八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第九十九話 夜の温室その四
「間違っています」
「そういうものですか」
「やはり人はです」
「人の道を守っているかどうか」
「それ次第です」
「守っている人は遊人でも違うんですね」
「一本筋が通っているという言葉がありますが」
執事服で佇んでいる畑中さんの周りに今も蛍達が飛んでいる、お顔の近くも一匹飛びその中での言葉だった。
「まさにそれです」
「そういえば親父は」
「筋が通っておられますね」
「そうなんですよね」
人の道はしっかり守っている。
「何があっても借金はしないし」
「暴力もですね」
「振るわないです」
「間違ったこともされないですね」
「僕の面倒も見てくれていますし」
例えどれだけ遊んでもだ。
「それでもです」
「そうあられますから」
「いいんですね、親父は」
「私はそう見ていますので」
「そうですか」
「実際一族の方も色々言われますが」
本当に色々言っている、一族で最悪の遊び人だの女好きだのだ。
「心から嫌っておられますか」
「それは」
「そこまでは至っていませんね」
「遊び方が駄目だって人はいますけれど」
際限のないそれがだ。
「人格攻撃はないですね」
「どなたもされませんね」
「僕も親父みたいになるなとはです」
そんな破天荒な親父でもだ。
「言われたことはないです」
「ああした遊び方はよくないと言われるだけですね」
「やんちゃもいいが程々にと」
つまり親父のやんちゃは程々じゃないということだ、タガの外れたそれは麻薬をしない坂口安吾とも言われている。
「言われています」
「お酒と女性は」
「そういうのだけなんですよね」
親父の遊びはだ。
「美食と。ギャンブルとか麻薬は」
「全くですね」
「しないです、どっちも興味がないです」
特に麻薬はだ、僕にいつもあんなのをする遊びは遊びじゃないと言っていた。
「見向きもしないです」
「ギャンブルについては」
「はい、しない方がいいですね」
「あれにのめり込みますと」
「親父みたいにはいかないですね」
「破滅します」
確実にという言葉だった。
「そうした人も見てきました」
「多いみたいですね、実際に」
「八条家は代々この二つとは無縁ですが」
ビジネスにしたことも手を出した人もいない、何でも昔はヒロポンといって麻薬は煙草屋さんで売られていたそうだけれど。
「止様もです」
「この二つには興味ないですね」
「麻薬は身を滅ぼします」
絶対にという言葉だった。
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