新説裸の王様
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第四章
「だから泳いでもいいのじゃ」
「その姿で」
「そうなんだ」
「うむ、では準備体操の後はな」
準備体操を続けています、しっかりと。
「泳ぐぞ」
「本当に泳ぐんだ」
「水着じゃなくてパンツで」
「裸で」
「ははは、確かにわしは裸じゃ」
王様もこのことは否定しません。
「しかしこの水着が一番よく泳げる筈じゃ、では泳ぐぞ」
「それじゃあだね」
「僕達も泳ぐよ」
「そうするよ」
「うむ、では勝負をするか」
泳ぐことで、とです。王様は子供達に言いました。
「そなた達の水着とわしの水着どっちが勝つかな」
「大人と子供じゃ勝負にならないよ」
「身体が全然違うからね」
「けれど王様がその水着って言う服で泳げたらね」
「僕達も水着だって思えるよ」
「言ったな、ではこれから泳いで見せてやろう」
準備体操を終えた王様は笑顔で応えてでした、そのうえで。
海に入って泳ぎはじめました、元々泳ぎの得意な王様でしたが。
これまでの水着よりもずっと速く泳げてでした、子供達も言いました。
「凄いね」
「凄い速さだね」
「僕達が着ている水着よりも動きやすくて」
「いい感じだよ」
「うむ、実際に泳ぎやすかったぞ」
海からあがった王様は子供達に笑顔で答えました。
「これはよかった」
「実際にそうなんだ」
「泳ぎやすいんだ」
「そうなんだね」
「うむ、この水着は最高じゃ」
笑って言った王様でした。
「これからは泳ぐ時はこれじゃ」
「ううむ、そうですか」
「そうされますか」
大臣も侍従さんもこれまでの水着姿でしたが王様に応えました。
「私達からも裸にしか見えませんが」
「その裸の様な格好が、ですね」
「泳ぐには丁度いい」
「そうなのですね」
「しかも快適じゃ」
このことも言う王様でした。
「夏の海にはな、ただ日焼けには注意じゃな」
「はい、裸ですから」
「そのことにはですね」
「これまでの水着以上に注意じゃ、では休憩じゃ」
王様は上からアロハシャツを羽織ってサングラスをかけてでした、そのうえで。
安楽椅子に座って侍従さん達が差し出してくれたトロピカルドリンクをストローで飲みます、そして言うのでした。
「この水着は最高じゃ」
「裸が」
「それがですね」
「思えば南洋の服も裸みたいじゃ」
集めている服からも言うのでした。
「その時その場に最も相応しい服を着ることじゃ」
「では我々も」
「そうします」
「そうせよ、わしの様にな」
笑顔で言う王様でした、トロピカルドリンクを飲みながら。
この時から皆海や川、プールでは裸同然の水着で泳ぐ様になりました。女の人は胸もしっかり隠していますが。ですが泳ぐ時はそうした水着がいい、皆王様にこのことを教えてもらって心から嬉しく思うのでした。
新説裸の王様 完
2016・8・13
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