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幸せは歩いて渡る

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第二章

「ボクシング部の大谷は別だけれど」
「二年生の」
「二年生というか学園一の嫌われ者よ」
 その大谷という輩はというのだ。
「あいつは違うけれどね」
「その人はいじめをするんですね」
「いじめ大好き、底意地悪くて強い者には諂って弱い相手はいじめてケチよ」
「最悪ですね」
「だから嫌われてるのよ、けれどね」
「真壁先輩はですか」
「彼を見てたらわかるわ」
 そうすればというのだ。
「それでね」
「見たらですか」
「そうよ、そいつと全然違うから」
「その大谷さんっていう先輩と」
「屑と神様位違うから」 
 どちらが屑でどちらが神様かは言うまでもなかった。
「それこそね」
「そうですか」
「だからよく見てね」
「真壁先輩は」
「大谷は見なくていいから」
「そっちの人はですか」
「見るだけで不愉快になるから」
 そこまで酷い人間だからだというのだ。
「真壁っちだけ見てね」
「先輩の仇名ですか」
「ええ、皆そう呼んでるのよ」
「二年生の人達は」
「そうよ、見ていてね」
「わかりました」 
 リンは先輩の言葉に頷いてだ、そのうえで。
 真希を見ることにした、見れば彼は毎日こけるかものを落とすか失敗するかだ、とにかくドン臭く要領が悪い。
 間が抜けていて運動神経も鈍い感じだ、だから部活でもレギュラーではない。だが。
 毎日部活に出ていて誰よりも熱心だ、しっかりと準備体操をして走ってサーキットトレーニングもj励んでだ。
 テニスの練習でも汗をかく、部活が終わってもだ。
 後片付けをするがだ、自ら率先して動き汚い仕事も進んでやっていた。
 その彼にだ、一年生達は言うのだった。
「いいですよ、そんなの」
「そうした仕事は俺達がしますから」
「先輩は見ていて下さい」
「ちゃんとやっておきますから」
「いやいや、皆でしないとね」
 こう言ってだ、いつもだ。 
 真希は汚い仕事も進んでしていた、そしてだ。
 最初から最後まで身体を動かしていた、その間不平も言わず真面目に働いている。その様子を見てだった。
 リンは女子の先輩達にだ、こう言った。
「真壁先輩って真面目ですね」
「そうでしょ、熱心でね」
「汚い仕事も進んでしてね」
「誰の不平も悪口も言わない」
「そうした人なのよ」
「何か」
 その彼を見ていてだ、こうも思って言ったリンだった。
「見ていて応援したくなりますね」
「そうでしょ、見ているとね」
「だって本当に熱心で真面目だから」
「後輩への風当たりもいいし」
「怒らないし」
「努力は怠らないし」
「最初はね」
 ここで彼とクラスメイトだという先輩がまたリンに言った。
「もっともっとドン臭かったのよ」
「今よりもですか」
「そうよ」
 まさにというのだ。 
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