真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~
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4部分:第二話 悠里対百代
第二話です
ではどうぞ〜
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第二話 悠里対百代
日は流れて日曜日、百代と悠里の対決の日が来た。
「東方、川神百代!」
「ああ!!」
「西方、天城悠里!」
「はい!!」
2人は胴着姿で返事をする。その様子を、他の修行僧や師範代は見ていた。お互いに礼をした後、2人は体の前で拳を構える。
「いざ尋常に……始めい!!」
最初に動いたのは百代だった。先手必勝とばかりに悠里に接近して正拳を放つ。動かない悠里を見て当たりを確信するが、
「え?」
次の瞬間、百代の体は宙を舞っていた。頭が混乱していたが、視界の端に映る悠里を見て、何が起きたか確信した。
「……巻空旋」
(構えが変わった……?捌いたのか……!?)
悠里は百代の正拳の力を殺すことなく、そのまま捌いて投げたのだ。『柔よく剛を制す』の体現と言ってもいい。修行僧にはただ百代が勢いのまま行って、正拳を避けられたように見えたが、師範代から上の三人には見えていた。
百代は空中で態勢を立て直して着地すると、楽しそうに笑った。
「やるな悠里!もっとやろうじゃないか!!」
再び百代は悠里に接近し、悠里に連撃を仕掛けた。
「あの歳であんな事をするとハ……やはり悠里は天才ですネ」
「先生が教えたんですかい?」
師範代のルーと釈迦堂は先程の悠里の技を見て驚いていた。百代の力を殺すことなく流した技術に。
「いや……ワシが教えたのは基礎の部分だけじゃよ」
「「は……?」」
それを聞いて2人は唖然とした。どう見ても今の悠里の技は完成の域にある。それを教えていないとなると、一体どうやって覚えたのか?
「あの歳の子供というのは本当に面白いのぅ。新しい知識や技術を次々と吸収する」
「まさカ……」
「悠里はの……基本の型からあの技を完成させたんじゃよ」
「いや……しかし、あれなら先生でも教えられるんじゃないですかい?」
「確かに教えることはできる。だがの……あやつは自分で調べ、学び、作り出したんじゃ……自分だけの技をの」
「確かに悠里は勉強熱心ですガ……そこまでしていたとハ……」
「それだけではないぞ、早くも気功も身に付けつつある。将来どのように化けるか、見ものじゃの」
「それでいて、まだ発展途上ですからね。末恐ろしいったらねぇですわ」
話を終えると、三人は再び悠里と百代に目を向けた。
見た感じは百代が責めていて有利に見えるが、悠里は百代の攻撃を的確に捌いて攻撃を流していた。だが、悠里が壁際に追い詰められてしまう。百代はすかさず正拳を放つ。捌ききれないと感じた悠里はしゃがんでそれを避ける。百代の正拳は壁を抉ると、悠里はその腕と胸倉を掴んで押し倒す。
「なに!?」
「おおぉぉぉ!」
悠里は空中で百代の上に乗り、地面にぶつかると同時に踏みつけた。そこから空中に上がろとするが、
「捕まえたぞ!」
「っ!?」
百代は悠里の足を掴むと、そのまま勢いを付けて振り回す。
「そぅら!!」
勢いのついたところで悠里を壁にぶん投げる。悠里は宙で自由になった体を立て直して、壁に着地する。余程の衝撃だったのだろう。悠里の周囲には丸いくぼみが出来た。悠里は再び百代を見据えると、壁を蹴って百代へと接近した。
「輪舞旋風!三散華!」
勢いをつけての後ろ跳び回し蹴りを放つ。更に三連撃を繰り出し、攻勢は悠里に移った。
「ハアァァァ!」
「オォォォ!」
2人の拳がぶつかり合うと、大きな衝撃が周囲に広がった。悠里と百代は互いに距離を取ると、互いに笑い合った。
「嬉しいぞ悠里!やっぱりお前強かったんだな!」
「それはどうも。俺は今、保ってるのが不思議だよ」
「私は今とても楽しい!悠里は『アレ』を使え。お前の本気が見てみたい!」
「……マジ?」
「勿論だ!!」
強く頷く百代に悠里はチラリと鉄心を見た。
「悠里、次の一撃だけ許可しよう。全力で行きなさい」
そう言うと数人の修行僧は一本の剣を持ってきた。片刃の悠里の身長より大きな大剣で、黒の刀身と二つの穴が持ち手の上に空いている。お気づきの方が殆どだろうがこの剣、あのFFⅦの武器でお馴染みのバスターソードである。今は試合中なので、説明は省かせていただく。悠里はこれを片手で持つと、肩に掛けて百代と対峙した。
「次で最後だからな……全力で行くぞ、悠里!」
「臨むところ!!」
悠里はバスターソードを回し、背中に背負って目を閉じた。百代は拳を構えて目を閉じる。お互いとも集中し、気のぶつけ合いが起こる。やがて沈黙が続き、両者は同時に目を開ける。初めに反応したのは百代。必殺の力の籠もった正拳を悠里に放つため、接近する。
「画龍……」
対して悠里は、百代が射程圏に入ったと同時に背中のバスターソードを抜き一閃する。
「点、晴!!」
渾身の居合い斬りは百代に当たり、百代は吹き飛ぶ。吹き飛んだ百代は倒れると動かなくなった。
「それまで!勝者、天城悠里!」
鉄心が叫ぶと回りからはおぉ、と声があがる。悠里は勝利が確信すると、百代へと近づき顔を見た。どうやら、気絶してるだけのようだ。悠里は百代を担ぐと、急いで道場を出た。百代の部屋に向かうというのが明白なため、鉄心は満足そうに頷き、ルーは悠里を追って出て行った。
……余談だが、百代を運ぶときの悠里の抱え方がいわゆる『お姫様抱っこ』で、手伝いに来てた数人のおばさん達が「あらあら、まあまあ」と言って見ていたとか。
試合が終わって10分後、百代は目を覚ました。
初めは少しぼぅとしていたが、隣に悠里がいることに気づくと何があったか思い出したようだった。
「私の負けか……」
「そうだね。身体は?変なところ無い?」
「ああ、大丈夫だ」
「そっか。鉄爺には俺から言っておくから、モモちゃんはまだ休んでなよ」
「わかった」
「じゃあ、後「悠里」ん?」
「今度から私の事は『モモ』と呼び捨てで呼べ」
「……なんでさ?」
「いいからそう呼べ。私に勝った男が子供っぽい呼び方なんて納得できるか」
「まだ子供だけど……」
「わ か っ た な ?」
……なんだろう?勝ったのは俺なのに何故命令されてるんだ?俺は……
「わかったよ……じゃ、モモは大人しく寝ててよ?」
「ああ。……悠里、今日はありがとうな」
「……クスッ。うん」
「っ!?///」
悠里の顔を見て百代はガバッ!と布団を被った。とりあえず元気そうで安心した悠里は百代の部屋を出て行った。
「あ、危なかった……」
悠里が部屋から出て気配が遠くなった事を確認すると、百代は布団から出て来た。名前を呼び捨てにして呼ばせるのはいい。たが、あの笑顔は反則だった。呼び捨てだけでも赤面するのに、最後の笑顔でとどめが刺されたと思う。
「大体、悠里め……なんだあの笑顔は……反則だろ///」
あれは完全に不意打ちだった。しかも、思いの外恥ずかしくなってしまい、今の百代の顔は真っ赤だった。
こうして悠里と百代の対決は、悠里の勝利で幕を閉じた。
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真剣で私に恋しなさい!
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弁慶のシーン追加とか最高ですね!あと燕ちゃんも確定でうれしー!!
あとは橘さんとか義経を!
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