真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~
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23部分:第十九話 金曜集会
第十九話です
ではどうぞ〜
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第十九話 金曜集会
その日の夜、風間ファミリーの面々は秘密基地に集合していた。この秘密基地は麗子さんが管理しており、俺達は名目上ここの雇われ警備員となっていて、警備と交換条件で基地として使ってる。
「……という事があったんだ」
今は大和が俺と分かれた後、クリスと口論になったことを話した。なんでも、ワン子との勝負を賭け事にしてそれは正義じゃないと言ってきて、大和は男らしくないと言われたらしい。
「案内してやったのになんだよ……」
「拗ねるな拗ねるな。箱入り娘だったんだろ、考えが行き過ぎてんだよ」
「しょーもない」
「そうだけどさ……」
「悠里〜、こっちも少し構えよぅ〜」
そう言って俺の後ろからモモは覆い被さって来る。重い……てか、当たってる!
「む?この気は……」
「ガクトとモロだな」
「相変わらず2人とも凄いな……」
「流石はお姉さまと悠里だわ!」
そう言ってると、ガクトとモロが部屋に入ってきた。他愛もない話を少し続けてると、表に原付の止まる音が聞こえた。キャップで間違いないだろう。階段を駆け上る音の後、ドアが勢いよく開いた。
「ウィース!」
「待ってたわよ!ご飯!」
最初に反応したのはワン子だった。ご飯を待つ姿が完全に飯を待つ犬だったし。俺達は寿司をそれぞれ受け取って食べる。
「はい悠里、醤油」
「うん、ありがとう」
「はい、デスソース」
「いや、いらんだろ。普通ワサビだろ?」
「美味しいのに……」
京は残念そうにデスソースを自分の醤油の上に掛けていった。あぁ……醤油が赤い……
「さて、今日の議題はなんだったかな?」
「明日の遊ぶ場所を決めるんじゃないの?」
「それも重要だが……転校生のクリスのことだよ」
「クリがどうかしたの?」
「俺達のグループに入れようって議題出てたろ?」
「今初めて聞いたよ!?」
他の俺達を代弁するようにモロはツッコミを入れた。いくら気まぐれと言っても、唐突に言うのはどうかと思う。ちなみに俺は別に動じない。今更だし。
「だってウメ先生にも頼まれただろ?俺はいいと思ったんだけど」
「確かに面倒見ろとは言われたけど……でも、クラスメートとして仲良くするのとここに案内するのとはレベルが違うよ」
モロの言うことはもっともだ。この場所は俺達にとって特別な場所だ。だからこそ、簡単に誰でも入れて良いわけじゃない。それはキャップでもわかっている筈。
「そんなことわかってるって。でもクリスは逸材だし、ここの女連中に負けず気が強いし面白い!俺、気に入ったし一緒に遊びてぇって思った。久しぶりのメンバー加入になるけど、みんなどうよ?」
「1人ずつ聞いてみなよ、キャップ」
「うーし。じゃあまず牢名主のモモ先輩からどーぞ」
「賛成だ。クリスは欲しい。色んな意味で。いじくれる。いろいろな意味で」
「即答かよ……つか、またいじるのかよ?」
「安心しろ。私の相棒はお前だけだ悠里。そして私達の舎弟は大和だけ」
「ありがとう」
「別の意味で泣けてきた……」
「俺様賛成。理由は簡単、可愛いし骨があるから」
「クリはいらん子だと思うけど……いつでも勝負挑める相手が増えるはいいわね。ただあいつ自身はこーいうの好きかしらね?」
モモとガクトは賛成を示したが、珍しくワン子は中立の立場を取った。
「で……京は」
「私は反対。他人は増やさなくていい」
「僕も京と同じで反対かな。今更メンバー増やすのもどうかと思うよ」
京は当然反対。モロも意見は変えずに反対を貫いた。結果は賛成が3、反対は2。中立はワン子の一人となった。
俺と大和の票によって決まる。他のみんなは俺と大和に注目する。
「俺は中立だな。面白い奴だとは思うけど、正直、あいつがここに馴染むかどうか不安だし」
「俺も様子見。クリスも異国で1人は寂しいと思うけど……ワン子や兄さんの言うようにあいつ自身がここに馴染むかねぇ」
「そうだね。私もそこが心配」
俺と大和の言葉に京は反応した。もしクリスが何か言ってきたら排除するために全力で行くだろう。
「じゃ、クリスには声掛けるぜ。まとめると、京なんかは不満そうだし……空気悪くなりそうだったら遠慮なく切るって事で」
その言葉に全員が頷いた。切るという言葉を使う辺り、やはり京の事を考えてるということだ。
それはそうと、今日はもう一つ大事なことが。
「モモ、今月借りた金、早く返してくれ」
「わかっている。ほら、うら若き肉林にムチうって稼いだ金だ。さっさと私に貸した分持って行け金の亡者共」
「遠慮無く。今日も月内に払い終えたなぁ」
「じゃあ私も、七千円だったね」
「僕も回収。お金をきっちり返すのはいいけど……」
「まず借りんようにしないとな先輩。うし回収完了」
「アタシは三千円だから……誰か千円札持ってる?」
「はい両替任せて。この時のために崩してあるから」
「回収した。ハイ兄さん」
「おう……これで全額確かに月内に」
「……おい、残り140円しかないじゃないか」
「そうだな」
「これじゃあ学食でソバだって食べれないぞ……悠里、幼なじみが困っているぞ。金銭面で助けてくれ」
「俺かよ……アルバイトしなさいよ」
「また現場で積み荷を担ぐ日々が始まるのか」
何故か鳶服が似合うモモは度々工事現場で目撃される。ちなみに俺は短期で色々なバイトをするが、今はバイク便が多い。フェンリルの運転もできるから、という理由で始めたんだけどな。
「みんなお疲れ様。飲み物でもどうだい」
そう言ってやってきたのは紫色の卵形をしたロボット。このロボット『クッキー』は、本来ワン子の為に英雄がプレゼントしたのだが、ワン子が不要ということでキャップが譲り受けたものだ。
「はい、悠里は食後だからウーロン茶でいいね」
「あぁ、ありがとうクッキー」
ウーロン茶を受け取って一口飲む。その後、明日の遊ぶ内容について話し合ってから、再び座談になった。
「というわけで悠里、少し構えよ〜。最近冷たくないか〜?」
「別に冷たくないだろ……てか、また抱きつくのか」
そう言いながらモモは俺の背中に抱き付いてきた。
……しかし悲しいかな。この幼なじみ、本当によく育ったな……胸とか。
「モモ先輩にあんなことされる男子って悠里だけだよな……例外的に」
「大和が行くと寝技とかになるからね……」
「当然だ。悠里は私の相棒、大和は私達の舎弟だからな」
「そして私は嫁……」
「どさくさに紛れて捏造すな!」
とりあえず京にツッコミを入れておく。そんな感じに今週の金曜集会は終了。明日は河原で遊ぶことになった。
「ちなみに私はバットマン、悠里はゴードン警部だ」
「わかり辛っ!?ホームズとワトソン教授でいいだろ?」
「なら右京さんと亀山くんだな」
「なおのこと分かりづらいわ!!」
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今回は短いです
では次回
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