八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第九十八話 蛍光その十
「そうしてるんだ」
「そういえばベトナムでもやってるわね」
「そうだよね、あちらでもね」
「日本から蚊取り線香も輸入してるわ」
「あれもいいんだよね、けれどあれはね」
ペープマットにしてもだ、このことは。
「他の虫もやっつけちゃうから」
「ここで使ったら蛍も」
「そうなりかねないからね」
だから問題だ、蚊を殺すのはいいけれどこのことは問題だ。
「蚊取り線香は使ってないよ」
「そうよね」
「蜻蛉も飛ばしてないから」
「蛍も食べるから」
「そうだよ」
蚊を食べてくれる有り難い虫だけれどだ、蜻蛉達が上を飛んでくれているだけで作業中蚊に刺されなくて済む。
「そうなるからね」
「ここでは別のやり方してるのね」
「水溜りを作らない様にしてるんだ」
蛍を養殖する場所以外にだ。
「それで植物へのお水もね」
「ここお池みたいになってるけれど」
「川みたいに清流にしてね」
「蚊がいつかない様にしてるのね」
「そこにも金魚入れてるし」
「金魚って効果的なのね」
「いいんだよね、金魚って」
僕も好きだけれどこの魚は実にいい。
「ボウフラも食べてくれるしタフだしね」
「それでなのね」
「餌もちゃんとあげてるけれどね」
植物園の人がだ。
「ボウフラも食べるんだ」
「金魚様々ね」
「奇麗だしね」
金魚が人気のある最大の理由だ、何といっても。
「それもいいんだよね」
「そうね、金魚って赤くてね」
「奇麗だよね」
「ええ、ただダオが思うに」
「金色じゃないっていうんだね」
「赤いじゃない、金魚」
予想通りの返事だった、実は前にもこうしたことを聞かれたことがある。確かスペインからの留学生の子だった。
「金色もちょっとあるけれど」
「鱗が光ったらそう見えるよね」
「けれど基本赤いじゃない」
「まあね、けれどそう呼ばれてるんだ」
「そうなの」
「織田信長さんも好きだったそうだし」
何でも献上されてえらくお気に召されたらしい、僕が思うに怖い一面もあったけれど剽軽で砕けた一面もあった人だと思う。
「江戸時代なんか凄い養殖してたんだ」
「そうなの」
「奈良県とかでね」
郡山の方でだ、それで随分な収益があったらしい。
「凄かったらしいよ」
「金魚の歴史も古いのね」
「そうなんだ、それでね」
「この植物園でもなのね」
「そうして飼ってね」
お水の中にだ。
「ボウフラを食べてもらってるんだ」
「そうなのね」
「ただね」
「ええ、蛍の幼虫も食べかねないからよね」
「蛍は専用の水槽で飼育しているんだ」
卵の時点からだ。
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