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絶狼〈ZERO 〉MAGIC BLOOD

作者:魔界岸
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結末

SIDE真由

私の名前は稲森真由。
勉強に励み、オシャレだって興味があるどこにでもいる女子高生だ……辛い過去を持ち、魔法使いになってファントムと戦う事以外は……。

今日は晴人さんの誕生日と言う事で国家0課の刑事である凛子さんとプレゼントを探していた。
私はいつも最後の希望となりファントムと戦う晴人さんを尊敬してるし、今日くらいは休ませてあげたいと思い、神様にファントムが現れませんようにと願う。

「ごめんね真由ちゃん 付き合わせちゃって」

「いやそれは全然いいんですけど、誕生日プレゼントにシュガードーナッツって本気なんですか?……」

「晴人君が喜びそうで今私が用意できるのこれくらいしか思いつかなくて……」

最初は誕生日プレゼントにどこにドーナッツと聞いて、少し驚いたが確かに凛子さんの言っている事は一理ある。

「まぁ……それもそうですね……」

本来は誕生日の前に何か渡す物を用意するのが、ベターだと思うが、凛子さんは最近とても忙しいらしく休みもろくに取れないらしい……。
追い討ちをかけるようにファントムが現れる頻度が増え、個人的に追ってる事件も遅々として進まないようでかなり精神的にも体力的にも参ってる感じに見える……。

「やっぱり凛子さんも少し休んだ方がいいんじゃないですか?」

「晴人君も仁藤君もだし真由ちゃんだって高校行きながらファントムと戦ってる……皆大変なのに私だけ休んでる場合じゃないし」

いつもと同じ答えだ……凛子さんに休んだ方がいいと言ったのは一度じゃないし他の皆も言っているがいつも返答はコンピューターかの如く決まっていた。

そんな会話をしているうちにいつの間にか「はんぐり~」と言う車営業のドーナッツ屋さんに到着していた。
晴人さん行きつけのドーナッツ屋さんなのだが、店長がとてもユニークな人でオカマだが味も確かに美味しい。

「プレーンシュガードーナッツ持ち帰りで10個入りください」

「ごめんなさぁ~い 今日のはさっき全部売り切れちゃったの」

時間はまだお昼時なのに売り切れとは驚きだ。
どういう事なのか凛子さんと私は店長に話を聞くと店長はテーブルを指さす。

そこには長髪で真夏なのにも関わらず、黒いロングコートを羽織り、ドーナッツを口一杯に頬張る男の人の姿があった。
そこにはあまりの量の多さにテーブルに置ききれず、大量のドーナッツが入った袋が地面に並んでいる。
私もドーナッツは大好きだが、あんなに食べたらさすがに気持ち悪くなりそうだ……。

凛子さんは相当あてにしていたプレゼントを奪われ、イラっとしたのか男に詰め寄る。

「ちょっと、あなたどういうつもり?」

結局、男の人とも不審者扱いされ、イラついたのか立ち上がって応戦する。
男の人はスラッとした体型でとても大食いには見えないし不覚にもカッコいいと思ってしまった……。
凛子さんの会話はヒートアップし私も止めに入るが全く二人とも話をまるで聞いてくれない。
凛子さんはやっぱり疲れている……普段は温厚でこれくらいの事で怒る人じゃないのに……。

どうしようかと思っていた矢先、このタイミングでグールが現れ、通行人を襲う。
勿論、凛子さんと男の人の言い争いはストップ。

「後で合流しましょう!私も直ぐに後を追います!」

凛子さんに男を任せ、私はグールを殲滅すべく魔法使い「仮面ライダーメイジ」に急ぎ変身する。

左腕に施された宝石を魔力で強化した鉤爪スクラッチネイルが唸りをあげ、私はグールを次々に撃破していく。

魔法使いになってからは慣れない事の連続だった。
変身すれば身体能力は向上する……だが取っ組み合いの喧嘩とか格闘技とかそういった事には一切無縁だった私が急にファントムと戦うのは本当に難しい。
私を鍛える為、白い魔法使いが出現させたグールと戦う時もファントムとは言え物理的に攻撃するのが怖くて、どうしても強く攻撃ができなかった。
でもそれじゃダメ……このままじゃメデューサには勝てない。
私はメデューサに姉と両親の命を奪われた……何としてでもメデューサだけは倒して仇を取りたい 。
メデューサへの怒りや家族を奪われた事への悲しみが私を強くさせてくれた。
今ではグールを倒す程度なら朝飯前だし、メデューサと戦っても魔法を駆使しながら互角に渡り合える。
自分の成長に手応えを感じはじめていたものの晴人さんや仁藤さんみたいにもっと強くなりたい、力が欲しいと言う想いが日に日に募っていく。

メデューサを倒す為、……もっと強くならないと!

だから私は立ち止まってちゃいけないんだ!

グールを全て倒し終えると、私は急いで凛子さんの後を追いかける……それにしても基本的にはファントムを産み出すゲートとなる人間を襲っていたはずだが、最近は見境なく暴れまわっているように思えるが何かあったのだろうか……。

それより凛子さんたちは無事だろうか……恐らく面影堂に向かっていると思うが……。
何か胸騒ぎを覚えた私は変身を解除せず、凛子さんが通ったであろう一本道を走る。

そして予想以上に早く追いついたが、そこで見た展開は予想外。
凛子さんが男に拳銃を向け、男は鋭利な両刀を手に持ち睨み続けている。

よく見ると凛子さんの拳銃を持つ手はまるで何か得体の知れない怪物を見たかのように震えていた。
普段、ファントムような怪物を見ている凛子さんがただの人間に怯えるわけがない。
男はファントムできっと凛子さんを襲おうとしているんだと判断した私は凛子さんを守るようにして男の人の前に立ちはだかる。

「さぁ、終わりの時よ!」

私はその鉤爪を男の人に突き出した……。


SIDE零

「えっ!? ちょっと待てって!」

俺は女子高生が変身した戦士の鉤爪をかわすべく、空中で身体を捻り、背後に着地。

「落ち着け!」

恐らく俺をファントムとか言う化け物と勘違いしているに違いない。
さっき俺が見る限りでは人間を守るようにして戦っていたので持っている力を悪用しているわけではなさそうではある。
なので争う気は更々ないが、本当にめんどくさい街だ。

そんな事を思いつつ、戦いは続く。

その中で分かった事……巨大な鉤爪には俺の拳や蹴りは勿論、魔戒剣でも傷はつけられない。
鉤爪が大きいだけに攻撃も防御もそれ一つでこなしてしまう、まさに攻防一体の武器ってとこか……。

そして変身者の女子高生を俺は知っている……。
知っているだけで友人だとかそう言ったのでさないのだが、確かに見覚えはあった。

「まずお前は何者だ?……魔戒騎士じゃなさそうだしな!」

まず戦いの中で攻撃を受け流しながら、少しでも情報を集める。

「仮面ライダーメイジ……あなたみたいなファントムから希望を守る魔法使いよ!」

剣と巨大な鉤爪がつばぜり合うと、お互いの力と力がぶつかり合い、その反動で両者後退し、距離がひらく。

魔法使いか……まさかそんな空想のような力を持つ人間がいるとは驚きだ……。

「勘違いすんな 俺はファントムじゃないぞ?魔法使いさん」

荒々しい戦い方だが、逆に俺の反撃する隙がない……。
壁際に追い詰められ、鉤爪が俺の顔面を狙う……。

俺はしゃがみこみ、間一髪で前転し難を逃れたが背後からは地割れのような音が木霊する。
態勢をすぐさま整え、振り返ると魔法使いの鉤爪はコンクリートの壁に穴を開けていた。

何て言う破壊力……あれを身体に受けたらただではすまない。
あまり攻撃したくはないが、話を聞いてくれないんじゃ鎧を召還して、一度黙らせる意外にこの戦いを終わらせる方法が思いつかない。

仕方がないか……俺が剣を頭上に振り上げ、鎧を召還しようとしたその時だった。

【テレポート】

若干の距離が開いていたから少し油断していた……。
魔法使いがその場から消えたかと思ったら、突如として目の前に現れ、鉤爪を勢いよく突き出す。

この距離ではかわすことはできない。

俺は反射的に二刀の剣をクロスさせ、鉤爪を防御する……が、かなりの衝撃を受け俺は数十メートル吹き飛ばされ、両手に持っていた魔戒剣は地面に落としてしまう。

魔戒剣で防御してもこの威力とは……少し魔法使いを見くびっていたかもしれない。

「真由ちゃん待って!」

女刑事が俺と魔法使いの間に割って入る……。

「真由ちゃん、この人はファントムじゃないわ」

「えっ!?……でもこの人の身のこなし方は一般人とは思えませんけど……」

「彼は魔戒騎士……魔法使いと同じで希望を守る為に戦っているそうよ」

「じゃあなんで拳銃を?」

「敵か味方か分からなかったから仕方なく……でもこの人は少なくとも悪い人じゃない」

「何で分かるんですか?」

「私をファントムから助けてくれたし、真由ちゃんと戦っている時にも自分から攻撃しなかったから」

できるならもっと早く割り込んでほしかったが……、
まぁいい……この無意味な戦いが終わってくれて。
俺は彼女たちが会話しているうちに地面に転がった二本の魔戒剣を拾い、背を向けて歩き出す。

「待って!」

気づかないうちに立ち去ろうとしたが、女刑事に気づかれてしまう。

「さっきはすいませんでした!私たちに力を貸して欲しい事があるの!」

さっきまで敵視していて、力を貸せとは都合が良すぎる。
まず俺には指令がある。
こんなところで道草くってる場合でもない。

「貸す義理はねぇ」

「明日の午後二時に鳥井坂署で待ってるから!」

あの女刑事とは今後一切会う事はないだろうし会う気もない。
俺は背を向けて、歩き出しその場を去ったのだった。






 
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