真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~
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33部分:第二十九話 大和VSクリス開戦
第二十九話です
ではどうぞ〜
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第二十九話 大和VSクリス開戦
大和とクリスのプチ川神戦役の第一種目はチェーンデスマッチ。よりにもよって肉弾系、しかも熱のせいで大和は若干フラついていた。そんな状態の大和が導き出した答えは……
「ギブ……アップ」
「死闘に幕!第一勝者、クリスーーッ!」
「な、釈然としないぞ!」
クリスは弁明するが、大和は聞き入れる気はない。普段の大和でも同じ判断をしただろうな。
肉弾系では勝てるはずがない。ならダメージを受ける前にギブアップするけど、相手が納得しないから理由をこじつける。
そんなところか。もっとも、クリスも勝ちを拾ったようでいい気分じゃないだろうが。
「ほらクジを引けクリ。面白いのを当てろよ〜」
「んー……これだー!」
「えー……第二種目のテーマは『絵を描く』。平等にするために絵のお題は“まゆっち”」
「……え?私なぞを書くのですか?」
「私達だと大和と長年の付き合いだから、クリが不利になるんだよ」
「わ、わかりました、そういう事であるならば」
「脱いでくれるか。ヌードデッs」
「モモ?(ギロリ)」
「い、いや……なんでもない……」
余計な事を言いそうだったんで、俺はモモを睨みつけて発言を中断させた。モモは縮こまって少し体を震えさせている。
大和とクリスは互いに真剣にまゆっちを描いていく。途中、キャップが面白そうに思って参戦して筆を進める。あっという間に一時間が過ぎた。
「よーし。じゃあまずクリスの絵をオープン!」
「ちょっと照れるが……見てくれ」
クリスが描いたのは、まゆっちが1人風を受けて川辺に立っている物。立ち姿はとても凛々しく、綺麗に描かれていた。
「わぁ、凄いです。私なんかをこんなに綺麗に」
「綺麗はオーバーだろう。照れる。だが、心はこめたつもりだ」
「はい、ありがとうございますクリスさん」
「次は大和だな」
「俺の絵は、こうだ」
大和が描いたのは、まゆっちが俺達に囲まれて幸せに笑っている絵。クリスより画力は落ちるかもしれないが、絵のまゆっちがとても幸せそうだ。大和の絵を見たまゆっちは思わず涙ぐんでしまう。
「クリスさん。クリスさんの絵はとても素敵です。でも私、この絵を見て、少し涙ぐんでしまいました」
「審査員がそう思うなら、思うがままに」
「はい。私は、大和さんの絵を推します」
「二回戦は大和の勝利!」
二回戦はまゆっちの心を見事に惹きつけた大和の勝利となった。
これで大和とクリスの勝敗は振り出しに戻る。
大和は一勝できたが、その顔は先程よりも辛そうで薬の効果が切れてきたのは明白だった。
「どうする悠里?そろそろ大和辛そうだけど……」
「……だな。おい大和、顔が赤くなってるぞ。ちょっと診せろ」
「心配ご無用……げほっ」
尚も強がる大和だが、遂に限界が来たのだろう、咳が漏れた。
「も、もうダメです。松風私は行きます!」
「行けまゆっち!まゆっちなら出来る!止まれば倒れる自転車がまゆっちが選んだ生き方だ坂道を登るんだ!ペダルをこげー!」
「ど、どうしたのいきなりまゆっち!」
「そ、その大和さんは熱が上がってきたのではなく元から、もう……かなり高熱だったんです!」
「おい、まゆっち!」
まゆっちが自分の事を知っているとは思いもしなかった大和は、まゆっちを止めようとするがもう遅い。モロは俺に「どうする?」と視線を送るが、俺は両手で上げて「さぁ?」と返した。
「熱を薬と悠里さんの術で抑えて戦ってたんです!」
「まゆっち黙って」
「だってだってもう見てられません!熱を無理してまで戦うのが友達なんですか?ち、違うと思います!!!友達って言うのは……その、わからないですけどこうじゃなくて、その……大和さんとクリスさんには仲良くして欲しいのに……う、うぅ……」
「……お、おぉ」
「まゆっち……」
普段、自分が畏まっている分、全員まゆっちの言葉に黙ってしまった。ただ俺だけは、その様子を興味深そうに観察している。
「す、すいません……私みたいな新参者が。でもどうしても……言いたくて」
「いや、良く言った」
「ああ。思った事をズバッと言って貰わないと」
「え……」
「弟ぉ。薬で誤魔化してたのか。しかも悠里の快気功まで使って」
「ったくさぁ、どーでもいい時はすーぐギャーギャー言うくせに、ツラい時は黙っちゃってさ」
「だって言ったら確実に不戦敗だったろ。やだね。まゆっちは仲良くして欲しいと言ったけど、これはそのために必要な戦いなんだぜ。クリスに俺を認めさせるために。だから引き下がれない。男の、意地があるんだ」
「ガキンチョだなぁ。ふふ、久しぶりに年下らしいトコ見たな。……それと悠里」
その様子を見て、モモは楽しそうに笑うと、モモは俺の方へと視線を移した。
「お前、まゆまゆが大和の事知ってるの隠してたな?」
「え?そうなのか兄さん?」
「まぁなー」
俺は隠さずにあっさりと白状した。まゆっちは周囲を気にしすぎるあまり、自分の意見をため込んでしまう傾向があった。だからあえて大和の事を言わないように釘を打っておいて、危ない所でまゆっちに喋らせる。というのが俺の考えだ。まだはっきり意見を言うことが出来ないまゆっちには、これがいい機会だったしな。
「全く、悠里も人が悪いな。もしまゆっちが言わなかったらどうするんだ?」
「どうもしない。俺が大和を止めてバラしてそれで終わりだよ」
「結局バラすのか!?」
「鬼畜だな、お前……」
悠里の発言にモモは呆れているが、なんとも悠里らしいとも思った。他人に対してはしっかりするのに、肝心の自分は後回し。本人達に都合が悪いところまで利用してここまでするあたり、流石というべきか。
「さて、クリス提案なんだが」
「聞こう
「今、丁度1対1だから、次で決着にしないか」
「いいだろう。別にいいぞ自分は」
「って事だまゆっち。試合数をへらした。後一勝負だけやらせてくれ。頼む」
「わ……わかりました。そこまで言われるなら」
「ありがとう!」
「やるじゃんまゆっち!」
「これからま言いたいことあればガンガン言え」
「一年だからって、かしこまる必要ないんだぜ」
「そうそう。おどおどしてると気を遣うから。今ぐらいが、丁度いいかもね」
「は……はいぃ……」
まゆっちがみんなに認められた瞬間だった。
そして大和が最後に引いた種目、それは……
「山頂からダウンヒルランニングバトル」
「あーあーあ、土壇場でそれ引いたか」
「山頂の展望台からここまで降りるランニングレースだ。山の中腹にチェックポイントを2つ設けた。ゴールにはここのチェックポイントに行ってクイズを答えてサインボールを貰ってくる必要がある。道の途中にあるポイントには難しいクイズを、離れた場所にあるポイントには簡単なクイズを用意してある。どっちに行くかは本人の自由だ。原則的に乗り物に乗らなければどこを通ってもいい。但し、妨害はNG」
「クイズが分からなければ立ち往生か?」
「次の問題を頼むといい。間違えた場合も同様だが、次の問題が出るまでは1分かかる」
「痛いロスだな…なるほどこれは油断できん」
「クイズは西洋史、日本史、雑学、数学、物理からジャンルを選べる。あと、今回はパートナーを選べる」
「パートナー?」
「クイズを一緒に考えてもいいし、終盤疲れたら代わりに走ってゴールしてもらうとか。兎に角、サインボールを持ってる方がゴールすればそのチームの勝ちだ」
「まゆっちとモロはチェックポイントで問題役。モモと俺はレース中の審判で、キャップがゴールを務める。パートナーは京とワン子の2人のうち、どちらか1人だ」
一通りの説明を終えると、俺はコインを出して、大和に渡した。
「大和がコイントスしろ。表がワン子で裏が京」
大和がコイントスをして出たのは表。ペアは大和とワン子、クリスと京のペアとなった。
俺達はその後、すぐに山頂に移動した。
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まだ続きます
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