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機動戦士ガンダム SEED C.E71 連合兵戦記(仮)

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間章 3話 戦火に覆われる地球 開戦編

C.E 70年 2月11日、

地球連合はプラントに宣戦布告 同日中にプトレマイオスクレーターに建設された大西洋連邦軍の月面基地、プトレマイオス基地から旧大西洋連邦軍所属 地球連合軍第9艦隊が発進した。

この際、大西洋連邦軍内のブルーコスモス派将校らによる強い要請により、1発の核弾頭が 旗艦、アガメムノン級宇宙空母 ルーズベルトに持ち込まれた。

この核弾頭は、対艦隊、宇宙軍事拠点破壊用のもので、通常戦力によるザフト軍の排除が不可能な場合、或いは戦力の半数が損害を被った場合にザフト軍唯一の軍事拠点である旧理事国艦隊駐留宇宙ステーションに対して使用するためと表向きは連合軍関係者には説明されていた。

だが、核弾頭搭載を主導した将校らとその背後にいたブルーコスモス強硬派の幹部達の目的は別であった。影から核弾頭搭載を推進したブルーコスモス強硬派幹部らは、今回の作戦でプラントをたとえ制圧できたとしても、一度調子付いたプラントのコーディネイターはナチュラルからの自主独立を諦める事無くザフトを再建し、ナチュラルに対してのテロを行い続け、地球全体の脅威となり続けると考えていた。

それを阻止するには核攻撃によってプラントの中枢となっているアプリリウス1を破壊することで、抵抗の意志を完全に削ぐことでしか達成できないと考えていた。

そのために宇宙艦隊の旗艦 アガメムノン級 ルーズベルトの士官クラスのクルー、モビルアーマーパイロットは全員ブルーコスモスの人間で固めて置く等の根回しを行っていた。

C.E 70年 2月14日 ザフト軍は、宇宙ステーションに設置した試作段階のニュートロンジャマーを作動させることで地球軍宇宙艦隊の誘導兵器と電子機器を無力化。
ザフト軍は地球軍宇宙艦隊とモビルアーマー部隊に対して戦闘を優位に展開、地球側の最新鋭モビルアーマー TS-MA2 メビウスもザフトのモビルスーツ プロトジンとその発展機 ZGMF-1017 ジンによって次々とクレー射撃の的のごとく撃墜されていった。

自軍の戦力が、次々と削られていくのを見た艦隊司令は、核攻撃命令を発令、艦内で待機していた核攻撃機とダミーのメビウス ボンバータイプ6機と護衛機のメビウス24機が発艦した。

その20分後、第9艦隊は、戦力の8割を失いながらも直掩機のメビウス隊の決死の奮戦によって退却に成功する。同時刻、核攻撃隊も防衛用宇宙ステーションとアプリリウス1への侵入が困難と判断、ダミー部隊と散開した。

核攻撃隊は目標への攻撃が不可能な場合は、撤退せよ。と厳命されていた。だが攻撃部隊の多くは撤退することなどすでに眼中に無かった。

その理由は、彼らの多くが、初めての大規模な実戦によって冷静な判断が出来なくなっていたことだった。彼らも無論厳しい訓練を耐え抜いた優秀な軍人であったが、レーダーと通信機、誘導兵器が満足に使用できない状況下での戦闘など誰も経験したことの無いものだった。

核攻撃部隊は、ダミー部隊が派手に陽動を行っている隙に防衛部隊か手薄なコロニーを探した・・・…そして核攻撃機のパイロットは、ユニウス市への攻撃を決断した。彼がユニウス市を選択した理由は、今となっては知る由はないが、単に一番距離的に近かったためと考えられている。

この時、ザフト軍の大半は、補給のため母艦や宇宙港に帰還しており、残った数少ない部隊もダミー部隊の追撃に出払っていた。

その為、纏まった防衛部隊が展開していたのは、アプリリウス等の政治的、軍事的に攻撃される危険性が高いと判断されていたコロニーだった。

ユニウス市は、食糧生産用として農業コロニーへと改装されていたものの当初のジャガイモや穀類といった農作物生産はいまだに試験段階のものであり、 ユニウス1~6で行われていたのは、嘗てジョージ・グレンらがツィオルコフスキー号で行ったことで知られる合成食品素材の水耕栽培によるクロレラや藻類の生産で、ユニウス7にいたってはプラント内向けの宣伝用に生態系研究用のバイオスフィア区画を改装して北アメリカの田園風景を再現したのみで、これでは、到底プラントの全人口を賄うこと等不可能だった。
ユニウス市が、ザフトの宣伝機関が言う様に、プラントのパン籠となるのは、まだまだ先のことであった。


<以下のユニウス市周辺宙域での戦闘についての記録は、周辺に配置されていたデブリ対策用監視衛星の記録映像、メビウスやジンの残骸から回収された操縦レコーダー、生存者の報告に基づくものである。>

またユニウス市の周辺宙域に展開していたザフト側戦力は、中型輸送艦を改造した仮設防空艦1隻とジン2機のみ。

さらに運の悪いことにジン2機は推進剤補給のために後退していた。
攻撃隊のメビウス ボンバータイプ、メビウス8機を阻止するのは、仮設防空艦ただ1隻だったのである。

しかし仮設防空艦のクルーは果敢にもユニウス市に向う攻撃隊に対してレーザー機銃による迎撃を試みた。
攻撃隊が有効射程範囲に入った同時に仮設防空艦は、8基のレーザー機銃の火線を開いた。
その青紫の炎の雨を7機のメビウスは難なく回避した。

皮肉なことにこのときニュートロンジャマー対策のため、火器の照準は手動で行われていたのだ。
一応銃座を操作する人間は、飛来物処理課のメンバーで使用経験はあったものの一定のスピードで直線的に接近する隕石やスペースデブリを破壊するのと高い回避能力を持った最新式のモビルアーマーを撃墜するのとは勝手が違った。

そして攻撃を回避したメビウス部隊は散開するとそれぞれ胴体にマウントされた対装甲リニアガンを発砲した。

電磁加速されたその一撃を強引に武装化され、機動性が固定砲台に等しかった仮設防空艦が回避できるはずがなかった。

碌に装甲も施されていなかった防空艦は、メビウスの対装甲リニアガンを機関部と艦橋に受けて推進剤と外付けバッテリーを誘爆させ、瞬時に内側から火の球と化した。

同時に補給を終えたジン2機がメビウス部隊に襲い掛かった。

重突撃機銃を受けたメビウス3機が次々と砕け散る。

だが、護衛のメビウス4機も核攻撃機を援護すべく死に物狂いでジン2機に襲い掛かった。

その隙に胴体に核弾頭ミサイルを抱いたメビウス ボンバータイプがすり抜けていった。
それを見たジンの1機が反転し、追撃を図ろうとした。

もう1機のジンも援護のため重突撃機銃を掃射、1機のメビウスが左メインスラスターを抉られる。

だが追撃しようとしたジンの腰部に被弾して操縦不能に陥ったメビウスが激突、爆散した。
残ったジン1機も不用意に接近したメビウスを近接戦闘用の重斬刀で叩き切ったものの別のメビウスが放った対装甲リニアガンに右足を吹き飛ばされ、 返す刀で下方より接近した別のメビウスが背部メインスラスターの左側にバルカン砲を叩き込んだ。

バランスを崩したジンは重突撃機銃を乱射、1機を撃墜した。同時に最後のメビウスがジンに特攻した。
直後、激突した2機を爆炎が呑み込んだ。

時同じくして、メビウス ボンバータイプはユニウス7を射程圏に捉えていた。

「蒼き正常なる世界の為に!!」

後にザフトに回収された操縦レコーダーによって、プラント最高評議会の議場で、ナチュラルの脅威を煽る宣伝材料として幾度となく再生される叫び声をパイロットはコックピットで叫んだ。そしてパイロットはトリガーを引いた。

メビウスから切り離された核ミサイルは、ブースターから青白い推進炎を吐きながら、砂時計型の構造物へと突進していった。

核ミサイルは、ユニウス7の砂時計の括れ部分の宇宙港に停泊していた資材運搬用の中型輸送船に着弾、2秒後に起爆した。

直後、恒星のごとき輝きと高熱が膨れ上がり、瞬時に宇宙港を蒸発させ、ユニウス7を呑み込み、コロニー内部を巻き起こった突風と業火が都市部の高層建築、化学工場も素朴な田園も等しく叩き潰した。強烈な衝撃を受けた人工の大地が次々とパズルの様に崩壊した。

住民の多くは成す術も無く、吹き荒れた突風に吹き上げられ、灼熱の業火に呑み込まれていった。建物に逃げた者は、建物ごと、車でシェルターまで移動しようとしたものも人工地盤の崩壊と突風に吹き飛ばされ、絶対零度と数百度の高温が交錯する真空の死の世界へと投げ出されていった。

運よく生き残れたのは運良くシェルターの近くにいて避難出来た者位だった。更に飛び散ったユニウス7の残骸が即席の砲弾となって周辺のコロニー、太陽光発電衛星や宇宙船に突き刺さり、犠牲者を増やした。

これに巻き込まれたものの中には攻撃後、全速離脱を図っていたメビウス ボンバータイプの姿もあった。

次々とユニウス7の周囲で無数の爆発の華が咲いたが、ユニウス7の核爆発に比べれば、植物園のラフレシアと野に咲くタンポポ程の差があった。

ユニウス7のくびれ部分を起点に炸裂したその爆発の閃光は、再構築戦争を超える、世界規模の戦争の開始を告げる輝きとなった。

直ちにユニウス7周辺でザフト軍を中心とした救助部隊の決死の救助活動が行われた。
だが、スペースコロニーの崩壊によって厖大な数のデブリが発生する中での救助活動は困難を極め、逆に救助活動中の小型艇やMSに損失が出る始末であった。

このユニウス7の崩壊で、最終的に243721名ものプラント市民が犠牲となった。
その中には、プラント評議会 国防委員長 パトリック・ザラの妻であり、農業技師でもあったレノア・ザラも含まれていた。

この被害を受け、ザフトのアジテーターによる演説宣伝の嵐と理事国の傲慢な対応を受けた中でも長年、比較的穏健派が多数だったプラントの世論は、ザフト強硬派の宣伝工作と初期の情報の混乱に伴う地球連合各国の自作自演説の主張等によって数日と立たず、強硬派が世論の大多数を占める結果となった。

この時、一部ではスペースコロニーに対する核攻撃という衝撃的な事態を受けてパニックとなったプラント市民の中には、比較的理事国寄りであったメディアを襲撃する者さえいた。


また初期に理事国を中心とする地球連合加盟国が出した自作自演説は、連合側がこの戦争で犯した最大の愚策として一部の歴史家に指弾されているが、これは、当時の連合側……宇宙艦隊を派遣した大西洋連邦は、連合艦隊が核を装備していたことは認識していたものの、メビウスが搭載している核弾頭は対艦隊、宇宙ステーション用であり、プラントの砂時計型スペースコロニーを瞬時に崩壊させるような威力を出すのは、直撃でもない限り不可能である。

ましてザフトが防衛網を展開し、未知のジャミング(当初連合側は、ニュートロンジャマーをこの様に認識していた)装置を運用している状況下でスペースコロニーに直撃させる程の至近距離にまで接近できるなど有得ないと考えていた為であり、むしろ常識的である。


この『血のバレンタイン』事件が発端となり、地球圏は人類史上最大の戦火に包まれることとなる。

 
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