東方の賢者のソックリさん(１７歳)

時刻は昼間、場所は町中。

自分は"１７歳のうら若き少年。少年と言うことで至極当然ですが性別は♂

まぁ、男なんですが格好は中華風なドレス服、どう見ても女物。女性の装い。一応言いますが女装は趣味でない。もう一度言う。こんな格好は趣味でない。

この服ならむしろ全裸の方がマシかもしれないと思ってますよ。でも全裸で変質者の称号はほしくない。女装趣味と露出魔ならまだ若干女装変態の方がまし。それに全裸だと通報でなく襲われそうな悪寒しますし。

自画自賛ですが、容姿が良いんですよ。
女装させられる程に、おぞましい事に男から告白されるぐらい。全く嬉しくない。

容姿が良くて恩恵なんて有りません。容姿には昔から苦労させられてるんですよ。私の両親共に日本生まれの黒髪黒目の日本人な純日本人。なのに、祖先に西洋系の人間が居たのか髪は癖毛の金色、肌は白く、眼は薄い紫色。どう見ても日本人じゃ無いだろと言う感じです。

外国人風な容姿のせいでハブられました。
同年代で友達を造ろうとしても出来ない。

幼稚園で友達は出来ず。小学校でも出来ず。中学もほぼ変わらず。しかし高校から違った。悪い意味で。
　　　　
容姿に名前も関わってさらに嫌なことに成ったんです。

高校までは名前とか意識した事とかなかったんです。高校まで名前は少し珍しいかなって思うぐらいで日本ならそれほど居ても可笑しくない名前と思ってたんですけど……自分の容姿が、波打つ様な癖毛の金髪で色白な肌で紫眼だったことで変な事に。

高校から危ない感じのストーカーに浸けられだしたんです。所謂、オタク系の人達に。

何でだと思って悩んで先生に相談すると、教えられたのが東方project、そこに自分の名前と同姓同名のキャラが居たんです。しかも容姿が同じくくせ毛の金髪に紫の瞳。

自分の名前は八雲紫。(性別オス)
東方projectに出てるのは妖怪の賢者『八雲紫』

東方projectの舞台は妖怪の八雲紫が造り上げた妖怪や神様や鬼そして人が暮らす理想郷。伝説をそのままの萌えキャラにした様な幻想達が暮らす世界『幻想郷』
　私の似てるキャラ『八雲紫』は神も登場する幻想郷でトップクラスの実力者、境界を操る程度の能力と言うのを持ったチートキャラ。

そんなキャラに似てる。本人すら漫画をリアルにしたらこんな感じになるかと思うぐらい。

両親がこのキャラを真似て名前を付けたかと疑いましたが、東方の作品が誕生したのが自分の生まれた数年後なので違いましたね。偶然の一致でした。

純正ヒューマンである私とは種族的にも性別的に違う。姿も胸とか違う。同じであってたまりますか。それに『八雲紫』の様な胡散臭いキャラでない。『八雲紫』は胡散臭い。　

実は友達が出来ない事を改善しようと印象を良くしようと……なるべく微笑みを浮かべるようにしてたんです。今更ですがアレッてどう思われてたのかと気になったんです。『八雲紫』は胡散臭い。特に微笑んでる絵とか怪しい。八雲紫に似た容姿の自分の微笑みとかどんな風に見えるか。

　　
鏡を見て普段してる印象良くする微笑みを浮かべたら……ええ、なにも考えてない自分の顔なのに何かたくらんでるって思いましたね。つまり胡散臭い


話を戻して、ストーカーをしてたのは東方を見たことのある人達。

そしてストーカーの大体所属してたの総元締めみたいなのが漫画研究会、その会にストーカーを止めるように要求したら、図々しくストーカーを止めるかわりに何度か撮影をさせてほしいと要求してきました。

当然ですが拒否しましたらね。　　
漫画研究会の男達が土下座。　
一部に女子も。

それでも答えはNO。

いや、普通の撮影ならまだなんとか譲歩しますがね、用意されたコスプレが妖怪の賢者の八雲紫の紫のドレス……つまり女装。……いま着てるの。

いま着てることから想像できますよね。


あの時は集団に土下座させるとかどんな人間と思われたか、ドSの女王とかそんな不本意な噂が流れました。
原因を調べた人は、東方project、妖怪の賢者な八雲紫の事を知り学校で広まる負の連鎖

で、三日も続いたんでいい加減にキレて一人の肥満男を顔面を掴んで吊し上げ、止めるように誠心誠意頼みました。はい紫様と恍惚とした気持ち悪い顔でしたが止める事を誓いました。とにかくこれで土下座は止めました。

ただ一人だけ居た女の子
小柄な女の子でした。
泣いて頼んできたんです。

ええ、さすがに一度だけと約束して着ると了承。女の子が目薬を持ってたのを見付けて直ぐに後悔。

騙されたとはいえ了承。
更衣室に連れていかれてコスプレに……着せかえられました。着替えさせたの女の子、鼻息荒く脱がされる。ええ、女の子が変態だと理解したときには遅かった。

着替えて一時間ほどでしたか？
いえ、正確には覚えてません。
覚えていたくもない。

死んだ目の私が着てたのはゴスロリな八雲紫のドレス、フワフワの白いキャップ、白い手袋、オマケに扇子…本当にピッタリな服でした。……リアルな偽胸が入って谷間が出来てて泣けました。

それで撮影会。アレほど心が冷えた事は有りませんね。

『うおおおお！！八雲紫だ！』

『スゲエエデござる！絶対に本人でござろう！』

『スキマＢＢＡさまの降臨だぁ！！』

外に出ると野太い歓声です。
…とりあえず最後のだけは口が聞けないようにしておきました。　
それから興奮する野獣共を宥めて何枚か写真を撮られるだけで終わりました。

ええ、この時、気軽に写真を撮らせたのは未だに後悔してます。東方projectが校内どころか地域でも私が八雲紫似と有名になってる。調べると誰かがネットに昨日のコスプレ写真をupしてやがってました。


最悪でした。

似てると反響した余波で各地から暇人が集う。場所を調べて遠方から来た行動派のオタクです。
いえ犯罪者ですね。家の中の盗撮写真とかがネットでアップされてた時は寒気がしました。男で身の危険ってなんですか。

登下校から家の中まで狙われる最悪な環境です。
そんな嫌な注目のせいでオタク以外でも東方projectを調べる人が地域でさらに増、
知らない子供にスキマＢＢＡだとか言われた時は高いところから飛びたくなりましたね。

学校でも道ばたでも初対面の相手に八雲紫とか、紫様とよばれる日々。ゆかりんとかＢＢＡとも

こんな環境にしやがりました漫画研究会が謝罪もなしに、二回目のコスプレ打診をしてきた時は、殺意の波動に目覚めかけましたね。今度は此方から石を抱かせて土下座をさせました。
ただ土下座してる時よりも恍惚としていて逆効果だと悟りました。

勿論コスプレはもうしないと断りますよ。

此所では断れました。
なのに、漫画研究会だけじゃなくて他の生徒まで頼んできて、自主的と言う名の強制でまたコスプレです。自棄になって『八雲紫』の演技をしてやりました。

自棄になるのは良く有りませんね。
今度は動画サイトにアップされて絶対に八雲紫だろぉ！と大騒ぎ。ストーカーやら盗撮魔がまた増えた(泣)まさかのテレビの取材まで来た(泣)
こんな事が一年続いて、もう有名人。本当に不本意です。まるで芸人扱いです。誰がこんな状況を望みますか。

今回の事もそう……高校二年の文化祭でのコスプレ喫茶が決定、クラスが共謀して。

……当然私は『八雲紫』コスです。
一年間バージョンアップを繰り返して、もうコスプレの域を超えた普通の衣装です。扇子とか日傘は普通に五桁の値段に成りそうな高級なモノとかプレゼントされました。……ストーカーに。

今は着替えるのも面倒なので家からコスプレして外を移動です。もう街中でも平然と歩く。
　
泣きたい。

「……っつ！」フラッ

外を歩いていると突然。突然の立ち眩み。
気分がいきなり悪くなって視界が暗転。

「寝不足ですかね」
　
少しして治りました。

直ったんですが……立ち眩みで下げてた頭を上げると、其所には…オタクぽい青年、え、さっきまで居ませんでしたよね？

「！？」

青年の顔が驚きに、此方も驚いてます。

「す、スゲェ……すげぇクオリティの八雲紫だ！」

興奮したオタク。

「一枚良いですか！」

「握手してください！」

気付くとオタクらしい集団に取り囲まれていた。
可笑しい。
地元では慣れられてコスプレをしてても、注目される事は無くなってきてた筈なのに…、

！？

街並みが突然変わってるのはどういう事でしょうね。何処ですこの町は、見たことがない所です。まさかあの立ち眩みの瞬間に場所を移動した？

本当にどういう……

「しゃ、写真良いですか！」

「笑ってください！」

こんな状況が解らないときに面倒です。
とりあえずこの場から逃げたい。そんな事を考えながら自然と後ずさりました。

足を一歩後ろに出すと…

ズル

後ろに地面が無かった。

「！？」

バランスを崩して後ろに倒れる！

反射的に腕を後ろに回しましたが、何もない。
そのまま身体は地面にぶつかる事もなく、飲み込まれる様に何処かに落ちて視界が黒く染まりました。


「あれって！！スキマ！？」

「ま、まさか……ほ、本物」


そんな声を最後に聞きました。