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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第75話:新人さん、いらっしゃ~い!

 
前書き
正くん様から
リュカ伝更新を期待してる旨のコメントを貰ったので、
頑張って書き上げました。
嬉しすぎです。 

 
(グランバニア城・宰相兼国務大臣執務室)
ユニSIDE

「ウルフ君、アンタ凄い! ホント凄い!!」
就業時間の少し前……何時もの様に執務室で仕事をしていると、ビアンカ様が感極まった状態で訪れ、ウルフ閣下を褒めちぎる。
物凄い勢いで彼の側まで駆け寄り、両手を強く掴み締めブンブンと上下に振って感謝を言う。

「ゴメンね……この間は本当にゴメンね! 皆もゴメンね! 迷惑かけて本当にごめんなさいね!」
ウルフ閣下の両腕をブンブン振る事を止めず、先日の謝罪をもするビアンカ様……一体何が起きてるのだろうか?

「いいよ、もう……そんな事より仕事の邪魔だから出て行ってくれませんか」
自らの両手をビアンカ様の手から力尽くで外すと、この状況が迷惑である事を隠そうともしない表情で退出を促す宰相閣下。相手は王妃陛下ですけど、解ってます?

「うん、そうする。もう迷惑かけたくないから出て行くね。でも本当にこの間はゴメンね!」
そう言って軽やかなステップで退出して行くビアンカ様を、我々一同は不思議そうに見送った。
本当に何が如何したのだろうか?

「あの……ビアンカ様は……如何なされたのですか?」
恐る恐るウルフ閣下に尋ねてみた。
我々に教えて問題ない事であれば、ウルフ閣下も説明してくれるはずだから……

「ビアンカさん……旦那にお仕置きされてたんだよ。内容は秘密だけど、彼女にはキツイお仕置きね。その噂を聞きつけたから、真偽を本人に確かめたら真実だったんだ(笑) んで、何とかしろって命令されちゃってさぁ……何とかしてやった訳よ」

お、お仕置きってアレよね!? 夫婦の営み拒否の刑よね。
それを何とかするって……如何したの!?
如何すれば、あれほど感謝を言わせるくらいの事が出来るの!?
リュカ様を言葉巧みに操ったって事よね?





就業時間を迎え、殆どの者が帰路につき……そして残業をしてた者達も席を立った頃、気になっていたビアンカ様の事をウルフ閣下に尋ねてみる。
「あの……閣下。ビアンカ様には何をされたのですか?」

「ビアンカさんには何もしてねーよ……旦那の方を(けしか)けただけだよ」
(けしか)ける?」
リュカ様をそんなに簡単に操れるの?

「ユニさんも知ってるだろ、今回のお仕置き内容を」
「……………はい」
「うん、だから言ったんだよ『もう年増女に興味なくなったんだろ』って……」
「それだけでリュカ様が踊る訳無いわ!」

「うん、それだけじゃ無いよ。『王妃陛下が身体を持て余してるって、若い兵士等に噂を流してやる』とも言った(笑)」
「うわぁ……お前、最悪」

ビアンカ様が欲求不満で不機嫌なのは直ぐにでも広まるはず……
だからと言って、その噂を聞いた兵士等がビアンカ様を口説くとは思えない。
でも欲求不満な不機嫌状態のままであれば、リュカ様の寵愛を失ったと噂が広がる事は明白。

実際にビアンカ様が他の男と如何となる事は無くても、そんな噂が流れる事をリュカ様が許容出来るはずも無く……即日に夫婦の営みを再開させる事は自明の理。
なんて嫌な男なんだろう、私の上司は。

「はっはっはっ、俺は最悪な上司なのさ。だから最悪な上司らしく、部下のユニさんに残業を言い渡す……今から俺と一緒に飲みにケーションだ! 城内のカフェで宴会だぁ!」
「え!? ちょ、ちょっと……」

自分の残務がほぼ終了に近付いてきたのに、突如ウルフ閣下は私の手を引き城内2階に存在するカフェへと私の事を強引に(いざな)う。
私の事を口説こうとしてないわよねぇ?

ユニSIDE END



(グランバニア城・カフェ)
ピクトルSIDE

「それでは……無事に宮廷画家になれた事を祝して、カンパ~イ!」
「「乾杯」」「おめでとう♥」
宮廷画家として城に出仕して2日目……

今日はエウカリスの一声で簡素な祝賀会を、城内に存在するカフェで執り行っている。
現在の参加人数は4人……内訳は、私・エウカリス・ラッセル、そしてラッセルの彼女のリューナさんだ。
彼女は私が住んでる寮のお隣さんだ。ウルフさんともお知り合いだそうですが、まさかラッセルの彼女だとは思わなかった。

「いやぁ~……まさかラッセルの彼女が城内カフェのオーナーさんと知り合いだとは思わなかったわ。今日の祝賀会費は格安にしてもらえるんでしょ?」
「はい。私の親がオーナーさんと親しくて、かなり安くしてくれるそうです」

「よかったわぁ~……私はピクちゃんと違って奨学金を貰ってないから、働きながら勉強しなきゃならないのよ。所謂苦学生よ! (すげ)ーカワイイし、良い女をゲットしたなラッセン!」
「ラッセルだよ! 陛下以外はラッセルって呼べよ!」

「え~……俺もラッセンって呼んじゃダメぇ?」
「ウ、ウルフ閣下!?」
和気藹々と和やかな雰囲気で飲食を楽しんでいると、突然ウルフさんがユニさんを伴い私達の宴へと割り込んできた。……因みに、祝賀会を開催する旨を伝えたのは私だ。

「ちょっと閣下! 皆は最悪な上司が居ない状態で宴を楽しみたいのですから、私達が勝手に参加するのは……」
「え~……ダメなのぉ~? 祝賀会費を俺の方に回してもOKって言ってもダメぇ?」
私はOK。むしろOKすぎる!

「どうぞどうぞ閣下! そういう事情なら大歓迎ですよ。あ、因みに……目上の方は俺の事をラッセンって呼んで問題ないです!」
「いいね、そのあからさまな上司への媚び。嫌いじゃない(笑)」

ウルフさんの出現に一瞬焦ってたエウカリスとラッセルだが、会費全額負担の言葉に態度を180度入れ替える。
そんな反応を確認したウルフさんは、空いてる椅子にユニさんを紳士的に座らせると、自らもその隣に腰掛け、カフェのオーナーさんを呼び寄せる。

「ん~……腹減ってるから食い物を適量持ってきて」
「構わねぇけど、閣下の支払いになるのなら割引はしねーぞ」
折角お安く楽しめると思ったのに!?

「構わねーよ、俺を誰だと思ってる? この国の宰相だぞ。ナンバー2なんだぞぅ! 割り増しにしなきゃ気にしねーよ」
「う~、太っ腹だねぇ……どうせなら割り増しにも応じてくれよ。10割増しにしてやっからさ(笑)」

「誰が応じるか! 後で明細見て高すぎたら、速攻で監査入れるからな! この店ぶっ潰してやっからな!!」
笑いながらオーナーさんを厨房の方へ戻らせる。
そして……

「じゃぁ改めて、みんな宮廷画家になれておめでとう」
と言って、先に持ってきてくれてたジュースをユニさんと共に掲げて祝してくれた。
「「「ありがとうございます」」」

「あの、ところで……陛下は飛び入り参加されるって事はないですよね?」
「リュカさんが? 知らね! 俺は言って無いから来ないんじゃね? アイツ今それどころじゃないから。カミさんをとエッチする事しか頭に無いから(笑)」
これ以上のお偉いさん飛び入り参加は遠慮したいラッセルは、恐る恐る陛下の行動を確認する。しかしウルフさんは陛下が来ない事を確信しているようだ。

「そんな事よりリューナ……コイツはグランバニアで何人目の彼氏だ?」
何人目の彼氏? リューナさんは大人しそうだけど、そんなに取っ替え引っ替えするタイプなのかしら? だとしても、彼氏の前で言わない方が良いと思うけど……

「私がグランバニアで暮らすようになって未だ日が浅いんですよ。私は慎重に生涯の伴侶選びをしてるのですから、そうそう伴侶候補が見つかる訳ありません」
何人目かの彼氏である事の否定はしないの?

「親父さんに彼氏を紹介したの?」
「互いを会わせての紹介はしてません。現在どんな男性とお付き合いしてるかは、お父さんに報告してますけど」
“ふ~ん”とアップルジュースを飲みながらリューナさんを一瞥するウルフさん。

「あ、あの……ウルフ閣下もリューナのお父さんとお知り合いなのですか?」
「うん、まぁ知ってるね」
「俺は未だお目にかかってないんですけど、どんな人物なんですか?」
「どんなって……娘の前で父親批判はしにくいなぁ」

「何でお父さんの人物評を聞いたのに批判になるんですか!?」
「お前、自分の父親が如何な奴が知らないの?(笑)」
ヘラヘラ笑いながらリューナさんのお父さんを貶そうとするウルフさん。ちょっと失礼じゃないですか?

「止めましょうリューナさん。この男にお父上の事を語らせても不毛ですわ。この男は顔と頭以外が頗る悪い男なんですから。特に性格と口が悪すぎなんです」
「女の趣味も良い方だが」

「趣味の善し悪しよりも、手癖の悪さが目立ってます!」
う゛……もしかしてユニさんには私との関係がバレてるのかしら?
何だかチラリと私の方を見た気がします。

「そんな事よりも、先程聞こえてきたんですけど、エウカリスさんは働きながら芸高校(芸術高等学校)に通ってるんですか? 大変ですね」
「そうなんですよユニさん。宮廷画家になれたからバイトの方はシフト減らしても大丈夫そうだけど、学費も家賃も高いから、まだまだバイトを辞める訳にはいかないわ」
エウカリスのバイトって確かキャバクラよね? シフト減らしても大丈夫なのかしら?

「お前良いのかよ、キャバクラのシフト減らしちゃっても。顧客が減少するんじゃねーの? その分給料も減るんじゃねーの?」
「え……エウカリスさんってキャバクラで働いてるの!? つーか如何して閣下がその事を知ってるのよ!?」

「ユニさんも知ってるだろ……この間アホ侯爵に誘われてキャバクラに行った事を! その時に知り合ったんだよ……俺もリュカさんも」
「ああ……ありましたわね、そんな事も。その時に目を付けた娘を、邪な気持ち全開で宮廷画家に招いたんですか閣下? 個室まで与えて、中で不埒な行いをする為に……」

「オメェ馬鹿じゃねーの? 宮廷画家に選んだのはリュカさんだよ! 俺が個人的に関係を持ちたいのなら、城下の一角にマンションでも買って、そこで愛人として囲ってるよ! 俺は結構な高給取りなんだゾ!」
そんな事言って昨日は創作部屋(アトリエ)で私に迫ったクセに♥

「如何だか……どうせキャバクラにも足繁く通ってるんでしょ!?」
「通わねーよ、あんな馬鹿みたいな所!」
「『馬鹿みたい』とは何だコラぁ! 私の職場だぞ……もっと足繁く通いに来い。そして大金を落とせ!」

「もう行かねーよ、あんな劣悪な店」
「何だとぅ、一体何が劣悪なんだ!?」
アルバイトだけど思い入れがあるのかしら? 自棄にムキになってるエウカリスだわ。

「ムキになってるって事は、最近客足が減少してるんだろ(笑)」
「う、うるさい……アンタが悪い噂でも流してるのか!?」
有り得るかも……ウルフさん、エウカリスの店を嫌ってるみたいだし。

「俺じゃねーよ。リュカさんがぼやいてるんだよ」
「へ、陛下が!? ど、如何してよ?」
ほんと、どうしてかしら?

「おいおい、あの時に店に居たのは俺だけじゃねーだろ。リュカさんも一緒に居ただろ! しかも一番多く金を払ったのがリュカさんだぞ」
「え、リュカ様も一緒にキャバクラに行ったの?」

「そうなんだよユニさん。カタクール候の話(キャバへ行く)を聞いたリュカさんが、候の子飼いの部下等を連れて、先に店に来てたんだよ……ただしプーサンって名前の人物に変装してだけどね」
え、プーサンって人の事は、よく城下の人達が話してるのを聞くわ!

「あぁ……例の偽りの姿でキャバクラへ赴いてたんですか」
「そうなんだ。それで俺達の到着を待ってたらしいんだけど、2.30分待ってもキャバ嬢が一人も付かなかったらしいんだよね。まぁキャバ嬢側としてもカタクール候って上客が来る事が解ってた訳だし、金を持って無さそうな……上客にならなそうな貧乏野郎共の相手はしたくなかったんだと思うよ」

「そうでしょうけども、サービス業としては最悪な対応ですよね?」
「最悪だねぇ。だからリュカさんもぼやいてるんだよ。店側も客に人気の無い女の子の一人でも付けてれば、リュカさんはその()をベタ褒めしてナンバー1になれるようにしたかもしれないんだけど……」

確かにそうかもしれないけど、変装してたんじゃ解る訳無いわ。
エウカリスも悔しそうに頬を膨らましてウルフさんを睨んでる。

ピクトルSIDE END



 
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