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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第九十七話 蛍の光その四

「ですから是非」
「じゃあお願いします」
「では今夜に」
「皆で行きましょう」
 こうして話は決まった、畑中さんが運転してくれるバスで学園の植物園に行って蛍を観ることになった。僕はこのことを部活の時に皆に話した。
 するとだ、部活の皆は僕の話を聞いて言った。体育館でゴールの連中をしていて順番を待っている間のことだ。
「そういえばそうだな」
「今日からだったな」
「植物園で蛍の鑑賞会だな」
「それだな」
「うん、それにね」
 僕は皆に話した。
「皆で行くんだ」
「八条荘の皆か」
「その執事さんも一緒にか」
「畑中さんって人も」
「何か畑中さんが一番乗り気かな」
 今思うとだ。
「蛍お好きみたいだし」
「中々以上に風流な人だな」
「お祭りも好きなんだろ?しかも着流し着こなして」
「花火とかもお好きで」
「それで蛍もなんて」
「そういえばそうだね」
 実際にとだ、僕は皆に答えた。
「あの人風流だよ」
「粋な人だな」
「そうしたことがお好きなんてな」
「いい趣味してるぜ」
「格好いいな」
「そうそう、実は剣道九段なんだよね」
 実質的な最上位だ、十段まであるけれど十段は最早永久欠番みたいな扱いになっているからだ。それでだ。
「十キロはある木刀を一日二千回振るらしいし」
「それ滅茶苦茶強いぞ」
「何かの時代劇みたいだな」
「そんな荒稽古毎日か」
「武芸者みたいだな」
「だから剣道も強いんだろうね」
 そんな荒稽古を毎日しているからだ。
「背筋もぴしっとしてるしね」
「ナイスなお年寄りだな」
「ジャパニーズダンディってやつだな」
「武士の格好よさ」
「それがあるな」
「前からそうなんだよね」
 はじめて会った時から畑中さんは格好いいと思っていた、執事さんとしてあそこまで格好いい人はいないとさえ思っている。
「お仕事は何でも出来るし」
「それでいて謙虚でか」
「いつも大家を立ててくれていて」
「尚且つ剣道の達人」
「おまけに風流人か」
「そうなんだよ」
 まさにとだ、僕は皆に答えた。そしてだった。
 僕の番でドリブルしながらゴールにボールを両手で放り投げて入れた、ボールは無事にネットの中を通ってくれた。
 それが終わって皆のところに戻ってだ、僕はまた皆に話した。
「そうした人なんだ、畑中さんは」
「何かそうした人いいな」
「ダンディな執事さんで強い」
「大家もいい執事さん持ってるな」
「執事さんがいるだけでも凄いけれどな」
「僕もね、まさかね」
 本当にこの前までだ。
「まさか執事さんが来てくれてね」
「アパートの管理人になってな」
「今みたいな生活になるとは思わなかった」
「そうなんだな」
「そうだよ、親父が急にヴェネツィアに転勤になって」
 全てはここからはじまった、その急な転勤から。 
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