提督はBarにいる。
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オトコ持ちのから騒ぎ!?・その3
「はぁ~……落ち着くねぇ♪」
ズズズと茶を啜り、ぷはぁと息を吐き出す。にへらっと弛んだ顔をしているのは鈴谷だ。場面はお茶会の当日、金剛が人数分のお茶とお菓子を持ってきてお茶会が始まった所である。
「んん!このチーズケーキ美味しい!あんこも入ってるからお茶にも合うわ!」
パクパクと食べ進めているのは足柄だ。何だか女子と言うよりも男子高校生位の食いっぷりだ。『餓えた狼』という二つ名のせいだろうか?なんて事を金剛は考えながら茶を啜り、生チョコを頬張った。……うん、口の中でほどけていくチョコがお茶の苦味とマッチしている。足柄の横では妙高が苦笑いしながらわらび餅をつついている。霧島も楽しげにどら焼にかじりついている。なんとも穏やかで休まる光景だー……
「って、暢気にお茶飲んでる場合じゃなかったデース!」
いきなり叫んだ金剛に、参加者が全員ビクッとする。そう、金剛がこのメンバーを集めたのは、『他の女性陣の異性との生活がどんな物か?』を知る為だ。暢気に茶をシバいている場合ではなかったのだ。
「ヘイすずやん!最近彼氏とはどんな感じデスかー?」
「おょ?鈴谷とカレシ?相変わらずラブラブだよー♪」
でへへへへぇ、と更に締まりのない顔になる鈴谷。
「だーかーらー!ワタシはそのラブラブの部分をもっと詳しく聞きたいんデス!」
「しょうがないなぁ。んっとね、鈴谷の場合はぁ~…」
《鈴谷と彼氏のイチャつき方》
「な~すずや~ん」
「……何さ?」
先日のデートでの事。鈴谷に密着しながら抱き着く20代前半の男。この男こそが鈴谷と付き合っている彼氏であり、付き合い始めの頃はまだ大学生だった彼も、今は立派な社会人としてブルネイにある日系企業に勤めていた。デートしているのは彼氏の住んでいるマンションである。
「俺ら付き合ってもう結構な年数じゃん?そろそろさぁ……同棲、しない?」
「ヤダよ、恥ずかしいもん」
「え~、どこが?」
「アンタが鈴谷を四六時中抱き寄せてんのが恥ずかしいのっ!」
そう。今の体勢は彼氏が胡座を掻き、その中心に鈴谷を座らせて後ろからギュッと抱き締めているのだ。
「そうかぁ?だって俺すずやんから離れたくねぇし。それに……」
「それに?」
「すずやんの髪の毛とか、うなじとか、すんげぇいい匂いするもん」
そう言いながら鼻を寄せて鈴谷の髪に顔を埋めて、クンクンと匂いを嗅ぐ男。傍から見たらどう見ても変態です、本当に(ry)な状況だが、男は気にした様子もなく、更にうなじの方へと顔を滑らせていく。
「や、ちょっと、マジで恥ずいって……/////」
口ではイヤイヤと鈴谷本人も言ってはいるが、変態チックな嗜好の持ち主の彼氏であろうと、自分がいい匂いだと言われて嫌がる女性はあまり居ないだろう。それに、肌に触れる彼氏の鼻息や顔の感触が鈴谷を少しずつ刺激して、実を言うと先程からくすぐったい以外の感覚が沸き起こって来てしまっていた。……要するに『感じて』しまっていたのだ。
『もぉ……このままじゃあ鈴谷も変態さんになっちゃうじゃん/////』
なんて事を鈴谷は考えていたが、既に手遅れだと思います。
「んんっ!///」
僅かに湿ったざらりとした感触が、鈴谷のうなじから首筋に伝わる。恐らくは彼氏の舌だ。あろう事か、彼氏は鈴谷のうなじ周辺を、まるで棒付きキャンディでも舐めるかのようにペロリと一舐めしたのだ。瞬間、ゾクゾクと這い上がってきた静電気の様な痺れにも似た感覚。本格的な性感を感じて、鈴谷の変なスイッチが入る。
「あれ?すずやんマジで感じーーむぐっ!?」
舌を出したままだった彼氏の顔面を両手でガシッと掴み、その舌目掛けて唇を重ね、舌を絡める。所謂ディープキスをたっぷり20秒は交わした後、ハァハァと荒い息を吐きながら鈴谷は漸く唇を離した。
「もぅ、鈴谷本当はこんな変態さんじゃないんだからね……!?」
上気した肌に、うっすらと纏わりつく汗。そして艶っぽく潤んだ瞳。その上顔立ちの整った美少女と来れば、興奮しない男は限り無く少ないだろう。実際、鈴谷の彼氏も床に組み敷かれながらゴクリと生唾を飲んだ。
「で、俺にどうしろと?」
「鈴谷をこんなイケナイ娘にしたんだから、責任とってよね……♪」
そう言って小悪魔的に笑った鈴谷は、再び彼氏にむしゃぶりついた。
「ってな感じで盛り上がっちゃってぇ~♪」
鈴谷は恥じらっているのか、頬を手で抑えてクネクネと悶えている。そして鈴谷以外の面子は皆一様に『うわぁ……』という顔でドン引きしている。耳年増だと専らの噂だった鈴谷だけに、もっと純愛チックなイチャラブが聞けるかと思ったらいきなり変態さんが降臨なされてボディブローを喰らった気分である。
「アタシの話はそろそろいいじゃん。鈴谷としては、最近出来たばかりのラブラブカップル足柄さんの話が聞きたいかなぁ~?」
「うにゃっ!わ、私!?」
言いたくはないがナイスパスだ鈴谷、と金剛は心の中で思っていた。付き合い始めのまだ遠慮がちな関係ならば、そこまでヘビーな話はでないだろう。
「そうねぇ……私にも進展を教えてくれないし?」
と、妙高が冷たい眼差しで援護射撃。
「私のは鈴谷みたいなどエロな話はないわよ?」
「ちょっ、足柄さんひどっ!」
「まぁまぁ、そう言う青い話も良いじゃないですか」
むくれる鈴谷にすかさず霧島のフォローが入る。
「じゃ、じゃあ話すわよ?私の場合はねーー……」
《足柄と彼氏の場合》
~とある日の鎮守府・お昼頃~
「あ、いたいた。足柄さ~ん!」
昼休憩に入ったらしい工廠から、手を振りながら足柄の方に一人の青年が駆け寄ってくる。彼こそ鎮守府で陰ながら『熟れた狼』と揶揄されていた足柄のハートを射止めた整備員の彼氏であった。
「もう!午前の作業終わったらお昼一緒に食べたいから、すぐに出て来てねって言ったでしょ!?」
「いやぁスイマセン、艤装の整備に手間取っちゃって…」
申し訳なさそうに頭をポリポリと掻く青年。少し気弱な所のある彼は、押しの強い足柄の尻に敷かれているらしい。
『仕事熱心なのは高評価だけど、他の娘の事を熱心に見てたのは頂けないわね……ご飯の後に問い詰めなくちゃ!』
そう密かに決意する足柄。実は足柄、自分では気付いていないが束縛したがりな女だったのだ。嫉妬深く、怒ると怖いタイプである。
「さぁ、食堂行きましょうか」
「あ、待って!今日はね…その……お弁当作ってきたの!だから、どこか眺めのいい所で食べない?」
「良いですねぇ、それならとっておきの場所がありますよ」
そう言って青年は足柄の手を取り、先程出てきた工廠へと踵を返した。
「ちょ、ちょっとどこ行くの!」
「いいから、ついてきて下さい」
青年に引っ張られるままに足柄が辿り着いたのは、工廠の屋上。学校の校舎の屋上のように平面なそこは、鎮守府全体はもとより、海と街並みがパノラマで見渡せる景色のいい場所だった。
「ね、いい場所でしょう?」
青年は優しそうにニッコリと笑っている。
「たまに酒保で昼飯買って、ここで食べてるんですよ。さぁ、お弁当食べましょう」
「え、えぇそうね」
足柄が景色に見惚れて、ちょっとボーッとしてしまっていたのは内緒だ。
「うわ、凄く美味しそうじゃないですか!」
青年から歓声が上がる。弁当の中身は唐揚げに卵焼き、ミニトマトにブロッコリーと彩り豊かで定番的な弁当だが、足柄が朝早くから起きて丁寧に作り上げた一品である。
「ど……どうかな?」
「凄く美味しい!」
ガツガツと食べ進めている青年を見て、嬉しそうな顔を見せる足柄。
「あ、そうそうさっきの話!」
「ん?さっきの話?」
「さっき言ってた艤装の整備に熱中してたって話よ!」
「あぁ。あれ足柄さんの艤装ですよ」
「へっ?」
「昨日足柄さんは大破して帰ってきたでしょ?だからちゃんと直して、整備すれば足柄さんの怪我する事が減るかと思って」
はにかみながら笑う青年に対し、足柄は真っ赤になって酸欠の魚のように口をパクパクとさせていたーー。
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