真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~
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19部分:番外編 ハッピー・バースディ
タイトル通りです
ではどうぞ〜
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番外編 ハッピー・バースディ
2009年3月29日(土)
俺は朝からフェンリルで高速を走っている。長距離の試験運転ということで揚羽さんには燃料代貰ってあるし調子もいい。
途中のサービスエリアでフェンリルを停めて、タンクに縛り付けたナビで現在地と到着時間を確認する。
「……箱根があんなにキツいとはな」
今は静岡県は浜松市付近。この分なら恐らく、夕方迄には着くはずだ。
「……その前に飯だな」
俺はフェンリルを降りて昼食を食べに向かった。
燕side
今日は宣伝の仕事を終えて帰ってきたのは7時過ぎだった。
いくら借金が消えたとはいえ、お金が少ない家では納豆が主な収入源になる。そんなわけだから、誕生日でもなんでも仕事はある。
「……けど、やっぱりこれは嬉しかったな」
私は携帯のメールを開き、1ヶ月前の誕生日に来たメールを開いた。差出人は悠里くんからのお誕生日メールだった。デコメールとかの派手なモノでもないけど、覚えててくれて、送ってきてくれて嬉しかったのを覚えてる。
「フフ……♪」
知らず知らずの内に笑いが込み上げてきた。あの騒動の後も、悠里くんは夏休み中にこっちに来てくれた。二週間だけとはいえ、私には毎年のその期間が楽しみでしょうがなかった。
なにより、やっぱり好きな子が来るのは嬉しいし楽しい。
とはいえ、本人はかなり鈍感なのか、全然気付いてないけど……
そんな事を考えるうちに、家に着いた。鍵を開けて中に入る。居間に行くと電気が点いて、誰かが立っていた。
「え?」
今この家にはおとんはいないから私しか居ないはず……
そんなことを考えるが、その人物の顔を見て、
「や」
不信感は消え去ってしまった。何故なら、
「来ちゃった」
さっきまで思い出してた、天城悠里くんだったから。無邪気そうな笑みを浮かべてこちらを見ていた。
けど私は
「えぇぇぇぇえぇぇ〜〜〜!?」
思わず叫んでしまった。
悠里side
燕ちゃんが驚いた後、俺と燕ちゃんはコタツに入って暖まっている。いくら京都といえど、雪が降る日はさすがに寒い。
「ということは、おとんにバイクを預けに来たんだ?」
「うん。久信さんの腕は知ってるし、二つ返事でOKしてくれたから」
フェンリルは市販では手に入らない上に軍用で九鬼の機密品なわけで、それに久信さんが食いつかないわけは無かった。しかも、改造の費用は全て九鬼持ちというのも魅力的なんだろう。
本当はもっと早くの筈だったけど、どうせなら会っておきたかったから、燕ちゃんが家にいる今日にした。
「でも、私聞いてなかったよー」
「ゴメン。久信さんに黙ってるように言われてて……」
「む〜……」
と言って燕ちゃんは頬を膨らませた。予想してたけどね。
「……いいか。あとでおとんにはお仕置きだけど」
お仕置きて……
「何か食べようか?」
「あ、それなら準備してたから、ちょっと待ってて」
俺は台所に行くと皿を運んできた。皿には大きなステーキが乗っている。
「……これ、どこで買ってきたの?」
「川神院の冷蔵庫から拝借してきたよ。どうせ肉なら腐るほどあるから」
この言葉は嘘じゃない。川神院は寺院が肉が主食の変わった寺院だ。だから様々な肉が保存してあるわけで、その中から一つ貰ってきた。鉄爺にはちゃんと断ったから問題ない。その他にも野菜サラダとミネストローネ、パセリライスを盛ってテーブルに運んだ。
「これ……悠里くんが作ったの?」
「うん。……あ、材料は途中で買ってきたやつだから、心配ないよ」
「すごいね悠里くん……」
「ありがとう。……とりあえず食べようか、冷めちゃうし」
そう言って俺と燕ちゃんは食べ始めた。料理の方は好評だったみたいで喜んでくれていた。
夕食が食べ終えると、俺と燕ちゃんはお茶を飲みながらくつろいでいた。
「う〜ん……美味しかった〜」
「喜んでくれて何より」
「ありがとうね悠里くん」
「実はまだあるんだけどね……」
俺は少し意地悪そうな顔をして台所に行くと、冷蔵庫を開く。中からケーキの箱を取り出すと、テーブルに持って行って箱を開ける。中には丸太をイメージしたロールケーキが入っていた。
「これって……ブッシュ・ド・ノエル?」
ブッシュ・ド・ノエル。フランス語で『クリスマスの樹』。文字通りフランスではクリスマスに食べられる品物だが、一般家庭でも比較的簡単に作ることの出来るケーキだ。
「時間無かったから、そんなに手の込んだ物できなかったけどね。とりあえず、召し上がれ」
「いただきま〜す。あ、その前に写真撮っておこう」
燕ちゃんは携帯で写メを撮る。あとでブログに載せるらしい。その後、俺はケーキを切り分けて燕ちゃんに渡した。燕ちゃんはケーキを食べると
「おいしい……しかも可愛い……!」
「どうかした?」
「なんだろう……嬉しいし、美味しいのに……女の子としては負けた気がする……」
「……なんでさ?」
夕食なんて肉焼いたりしただけだよ?そんなに気にする事じゃないと思うけど……
そんな感じに2人でケーキを食べる。食べ終わった所で、俺は燕ちゃんに細長い箱を手渡す。
「これは……?」
「開けてみなよ」
燕ちゃんは箱を開けてみると、中には首飾りが入っていた。弥生時代を思わせるようなデザインの物で、中心には小さな鏡の様な物があった。
「誕生日おめでとう。……と言っても、1ヶ月遅くなっちゃったけど……」
燕side
悠里くんからお祝いの言葉が言われた時、私の中から嬉しさが込み上げてきた。……嬉しいのに、何故か涙が出てきてしまった。
「うぅ……」
「えぇぇぇ!?なんで泣くの!?」
悠里くんは私がいきなり泣いてしまったから驚いてしまっている。私も驚いているんだからどうしようもないんだけど。
「ご、ごめんね……う、嬉しいんだけど……何故か、泣けちゃって……」
本当は嬉しいのに、何故か涙が止まらなかった。
「お、可笑しいよね……ごめん、ね……」
「あ〜……ちょっと貸して」
悠里くんは首飾りを取ると、私の首に掛けてくれた。その後、涙を拭き取ってくれた。
「笑って。……燕ちゃんに泣いてる所は似合わないよ」
悠里くんにそう言われて、残りの涙を拭いて笑った。
悠里side
あの後、少し燕ちゃんと話とかした後に風呂に入ってから寝ることになった……のだが、
「なんで……燕ちゃんもこっちで寝るの……?」
「気にしない気にしない」
今、俺と燕ちゃんは足をコタツに入れた状態で、上に布団を被って寝ている。
ちなみに位置は俺が上、燕ちゃんが右の位置にいる。
「ちょっとやってみたかったんだ〜。歳の近い子とコタツで寝るの」
「へ〜……て、もう遅いな……」
時計を見ると、時間は既に12時を回ろうとしていた。明日も鍛錬あるし、そろそろ寝ないとね。
「寝よっか」
「そだね。鍛錬を疎かにしちゃいけないし。…おやすみ」
「おやすみ……」
「悠里くん」
「ん?」
「ありがとう。本当に嬉しかった」
「……どういたしまして」
俺と燕ちゃんはそのまま眠りについた。
翌日、先に起きたのは俺だった。時間はまだ余裕があるけど、燕ちゃんを起こそうか考えてると、
「うーん……Zzz……ナットウ…」
可愛らしい寝息を立てながら、燕ちゃんが寝ていた。……てか、夢の中でも納豆の販売してるのか?
「Zzz……悠里くん……」
「ん?」
「Zzz…Zzz……うーん……」
「……寝てるのか」
もう少し、そっとしておこう。そう思って、俺は顔を洗いに行った。
ちなみに、その後ろで
「悠里くん……好き……大好き……」
幸せそうに燕がそんなことを言っていたのを、悠里は知らない。
そしてこの後、燕が川神に来るのはまた別の話で。
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捻りのない題名ですが、そんなもんさと開き直ります(キリッ
……いや、難しく考えるよりシンプルが一番だよね
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