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ガンダムビルドファイターズ ~orbit~

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追憶の未来 中編

ーーー--





時間は(さかのぼ)り、十数分前───

「さーて、どうなるかな~」

「何も起こらないといいんだけどな」

穴の出口に待機し、カグラ達のバトルを上から見届ける。

「いやいや。それってフラグじゃない? 」

「建設しても、折ればいい話だろ? 」

「アハハハハ。けど、こういう話をすると現実になるってのはよくある話だよ? 」

「遠隔操作によるバトルの乱入…………か。八年前を思い出すな」

八年前…………俺達がまだ学生の頃に起きた、ブレイカー事件。全国各地のバトルに乱入し、跡形も無くガンプラを破壊し、多大な被害を出した出来事だ。

「アイツはもうそんなことはしない。それに、乱入してくる機体はモックをベースにした改造機。普通の人ならてこずるが、倒せないほどのものじゃないらしい。問題は数が多いことだ」

「八年前のあの数は大変そうだったもんね~」

「ガンダム無双か、ってくらいの数だっからな。
それより、なんでモックをベースに改造するんだ?って俺の中で疑問に思ったんだ。研究者のお前だったら、どういう時にモックを使うんだ? 」

「え~と…………コンピューター対戦や訓練や試験する時かな?と言っても、基本的モックは使わないけどね」

「…………そうか。俺の推測だが、もしかしたら試験機としてモックを使ってるんじゃないかと思ってな」

「可能性はあるね。けど、それじゃあ根本的な解決にはならないね」

「その根本を解決しないとな。たくっ。また犯人探しかよ」

あの時は、本当に大変だったからな。あー嫌だ嫌だ。やりたくないな。

「アハハハハ。まあまあ。けど、これ以上好き勝手にされるのは嫌でしょ? 」

「あたりまえだろ? 」

ニヤリと笑い、答える。

「流石ヒロヤ君。じゃ、そろそろ行こっか」

トウイがそう言うと、頭上からアラート音が聞こえた。天井を見上げると、今話したモックの改造機が、大量に出現してきた。

「ちなみに、今カグラが使用しているバトルシステムにモックは? 」

「搭載するわけないよ」

「だよな…………よし!行くぞ! 」

穴から飛び出し、モックの大群の前に立ちはだかる。

「地味に数が多いな」

「あー…………シノさんも呼べばよかったかな? 」

「却下。シノを巻き込むな」

「アハハハハ。そう言うと思ったよ。じゃ、やろっか」

トウイの新型…………アストライアフリーダムは、リバイブされたフリーダムガンダムをベースに、アンテナは大型化し、コクピットをクリアパーツに変更。肩部にはセンサーユニット搭載のバーニア。肩のバーニア部にはフィンユニット兼バーニアに変更。
両腕の側面部には、ストライクフリーダムのビームシールド発生基を装備。カラーリングはストライクカラー重視の青白赤。

バックパックはフリーダムガンダムのバックパックをベースに、フィルマメントブースターと同じ仕様に改造。フィルマメントビーム砲改めアストライアビーム砲を装備。ヴァルキリーウェポンを装備せず、コクピット部は大型化されている。

バラエーナプラズマ収束ビーム砲の砲当の上部には、刃は青いクリアーパーツ仕様の二刀の実剣【エクスカリバーV2】を装備。武装はブレイドトンファーを発展させた武器【アストライアブレイド】を二刀装備する。


それに対し、アウローラガンダムはバックパックをザンユニットを改造したものに変更。ザンユニットに新型GNドライブを搭載し、ツインドライブを成している。ザンユニットの本体にはレイザーブレイドを二刀。アームには実剣にもなり、ビームサーベルを発生させられるソードファンネルⅡを二刀装備。

そして本体のバックパックにもアームを増設し、自身の本当の武器であり、昔から使用していた武器を発展させた、【グラディウスR】と【ルミノックスL】が鞘に納まっていた。

「行くぞ…………アウローラ! 」

グラディウスRとルミノックスLを抜刀し、モックの大群へと突っ込んでいく。





ーーー--





「はあ…………はあ…………はあ…………」

刀を支えにして、片膝を地面に着ける。こちらの機体はボロボロだったが、それ以上に心の方が摩耗していた。攻撃をする度に、受ける度に、映像が流れ続けてくる。そのほとんどが、ろくでもないものだった。

『どうしたの?もう終わりかな?それとも、威勢がいいのは最初だけ?そうだよね。だって、レイは何も守ることができないもんね』

「っ────黙れぇぇぇぇぇっ! 」

刀を地面から抜き、立ち上がってアルケオニスガンダムに接近する。刀で攻撃するが、簡単に防がれ、シールドで攻撃をされて吹き飛ぶ。



《ナイフが俺の頭に向けて降り下ろされる。その直後に、先ほど言われた言葉を思い出す。》

【 !? 】

《とっさに体が動き、立ち上がってナイフをかわす。そして立ち上がった反動で、ソイツの頭部に目掛けて全力で殴った。

しかし、その後は動悸が激しいため、すぐに膝をついた。》

【こ、のタイミ、ングで……】

《すると、急に頭部に激しい痛みが走った。どうやら銃で殴られたらしいが、同時にソイツも倒れた。》

【…………ヘヘッ…………運も実力の内だ………】

《そこで、俺の意識は途絶えた。》



「っ! 」

なんだ今のは…………?いや、それよりもソイツには見覚えがある。なぜなら、ソイツはユキヤと同じ容姿をしていたからだ。

「お前が────! 」

地面へと倒れると同時に、宙返りして立ち上がる。

「お前が…………あの日のっ───!!! 」

『そこまで思い出したんだ。そうだよ。僕があの日、皆を殺し回った犯人だ。もちろん、君の母親を殺したのもね』

「─────あああああああっ!!!! 」

刀にエネルギーを込めると刀身が赤黒く染まり、アルケオニスガンダムに接近する。全力で刀を振るったが、同じくエネルギーを込めた刀で防がれてしまう。

『許せない?憎い?殺したい?けど、力の無いレイには無理だね』

そのまま刀を振りきられ、後退りする。

『それに、僕はもう死んでいる。君の手によってね』

「 !? 」

俺の手で…………?

『頭部を殴られた時、かすかに残っていた意識でレイを殴った。けど、それを最後に僕は死んだ。脳にダメージを与えられ過ぎたんだ』

アルケオニスガンダムは歩み寄り、刀を降り下ろしてきた。それを刀で防ぐが、エネルギーを込められてない筈なのに、その一撃は重かった。

『そう、君のせいで死んだんだ。友人も、その家族も、先生も、全て。そして、レイの親も死んだんだ』

次々に振るわれていく刀を防ぐが、一撃一撃が重いため、後退りしながら受けていく。

『それなのに、君はノウノウと生きている。あの時、何もしてくれなかったくせにだ』

「ぐっ────! 」

あまりの重さに、膝をついて受ける。

「知らねぇよ!お前が殺したんだろうが!?人に罪を擦り付けてくんじゃねぇ!! 」

刀にエネルギーを込め、刀を上に弾く。

『そう…………そうやって見て見ぬふりをするんだ。あの時みたいに』

刀にエネルギーを込めたまま打ち合うと、また別の映像が流れてきた。



廊下の隅で、自身の周囲には数人の男子生徒がいた。男子生徒達は殴ったり蹴ったりし、こっちは無抵抗でそれをくらっていた。
視線の先にはこちらを見ていた生徒がいたが、ヒソヒソと話しながら見て見ぬふりをしていった。



この映像は………………?俺はイジメを受けていたのか?いや、違う。ユキヤがイジメを受けていたんだ!

「くそっ! 」

刀と刀が衝突し、甲高い音が鳴り響き、これで何度目か分からないつばぜり合いとなる。

「お前は!イジメを受けてたからって殺したのかよ!? 」

『それの何が悪い?君達のせいで、僕はどれだけ苦しんだか知らないくせに…………いいや、理解しようともしなかった。そんな奴等が、偉そうに言うな』

「それでも、殺すのは間違ってんだろ!? 」

『死んで当然の連中だろ。君もだけどね、レイ』

お互い距離を取り、刀を構えて対峙する。

『だから、最後の生き残りであるレイには、より辛い想いをしてもらう。そのためにも、ここで精神を壊す。もう後戻りが出来ないほどにね』

「ざけんな…………テメェの思い通りにはさせねぇ。そもそも、イジメる側には多大な問題はあるけどよ、イジメられる側にも問題はあんだよ」

『いいや、僕には何も問題は無かった。悪いのは全部君達だ』

「違ぇよ。お前は考えた事があんのか?自分の何が悪いのかって。どうすれば良かったのかって。ただ憎悪を向けただけじゃ、イジメは無くならねぇんだよ」

『………………黙れよレイ。それで解決するなら、とっくに解決してる。そこまでイジメる側を正当化する気か?ふざけんな。そんなの許す訳ないだろ』

「正当化する気なんてねぇよ。完全に悪者だろ。けど、人を殺したお前と、イジメてた側。どっちの方が悪い?いいや、どっちも悪い。お前も同類なんだよ」

『黙れレイ…………偉そうに説教すんな……! 』

アルケオニスガンダムは右翼をパージすると、ログで見た巨大な黒い翼が生えた。そして、右腕から右胸部にかけて赤黒くなっていた。

『もういい。会話は不要だ。今ここで君を潰す』

そう言うと、黒い翼ごと刀で空を凪ぎ払った。凪ぎ払って起きた風圧が襲い、耐えようとするが吹き飛ばされてしまう。

「ぐぅ……! 」

体勢を立て直そうとすると、既に目の前には刀を頭上に構えたアルケオニスガンダムが迫っていた。
そのまま刀を降り下ろされ、エネルギーを込めた刀で受けるが、衝撃に耐えきれず地面に叩きつけられてしまう。

「がはっ…………! 」

叩きつけられた衝撃で跳ね上がり、すかさず回し蹴りを入れられ、また吹き飛ばされてしまう。その際、また頭に映像が流れる。しかし、その映像は一度見たことのあるものだった。

小さい頃の俺が、食いつくようにテレビに見入っていた。



この映像は………あの時の…………そういや、俺は何を見てたんだ?



『レゾナンス……!! 』

『ファイナル……!! 』

《ケルサスガンダムエクシードはグラディウスとルミノックスに虹色の粒子を纏わせて、高速に移動してガンダムアルカナムに接近する。
ガンダムアルカナムはヴァワチュールリュミエールと電撃を七聖刀 北と南に纏わせて同じくは高速に移動して接近してきた。》

『『バーーーストーーーーーーー!!!!! 』』

《ケルサスガンダムエクシードのルミノックスを突き出すと、ガンダムアルカナムも七聖刀 南を突き出しており激突する。》

【すげえ………】

《夏休みに入ってすぐに宿題を母親に強制的にさせられていた。母親が買い物に行った隙にサボろうとして偶然TVをつけて見ると、そこには『全日本ガンプラバトル選手権 中高部 全国大会決勝戦』がやっていた。》

《なんとなく見ていると、次第に目を離せなくなり、バトルは延長戦?というものに入り、ボロボロになっていた機体が他の人のパーツにより直された機体で戦っていた。》

《二機共大技を出して激突すると、巨大な光が放たれてTVが真っ白になった。》

【どうなったんだ!? 】

《テーブルから乗り出してどうなったかを確認しようとするも、TVのため、すぐにはわからなかった。
光が収まっていくと、そこにはほぼ大破していて七聖刀 北で左肩を貫かれているケルサスガンダムエクシードと、同じくほぼ大破しているが、グラディウスで胴体を貫かれているガンダムアルカナムが姿を現した。》

【…………………】

『全日本ガンプラバトル選手権中高部、決勝戦勝利チーム。優勝、天之川学園、チームトライホープ! 』



その映像のあと、更にもう一つの映像が流れた。それは、俺の母親が何かを言っていた記憶だ。



【最後に一つ。生きなさい………どんなに醜かろうと、どんなに絶望的状況でも…………生きなさい。これから苦しいことや辛いことがあっても、逃げずに………自分自身に負けないように、立ち向かい、なさい。……そして………今、まで…………ありが、とう……ね…………】



………………っ!そうか…………全部、思い出した…………。

吹き飛ばされながらも赤黒くなったアルケオニスガンダムを見ると、石破天驚拳の構えをしていた。
機体を回転させて体勢を立て直し、刀にエネルギーを込めると共に地面に着地する。

赤黒いアルケオニスガンダムから石破天驚拳が放たれたが、頭上を見上げる。そこにはプラフスキー粒子の光とは別の輝きが見え、アウローラガンダムとフリーダムガンダムの改造機が、モックの大群と戦っていた。

『終わりだ、レイ』

ユキヤの声が聞こえたが、次に視線を向けたのはガラス越しに見えるアマネ、セシリア、ヒメラギ、アキザワ、サクラ。その表情は、明らかに不安そうな顔をしていた。

「ありがとな…………皆」

目の前まで迫ってきた石破天驚拳に対し、大きく一歩踏み出して刀を振り上げる。石破天驚拳と衝突すると巨大な爆発が起き、舞い上がった煙によりアルケオニスガンダムの姿が見えなくなった。

『受けた…………? 』

避けようとせず、受けたことにユキヤは疑問に思う。避けられるタイミングでは無かったとはいえ、ダメージを回避しようと抗うことは出来たはず。

「お前の言っていたことも……………全部を思い出してようやく分かった。俺の事も…………そして、お前の事も」

煙の中から声がし、まだ無事であることを確認する。

「俺の根本的部分…………それは、サオトメ達。そして、ガンプラバトルだ。小さい頃に見たバトルをキッカケに、俺はガンプラバトルを始めた」

煙を払うため、刀を大きく振り回す。

「そして、お前はあの時弄られていた奴だったんだな。他から見れば弄っているように見えるが、隅で殴られたり蹴られたりしていたお前にとっては、イジメを受けていたように感じ取ってた。
だから、お前は復讐し、殺したんだ。けど、そのどれにも、お前はあることをしてなかった」

『…………なにをだよ? 』

「止めろとか助けてとかを、誰にも言わなかったことだ。お前は勝手に助けてもらえることを諦めて、それでいて助けてくれない人達を恨んだ。それで殺すのは間違ってんだよ」

『じゃあなんだよ?言えば助けてもらえるって?そんなわけないだろ? 』

「勝手に決めつけんじゃねぇよ。言葉にしねぇと伝わらないことだってあるんだ。それをしなかったのは、お前の弱さだ」

『…………ふざけんなよ。それが弱さだって?そんな下らないものが、僕の弱さ?笑えない冗談だ』

「ああ。けど、それは俺も同じだった。誰にも言うことが出来なかった。何もかも放り出して逃げたよ」

煙が晴れていき、アルケオニスガンダムの姿が見え始めてくる。

「なのに、アイツらは来てくれたんだ。傷つけたはずのにな。馬鹿みたいだろ?だけど、俺はその馬鹿さ加減に救われたんだよ」

刀を再度振るうと、煙が完全に晴れた。そこから姿を現したアルケオニスガンダムは、機体の色が金色から通常に戻っていた。代わりに赤と金色の光を纏っていた。

「だから、俺は自分と向き合う事が出来た………………もう逃げねぇって決めた!背けないって決めた!お前を倒して、この復讐劇を終わらしてやる! 」

刀を構え、赤黒いアルケオニスガンダムに接近する。その速度は、ハイパーモード時よりも格段に上がっていた。

『無理だね。諦めな、レイっ…………! 』

赤黒いアルケオニスガンダムも刀を構え、接近してくる。お互いが間合いに入ったところで攻撃し、刀が激突した衝撃で、二機の中心にはクレーターが出来た。

そのまま数回攻防を繰り返し、隙が出来た瞬間を逃さず避けられない一撃を繰り出す。ギリギリのところでシールドで防がれたが、切れ込みが入り、そのまま切断する。

『!?ポンコツめ…………! 』

赤黒いアルケオニスガンダムは距離を取ろうと後退するが、その動きを感じ取っており、同時に追従する。

『ぐっ………………! 』

アルケオニスガンダムは刀を水平に斬り払うが、刀で防がれるが、そのまま機体を吹っ飛ばす。

『動きが変わった…………!? 』

吹っ飛ばされながらも黒い翼を地面に叩きつけ、上空へと上昇する。そのあとを追い、アルケオニスガンダムも上空へと飛翔する。

 
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