シークレットガーデン~小さな箱庭~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一章
第一章 物静かな看護師の闇 -荒くれザンク編- 1
「………ん」
「…目が覚めた?」
ここは寂れた村にあるボロボロで今にも崩れそうなルシアの家。
あの忌まわしき事件からもう数週間も経っている。
意外にもルシアのケガは数日で治り、すぐにいつも通り生活が送れるようになっていた。
だが逆にランファのケガは深く何日間も意識不明が続きやっと今この時目を覚ましたのであった。
「はっ!ヨナちゃんはっ!?」
慌てて飛び起きたランファはしっかりとした目つきでルシアを見つめしっかりとした口調で言った。
それを聞いたルシアは静かに俯いて悲しそうな顔で首を横に振る。
「………ごめんなさい。あたしが、余計な事をしたばっかりに……」
申し訳なさそうに頭を下げるランファを見てルシアは目を丸くし
「いや、いいんだ…。あの時、君が割り込んで来てくれなかったら僕は死んでた」
ランファの手を優しく握りしめ
「もう二度とヨナを助ける事ができなかった。また助けてくれてありがとう」
「………」
ランファはまだ己の罪を許せていないのか
うつむき黙り込み優しく握りしめてくれたルシアの手を見つめる。
しばらくランファの手を握った後、ルシアは優しく手を放し何処かへ出かける準備をし始める。
「ケガが治るまでこの家でゆっくりしていきなよ」
「ありがとう…でも、ルシアは?」
黙々と準備をしていたルシアの背に寂しそうなランファの声が伸しかかる。沈黙の後
「僕は…旅にでるよ。………あいつからヨナを取り戻すんだ」
と言ったルシアの瞳には大きな決意を固めた炎がメラメラと燃えているようであった。
それはまるで復讐心にも似た炎だった。
「待って!」
ベッドから立ち上がりランファは旅立とうするルシアの背中にしがみついた。
なぜいきなりこんなことをするのか全くわからないルシアは返答に困る。
だがそんなのお構いなしとランファは自分の思いをぶちまける。
「あたしも連れてって!!」
「え…でも、君はケガしているし。…それにこれは僕の問題」
「君には関係ない」と言いかけたルシアの言葉を遮り
ランファは強い口調で固い信念のようなものを語る。
「あたしにも責任があるの!! ………未来を変えたいの!!」
「…未来を変えたい?」
「はっ!?はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
よくわからないと言った顔でルシアが聞き返すと
急にランファはゆでだこのように真っ赤に染まり湯気まで出し
顔を手で覆い体を丸め「イヤイヤ」と「恥ずかしい~~」と悶絶し始め
「ど、どうしたの!?」
ルシアがどんなに声をかけても無視で一人でヒートアップしパニック状態で
また心の声がだだ漏れ状態に…
「(ニャーーーー!!ヤバイー!未来の事、絶対に他人無言って言われてたのに~~~!!
ついっ言っちゃったぁ~~~!!あたしのバカバカァァ)」
ポンポコと自分の頭を叩きだした。全く状況が把握できていないルシアは取り敢えず
「…えっと、もしかして……ランファは未来人なの?」
と聞いて見ることにした。…が返ってきた答えは
「ちゃっ、ちゃうねんっ!」
「………ちゃうねん?」
だった。
「あ、あたしは……そう! 超すごい占い師で超超能力者なのーー!」
とっさに作ったような 嘘まる出しの話をしだすランファだったが
「占い師と超能力者って矛盾してない?」
天然なのかルシアは普通に聞き返す。
「してないしてない、してないでよ~~とっ! あはははは~~」
…が適当に受け流がされ「この話は終わり」と無理やり中断させられた。
「で、旅をするってまずどこに行くの?」
半ば強引的に仲間になったランファは色々な荷物を持つルシアの横を手ぶらでゆうゆうと歩く。
「う~ん、まずは僕がいつも仕事を貰っている隣町に行こうかなって。
あそこならいろんな情報が行き来してるだろうし」
「ふ~ん、隣町ねぇ~」
なにやら意味深な顔で言うランファにルシアは少しちゃかしを入れて
「ん? 隣町でなにかあるの? 占い師さん?」
と聞いてみたが
「さぁ? 過去が変わったから未来も少し変わってるだろうから、歴史のことはわっかんないなぁ~」
「……れきし?」
期待していた返事とは全く違うものが返ってきた。
「あっ!ううん、今のなし!なんでもない、あたしのただの独り言っ!」
すぐにまた「なんでもない」とお茶を濁し話をうやむやにするランファなのであった。
「……??」
さすがに天然・鈍感・朴念仁・の三拍子が揃ったルシアでも 少し変だと思ったが
二度も助けてくれた命の恩人を疑うのはさすがに失礼だと、これ以上ランファに探りをいれるのはやめようと思った。
それに、こんな有頂天でバカッぽい子供にそんな器用な事ができるわけないと思ったからだ。
ページ上へ戻る