとあらゆる武器が真王の黒き躯体(からだ)に殺到する。
 その一つ一つを執っても竜さえも屠るに充分な威力を宿した
武器の叢がりの同時波状、否、波濤攻撃。 
 故に――!
()()()、こそばゆいぞ! 許隷(ほれ)、もそっときやれ!』
 黒皮を啄む炎の装具に嬌声をあげる。
 統制は完璧、組まれる戦陣も流動に乗って万全、
当然戦姫達の進攻に拠る技も冴えに冴え渡る。
 炎の波濤、全撃着弾! 尚も増算現在進行中。
 だがソレを嘲笑うように真王、ファフニールは
防御も回避も葉鳴りすら示さず泰然自若の様相で屹立する。
 コレなら複雑な陣形は必要ない、最初から技を無視した力任せの、
通常絶対在り得ない戦形を行使出来たにも関わらず
“ソレでも” 撃すれば撃するほど致命が遥か遠くなるコトを
決定づける危殆を迫られる結果と為る。
 ダメージが無いワケでは亡い。
 だが10万が10、100万が100、一億が1000減った所で
生まれるのは希望ではなく絶望。
 疲弊なく常に全力で稼働出来る能力(モノ)は、
怨みを犠牲(エネルギー)にして死んでも尚動くスタンドでもない限り
存在し得ない。
 唸る剣戟、穿つ尖槍、()()ける断斧、
その他貫矛、潰槌、破鎌、剛弓、裂輪、錬盤、
あらゆる武器があらゆる技で撃ち込まれても
暗黒の大樹は躊躇(たじろ)ぎもしない。
 傷は、眼を凝らすと視える掠り傷程度のものは樹皮に浮かんでいるが
ソレを致命へと齎す能 力(ジャスティス)は敵の手中、
全て徒労に阻まれる。
 能力が「意志」を持つ事が災いした、
一人一人個性があるため戦姫の中にはもう攻撃を止め、
本 体(ヴィルヘルミナ)の守護に移行(シフト)してしまった者も
複数見受けられる。
 勝負にならない。攻防にすら成っていない。
 正に大樹に(じゃ)れつく仔猫に同じ。
「――ッ!」
 己が焔儀の中でも最大の威力を誇るモノを二発、
それも無防備状態で喰らっているにも関わらずこの絶対的戦力差。
 玲瑞の晶姫足る彼女、氷徹の仮面にも焦慮の亀裂が走る。
 数多くの紅世の徒を討滅した、顕現した紅世の王とも対峙した、
ソレ以外のスタンド使い(異 能 者)とも交戦した事が在る。
 それでも――!




“コレは” 無い! この『差』は在り得無いッ!





(キャ)(キャ)(キャ)()()。そう気已(きや)むまいぞ?
(なれ)の慰撫、中々に奮えたわ。
“冥獄” の小僧には及ばぬが、アレとは(ねや)(とき)が違うでな。
余り(いや)むでない』    



 焼疵(キズ)はごく僅か燻された香気のみが揺蕩う不毛の戦場、
その禁忌の蘭麝(らんじゃ)耳朶(じだ)を弄する(こえ)により、
心象に受けた衝撃とは真逆の感情に屈しそうになる。
 現に自制が尋常の戦姫の幾人かは、
その存在に惹かれ仲間に止められている。
「通用、しないのでありますか……」
 バカンッ、と白面が目庇(まびさし)のように撥ね淑女の美貌が露わになる。



沙呈(サテ)、そろそろ死ぬるか?』



 惨虐と深愛、相反した二つの感情を同時に併せ持つ真王の心象。
 牙の葉鳴りがザワザワと、黒の刀枝がギリギリと、
彼女の存在を蝕む。
 絶え間なく押し寄せる、恐怖と絶望。
 孤独、孤立――
「今、であります!」
「よっっっっっしゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
――――――――――――――――――ッッッッッッッ!!!!!!!」
 喊声に応える喚声。
 古の皇女と現代の騎士。
 異なる時代に生まれた者同士とは想えぬ絶妙の呼吸。
 白銀の甲冑、脱鎧(パージ)、ソレが可能せしめる
超速四次元立体機動。
 先刻の淑女の流式(ワザ)をも上回る夥しい騎士の残像が、
鋼の(つら)なりと成って全方位から真王に楔を撃ち込む。
『スタンド使い』と“フレイムヘイズ”
 本来交わらぬ両存在の完全融合技。
流法式祁(フォース)
 白銀水晶。勇刃万条の大斬乱舞。
 戦騎夢幻の流法式祁(フォース)。 
ナイツ()オブ()エクス()グラウンド()
流法式祁名-J・P・ポルナレフ&ヴィルヘルミナ・カルメル
破壊力-S+++ スピード-AAA+++ 射程距離-最大500メートル
持続力-C 精密動作性-AAA+++ 成長性-S



「Bravo――――――――――ッッッッ!!!! Oo!! Bravo―――――――――――ッッッッッッ!!!!!!」
 燃え盛るような猛りと共に嘔き出される喊声(コエ)は、
好敵(あいて)にではなく淑女に対する称賛。
 彼女が懸命につけた微かな瑕疵(キズ)を、
己が剣撃によって()じ開ける。
 スタンドは精神の原動力(エネルギー)
ヴィルヘルミナの全身全霊を決して無駄にはさせないため、
仁、智、勇を兼ね備えた騎士の信念は通常を遥かに超えた
能力(チカラ)を両者に与える。



()()()、“幻朧使い” か?
紅世の徒とも柱の者共とも違う眷属。
一度交歓(まみ)えてみたいと想うておったわッ!』



 強者ではなく稀少なるモノを見つけた時の感奮。
 撃ち突けられるは数多の剣戟、針串刺しの地獄。
 炎熱と軍撃からの奏功故、さしも黒皮にも破れが生ずる。
 無防備状態の被虐だとしても、数千年の刻を経て、
真王の魔血()が禁断の愛蜜(みつ)の如く噴き出す。
(――何ッ!?)
 比類無き剛勇、紅世の王 “千変” シュドナイの()
敵を苛む甲蟲(ムシ)と成ったが、コレはソレとは次元が違う、
(しか)も 『逆』 の特性。
 飛沫が本体とスタンドに触れて、ポルナレフが驚愕したのは
皮膚と外装が“溶けたからではなかった”
 四次元立体機動の最中、一秒を遥かに凝縮した時の(まにま)に、
時空間が消し飛ぶ以上の衝撃を受けた。
(き、傷がッ! スタンドの隕石で受けたダメージが!
跡形もなく“治癒(なお)っていく!?”)
 驚異はソレだけに留まらず。
(し、しかも何だ!? この感覚は!? この漲るような(パワー)はッ!
周囲の全てがスローに視える! 
まるで『生命(いのち)のガソリン』を身体に注ぎ込まれたようにッッ!!)




暗   黒   耀   体   験(グリード・オプシディアン・エクスペリエンス)




 古よりの伝承として、人智を超えた魔獣の血には、
畏るべき魔力が宿っているとされる。
 曰くその血を浴びた者の肉体を不死身にする、
曰くその血の生みだす毒気が一国を滅亡させる。
 石仮面が吸血鬼の例を出すまでもなく、
ソレが紅世真王のモノならばその霊験は推して知るべし。
大 災 厄 の 中 の 希 望(ネオ・リスク・ネオ・ハイ・リターン)
 あるスタンド能力によれば「感覚の暴走」に過ぎないものが、
この場合はその幻覚が『現実』のモノと成ってしまう。
 本来他を(しい)する「血の毒」とは、
極論すればその個体がそれだけ「弱い」というコト。
己の身を傷つけられないよう敵へ(へつら)っているに過ぎない。
 真ノ強者にその必要がどこに在ろう?
 寧ろ己に抗う者が悉く死滅する倦怠こそが「毒」と云えるだろう。
「喰らえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――
―――――――――――――――――――――――ッッッッッッッ!!!!!!」
白銀(シルバー)」が『黄金(ゴールド)』に成ったかのように、
事実ソレだけの輝きを以て『黄金の騎士団(ゴールデン・ナイツ)』が進撃した。
 常闇の樹皮に、次々と突き刺さる剣針、数十万連撃、
しか、し――




『伽、矩、迦、禍、苛! 
“幽波紋” とはこういったモノかや!?
げに(たえ)なる痛覚(あじ)、極点の波紋も()くやか?
苦しうないぞッ!』




 現在、過去、未来を紐解いてみても、
スタンドの直撃を喰らって悦ぶ存在(モノ)など
“彼女” を於いて他にいないだろう。
 100年前北米、“異魔神”と呼ばれた男すらも屠った、
無限の回転を伴う究極スタンド能力ですらも、
彼女は己が光砲を自分に放ち無効化してしまいそうだ。
 全身を闇血に染め、歓喜の哄笑を挙げる暗黒大樹(ファフニール)
 凄惨な光景に視えるがソレはあくまで人間の視点から、
実際は真王の皮一枚傷つけた程度に過ぎない。
 虫の噛み千切りに血を流す人間はいても死ぬ者はいない。
 ソレほどの絶対的格差、スタンド使いとフレイムヘイズの
究極融合業を以てしても、その越えられないブ厚い壁をより
はっきりと認識しただけだった。
「通用、しないのか……
何をしても、全く……!」
 飛び散った真王の血から、ビルの瓦礫やアスファルトの亀裂から、
新緑の草花が露を濡らして咲き乱れる。
 死者を生き返らせる事はないだろうが、
このような 『再生促進能力』 はDIOの血でも出来ない。
 人類史上未曾有の頃、聖者、賢者、覚者無き刻、
『力』こそが【神】だった。
 その究極点に位置する七人の真王、
脆弱な人間などただ大地に(こうべ)を擦り付け
従属に縋る存在でしかなかっただろう。  
 そのような無為蒙昧な存在に()き、
各々別の「次元(せかい)」へと旅立ち、
“見捨てられた存在”が現在の万物の霊長という人間(モノ)に過ぎない。
 紅世の徒、王であってもその空白を縫って
見捨てられた存在を貪って悦に浸っていた盲獣(もうじゅう)に他ならない。
“彼等” は想い出すべきであった。
 生命の二重螺旋、炎の核に刻まれた追憶(きおく)
 真王(ソレら)に支配されていた恐怖を。
 箱庭の中で生かされていたという従属を。 
 告別の(きわ)は厳かに。
 次元の境界が断滅の葬送を奏で廻転(まわ)り出す。
 正面のみならず四方頭頂部に至るまで全方位、
表裏も死角も真王には存在し得ない。
「ま、待て――!」
 騎士に在るまじき懇願、だがせめて淑女とシャナだけでも。
 殺すよりも興に浸ってる者に対する一縷の望み。
 その矢先――!





『グヴォアァッッ!?』





 アリエナイ光景。
 暗黒大樹の一画、左面上方、その部分の黒枝(えだ)が傾ぎ圧し折れ
散華する黒葉、幹にも亀裂が走った。
「ちぃッ! 浅かったか!」
 巨大な樹幹、そのごくごく一部に走った蒼い斬閃、
ソレは真王の懐深くに抱かれた紅世の少女、
その樹掌()に虚ろな双眸で立つ『本体』の左腕を掠めていた。
 暗黒の木洩れの中から現れる闇蒼の月。
 その傍らを護る翡翠の従者。
 真王(カミ)は亡くとも人は生きる。
 生き続けられる。
 人が人で在る限り。
 誰かが傍に立っているのだから。
 共に苦難に立ち向かって()けるのだから。


←TO BE CONTINUED…












Uh… It's a cruel world (can't you see)
Uh… We can't get away (We can't get away)
tell me baby what it takes (tell me what it takes with a pain)
where are we going (Ah It's my pain)
Uh… It's a cruel world (can't you see…!)
Uh… We can't get away (we can't get away…!)
tell me baby what it takes (Uh tell me baby tell me what it takes)



 
 

 
後書き
はいどうもこんにちは。
何をヤっても無駄無駄無駄というカンジですが、
“彼女”はRPGで言う所の『裏ボス』
○ルテマ・○ェポンや○メガ・ウ○ポンのようなモノなので
さもありなんと言った所でしょう・・・・('A`)
ワタシの考える「本当に強い者」というのは、
勝負に勝とうとはしないンです。「遊ぼう」とするンです。
何故ならもう勝つ事が当たり前で息するのと同じで
「楽勝」でも『退屈』ですから寧ろ苦戦したい、
脅かして欲しいと望んでいるのです。
(スタイルの良い人が「太りたい」とか言ってるのと同じです)
故にこのような展開になりますし、
ソレ故に【真王】という設定が必要だったのです。
まぁ最後に弱点らしきものが見えましたが
おそらくファフニーちゃん本人は大喜びでしょう。
己に無いモノが手に入ったわけですから。
『総力戦』の最後の相手としては適任だったと想います。
また何かあったら追記するかもですが取り敢えずノシ。


PS 最後のフレーズは好きな曲のラストのコーラスですが
  「歌詞」ではないのでおそらく問題ないと想います。
   しかし規約に違反していたら削除します。
   悪しからず。  
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