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夏は夜

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第四章

 打ち上げられだした、美咲はその大輪達を見て笑顔で言った。
「花火大好きなの、うち」
「俺もだよ」
「何度見てもいいわよね」
「毎年見てるけれどな」
「夏はね、夏の夜はね」
 美咲はこうしたことも言った。
「暑くて蚊が多くて変な人も出るけれど」
「最後はいつも出るだろ」
「まあ最後はね」
 変な人、つまり痴漢はというのだ。
「そうだけれど」
「そうだよな」
「だからスタンガンとか持ってるのよ」
「用心してか」
「そう、変な人が出ても撃退出来る様に」
「まあ俺もな」
 かく言う翔平もだった、彼が言うには。
「警棒持っていけって言われな」
「持ってきてるの」
「ああ、剣道もしてるしな」
「物騒よね、世の中って」
「本当に変な人出るからな」
 翔平も言う。
「何かとな」
「夜は特にね」
「ああ、夏の夜もな」
「そうね。けれどね」
「それでもか」
「夏の夜は好きよ」
 美咲はまた微笑んで言った。
「今もね」
「そうなんだな」
「そう、花火もありし出店も好きだし」
「お祭り自体がか」
「好きだから」
 それでというのだ。
「大好きなの」
「そうか、あとな」
「あと?」
「ええとな」
 周りをしきりに見回しつつだ、美咲に言った。
「ちょっといいか?」
「ちょっとって」
「あの、俺達付き合ってもう三ヶ月か」
「それ位ね」
 美咲は自分の隣で一緒に花火を見ている翔平に答えた。
「大体」
「そうだよな、だから」
「ひょっとして」
 美咲は翔平が照れ臭そうにしていてやけにそわそわしている態度から察してだ、自分から彼に対して言った。
「キスとか」
「あっ、それはな」
「キスしたいのね」
「駄目か?」
「そんなこと言われたら」 
 頬だけでなく顔全体を赤らめさせてだ、美咲は翔平に答えた。
「うちもね」
「じゃあいいんだな」
「ええ」
 顔を赤くさせたままでだ、美咲はまた答えた。 
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