真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~
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16部分:第十四話 悪夢の館
第十四話です
ではどうぞ〜
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第十四話 悪夢の館
俺は郊外にある、霧島の養豚所に来ていた。外には数人の警備のゴロツキと犬が数匹いるが……
「よしよし……」
「クゥ〜ン……」
犬はこっちに懐いていた。動物というのは本当に賢い。俺は気を出して襲ってきた犬達に気を出して大人しくさせ、手懐けることに成功した。種類はドーベルマン。警察犬によく使われる種類だ。
「よし、頼むぞ……行け!」
俺の合図と共に犬達は走り出す。俺から暫く離れると、犬達は吠えだした。
「なんだ?今日は妙に騒がしいな……」
数人のゴロツキが遠吠えに気付いて、様子を見に行った。俺は見つからないように敷地を駆け抜けて、母屋の裏手に回った。身を潜めて表を見ると、あの黒塗りのセダンがあった。ナンバーも燕ちゃんを連れて行ったのに間違い無い。
それを確認すると、裏口の扉を少し開き、中の様子を確認する。誰もいないことを確認すると、タカの目を発動させ内部を探る。中にいるのはヤクザが3人、女の子が5人程。内1人は部屋に連れて行かれ、3人に囲まれている。
気の質から、それが燕ちゃんだということがわかると、俺は足早に部屋へ向かった。
燕side
私は今、ヤクザの3人に囲まれている。以前、悠里くんが殴って気絶させたあの3人だ。普段なら負ける筈はないけど、今は手足を縛られて動けない。しかも、おとんを引き合いに出されてしまい、抵抗することができない。
「へへへ……本当にやっちまっていいのかよ?」
「問題ねぇ。霧島さんが好きにしろって言ってんだ。なら俺達で楽しもうぜ!」
「こんな可愛い娘が相手なんだからな。一緒に楽しもうぜ?燕ちゃん?」
嫌だ、怖い!
私は後ろに下がると、3人はゆっくりと近付く。あまりの恐怖に私は今にも泣きそうだった。
(助けて…悠里くん……!)
「へへへ!それじゃあいただき……」
バァン!
服に触れそうになったそのとき、部屋のドアが蹴破られた。そこにいたのは、今さっきまで呼んでいた男の子だった。
悠里side
燕ちゃんを見つけた俺は、急いで部屋に向かって、扉を蹴破った。中には、この前俺がブチのめしたヤクザ3人がいた。
「またてめぇか!クソガキィィィィィ!!」
1人、また性懲りもなく突進してくる。
俺は拳を避けると、鳩尾に拳を放った。呻いて体を海老折りになった男の背に両手を落として跪かせた。そこへ俺は遠慮なく蹴りを加える。男は口から血を吹きながら倒れた。
「テメェ!タマ取ったらんかぁ!?」
大声を上げて1人がドスを構えて振り回す。俺はドスを持った右腕を押さえると、腕を捻り、腕に肘を加える。
グギィ!
「ぎがぁぁぁ!?」
声にもならない悲鳴を上げた男の腰から太い棒のような物を抜く。それで頭を殴ると、男は崩れるように倒れた。
残った一人を睨みつける。今までの光景が信じられないといった感じだ。
俺はそいつに一瞬で近づき、棒の先端を体に密着させた。
「や、やめ……!」
男が言う前に、俺はスイッチを押した。
バチバチバチ!
瞬間、強力な電気が棒を流れる。男は悲鳴を上げる事なく感電し、白眼を剥いて倒れた。口からは泡を出している。
この棒、実は家畜用のスタンガンだ。昔見たドラマで使われてたのを覚えてる。まあ、レノから電磁ロッド借りてるけどな。
俺は気絶したのを確認すると、燕ちゃんに近づき、縛っていた縄を解く。
「悠里くん……」
「ごめんね、遅くなって……」
「ぅっ……」
手足を縛っていた縄を解くと、燕ちゃんはいきなり抱きついてきた。俺は少し驚きながらも燕ちゃんを受け止める。
「うぅぅ……怖かった……怖かったよぅ……」
「うん……大丈夫…、もう終わったから」
「うわぁぁぁん……!」
余程怖かったのだろう。燕ちゃんはその場で泣き崩れてしまった。俺は燕ちゃんが泣き止むまで、背中を優しく撫でる。二分くらいすると、燕ちゃんは落ち着きを取り戻したようだ。
久信さんが無事ということを伝えると、燕ちゃんは安心したようだった。
今は他の女の子が閉じ込められている部屋の前にいる。中に入ると、4人の女の子が足枷で繋がれていた。
「……本当にクズ野郎だな」
霧島に対する怒りを覚えながらも俺は気持ちを冷静にして、足枷を外した。
外し終わると、俺はレノに電話を入れた。俺の携帯の電波を逆探知してるから、間違いなく着くらしい。あとは脱出方法か……
「あ、あの……」
捕まっていた女の子の1人が手を上げる。
「あの……養豚所を抜けるのが、一番近道、だけど……」
「なんで知ってんの?」
「ま、前に、ここの人達がこっそり抜ける際に、あっちに近道があるって、言ってた」
にわかに信じがたいけど、今はなにも案がないのでそれに乗った。連中の監視網をかいくぐって養豚所へ行く。しかし、中に入る前に何かを感じた。
「悠里くん、どうかした?」
「いや……なんだろう……?すごい、イヤな感じが……」
タカの目を発動させて見ても何もわからない。中へ入って見ると、中に何故か豚がいない。疑問が次々と浮かぶ中、一行は通路を進んで行く。少し歩くと、何かを踏んでいるのに気づき、それを拾い上げる。
「……靴?」
それは女性物の靴だった。何故こんな物があるのか?疑問に思っていタカの目で見ると……
「……!?!?……かはっ!」
俺は思わず靴を投げ捨てる。タカの目で見たビジョンは最悪なものだった。
まさか…こんな、こと……
「大丈夫、悠里くん!?」
慌てて燕ちゃんが近付く。他の3人はそれに見向きもせずに奥の扉を開ける。
「やめろ!開けるな!!」
俺は叫ぶが、3人は気付かずに扉を開ける。俺は燕ちゃんの手を繋ぎ、扉の中に入る。そこは丸いドーム状になった場所だった。
「な、なに……?ここ……」
「…ヒッ!?」
一人が悲鳴を上げる。その視線の先には、中央の杭がある。しかし、その根元にはいくつかの骨があった。
「……う、がはぁ!?」
タカの目でそのビジョンを見た瞬間、俺は嘔吐してしまった。今にも胃がねじ切れそうだった。
アレハ、ただの骨じゃなかった……あれは、ヒトの
「ゲホ……うぇ……」
これでさっきの靴の理由がわかった。そして、この犯人も……
「まさかそっちから来てくれるとはなぁ!」
突然、ドーム内に絶叫が響き渡る。その声は二階の観客席のような所から発せられている。
「霧、島……!」
「まさかお前も来てくれるとは思っても見なかったぜ、クソガキ!手間が省けたからなぁ!」
知っている霧島とは全く違っている雰囲気に少し驚くが、これが本来の霧島なんだろう。
「最初は松永の娘が目当てだったけどな……お前みたいな奴の悲鳴も悪くねぇ!」
「だから殺したのか…?女の子を家畜に喰わせて…!?」
「「「「え…?」」」」
「そこまで知ってるとはなぁ……やっぱお前を消そうと思って正解だわ!」
霧島はそれを聞いて楽しそうに笑った。その言葉を聞いて、女の子達は青ざめる。
「……どういうこと!?なに、喰わせるって!?」
「あいつ、連れ込んで用が無くなった女の子を、ここで家畜の豚に喰わせてたんだよ!そこで見ながらな!」
「ハハハ!最高だぜ?絶望的な顔しながら豚に喰われていく様わよぉ!自分で喰うのもいいが、見るのはまた格別だからなぁ!!」
「く、喰ったって……」
「カニバリズムか……」
カニバリズム。
人間が人間を食う行動、もしくはそのような習慣をいう。有名なところで言えば、映画「ハンニバル」シリーズのハンニバル・レクター博士がある。
「まぁ、扱いは家畜同然だからなぁ。家畜同士仲良く食べられちまえばいいんだよ!」
……今、なんて言った?
「楽だったぜ?金が無くて困ってる奴らに金を貸してそれ以上の金をむしり取って、その金で好き放題やれるんだからなぁ!全く、お前達も可哀相にな……あんな親の下に生まれたのを怨みながら死んでいきな、家畜みたいにな!」
ブチッ!!
「ふざけんな!!!!」
俺は大声で叫んだ。コイツはイカれてる。こんな奴のせいで、何人も犠牲になったと?ふざけんなよ……!
「テメェの勝手な快楽でみんな死んだだと?ふざけんなよ!!人の命をなんだと思ってやがる!?」
「は!口じゃいくらでも言えんだよガキ!話はここまでだな。さっさと食われちまいな!」
霧島がスイッチを押すと、ドームの反対側のドアが開き、外から豚の大軍が入ってきた。しかし、その顔には普通はない牙が見えていた。
「何、あれ……?」
「この豚は特別でなぁ。今まで人肉だけ与えてきた『人喰い豚』なんだよ。しかも腹が減ってて凶暴性が増してるぜぇ!」
楽しそうに話す霧島たが、俺にその言葉は入らなかった。俺は背中のバスターソードを取ると、顔の前でそれを構えた。
「燕ちゃん、その子達をお願い」
「悠里くん……?」
「ごめん。もう、堪えられそうにない」
俺は目を閉じて一度深呼吸する。そして、あの誓いを口にした。
「歩は果て無き荒野…奇跡も標もなく、ただ夜が広がるのみ…揺るぎない意志を…糧として闇の道を進んでいく…」
ずっと昔から聞かされた言葉、そして、父に託された想い。
「『夢を抱きしめろ。そしてどんな時でも、ソルジャーの誇りは 手放すな!!』」
直後、悠里は自身の気が爆発的に増える。それと同時に気の質や雰囲気も変わり、剣を振った風だけで床に僅かだが切れ目ができている。
悠里から出される気の奔流に、燕は驚いていた。
(嘘……これが悠里くん…?なんて気の量なの!?)
悠里から排出される気の量に驚く燕。今までここまで大きな気は感じた事がない。
「……絶対に許さねえ。お前らに容赦なんかするか」
豚の群れが迫る中、悠里はバスターソードを横に構えるそして、迫る大軍に横薙ぎに振り払った。
ズバァァァ!!
一瞬にして、数十匹の豚は肉片へと化す。その光景に全員が驚いていた。
「お前のその腐った思考……」
バスターソードを今度は片手で霧島へと向ける。『射殺す』ということばの体現であるかのように、悠里は霧島を睨みつけた。
『俺がブッ潰す……!!』
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この話はある映画からヒントを得たんですけど……見事にやっちまいましたね……
最近の映画ってホラーやサスペンスよりスリラーが多いからジャンルのボーダーが微妙だよね……
おかげで友達から見せられた
『SAW』シリーズはトラウマ…
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