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提督はBarにいる。

作者:ごません
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冬の味覚・3

 さてさて、生・焼き共に2品。お次は『揚げて』味わって貰おうかな。

 ブリの身は焼きぶり大根よりも厚めに1cm程にカット。今日は濃い目のソースを付けるから、下味はシンプルに塩で行こうか。カットしたブリを網に載せたら、お湯をかけて霜降りに。これで臭みを抜いたら塩を振り、少し休ませておく。お次は衣の準備だ。

 強力粉1/4カップに、これがポイント・炭酸水を1/4カップ。これを混ぜた物にブリをくぐらせ、パン粉を付ける。炭酸水の効果で衣がサクッとしつつも固くなりすぎずに軽い食感に揚がる。後は油で揚げるだけだが、その前にスパイシーなタルタルソースを作ろうか。

 マヨネーズにみじん切りにしたピクルスと玉ねぎ。それに潰したゆで玉子。ここからがオリジナルだが、隠し味にカレー粉を少々、更にプラス粒マスタードを多めに。これをよく混ぜて一旦味見……うん?少し塩が足らないか。味は塩・コショウで調整。

 いよいよブリを揚げていく。時間は5~10分程。衣が狐色になった位で油から上げる。千切りキャベツを添えて、タルタルソースをかけたら完成。

「お待たせ、『ブリかつ』だ。」

 ブリの身は火を通す事で鶏に近い感じになるが、鶏よりもしっとりとした食感になる。サクサクの衣にブリのジュースが溢れてくる。

「う~ん、美味い事は美味いんだけどさぁ…。」

「やっぱり、ビールが欲しくなるわよねぇ。」

 そう思って準備しましたよ、ビールも使った白ワインカクテル。……と言っても、ワインをビールでビルドしただけなんだけどね。

 氷を満たしたゴブレットに、ワインを180ml。そこにビールを120ml割り入れてステアすれば完成。

「ホラ、『ビア・スプリッツァー』だ。」

 ブリかつに一口ガブリとかじりつき、ビア・スプリッツァーで流し込む。

「くぅ~っ!やっぱ揚げ物にはビールだよなぁ!」

「でも不思議。ワインの爽やかさとビールのほろ苦さがこんなにマッチするのねぇ。」

 スプリッツァーってのは元々、白ワインを炭酸水でビルドしたカクテルの事だ。シャンパンよりもアルコール度数が低くとも、それに近い爽快感を味わえる為に、酒に弱い人間に好まれやすい。イギリスの有名な皇太子妃が好んで飲んだとされ、ブームが起きた時に紹介された。ただ、俺みたいな酒飲みにはあまりウケず、亜種としてこのレシピが生まれたと言われている。



「はぁ~…満足満足。これで明日からまた頑張れそうだよ。」

「そりゃあ良かった。明日からも錬度上げ頑張ってくれ。」

 俺がそう言うと黙り込んでしまった二人。どうした?

「ん~…。なんか〆が欲しいなぁ。」

「そうねぇ、お酒と魚だけじゃあ……ちょっとねぇ。」

 そう言ってこちらをチラチラと見てくる二人。仕方ねぇなぁ……。

「わかったよ。仕込みに時間掛かるから、もう一杯飲みながら待っててくれぃ。」

「「は~い♪」」

 ったく、こういう時だけ都合がいいんだから、ったく……。

 ドライ・ジンとスイートベルモットをそれぞれ15mlずつに、レモンジュースを1dash。これをシェークして氷の入ったオールド・ファッションド・グラスに注ぎ、更に白ワインも注ぐ。仕上げにレモンピールを絞りかけたら完成。

「『ローマ・ホリデー』だ。これをチビチビやりながら待っててくれ。」

 俺はその間に〆の一品を支度しよう。

 まずはブリを塩を振って焼き、米を研いで土鍋に入れる。炊くときにはかつお出汁を入れて、米に出汁を吸わせておく。

 具材はシンプルに。薄揚げを油抜きして短冊切りに、青ネギは小口切りにしておく。
 ブリが焼けたら土鍋にブリと薄揚げを加え、醤油・酒・みりんを大さじ1ずつ入れて炊く。

「しっかしなぁ。昔は鬼のようにおっかなかった提督が、こんなに丸くなるとはねぇw」

 しっしっし、と笑う隼鷹。この二人は空母組の中では古参の部類。一番最初の空母が隼鷹、続いて龍襄、赤城、飛鷹だったか。

「確かに確かにw昔なんかちょっと遅れただけでも般若みたいな顔で怒ってたもんねぇ~w」

 こいつら……酔った勢いでベラベラと…(怒)

「オイお前ら。」

「へっ?」

「俺はいつでも、『昔』に戻ってもいいんだぞ?えぇ?」

 少し睨みを利かせて脅かしてみる。

「いやちょ、ちょっと冗談だって提督ぅ~。今の鎮守府の雰囲気がいいんだからさぁ。」

「そっ、そうよ!皆今のアナタの人柄が好きで頑張ってるんだから!」

 そんな事は百も承知だ。提督になりたての頃の俺は、部下である艦娘にナメられてはいかんと肩肘張ってピリピリしながら生活していた。…だが、加賀の件が俺に気付かせてくれた。腹を割って話をし、艦娘達と協力して戦う。これが一番戦果を見込めるし、艦娘達が安全な事を。

「冗談だ、俺もあんだけ気張った生活に今更戻るのは疲れる。」

「たまの休みの日も、金剛さんに搾り取られるから疲れるしねぇ~www」

 ゴン、と鈍い音を立てて隼鷹の頭から火花が飛ぶ。余計な事は言わんでよろしい。

「ちょ、ちょっとした冗談じゃんかよぉ~…。」

 隼鷹はうっすら涙を浮かべながら、頭をさすっている。

「相変わらずバカやってるわねぇ、隼鷹はw」

 飛鷹はそんな様子を眺めてクスクスと笑っている。…そんなバカ話をしている間に、土鍋がイイ感じだな。

 ご飯が炊き上がったら青ネギを散らし、ブリの身をほぐしながらかき混ぜる。

「出来たぞ、『ブリの炊き込みご飯』だ。」

「美味っ!美味っ!」

「ブリの炊き込みなんて初めてだけど、美味しいわぁ。」

 半分くらい食べたら、海苔と三つ葉を散らして山葵を載せ、上からブリのアラから取った出汁をかけて出汁茶漬けに。

「ん~っ!絶品だなぁコリャ!」

「ホント!あれだけ食べたのにサラサライケちゃう!」

 ホント、美味いよなぁコレは。ブリは冬の味覚だ、時期の物だからその時に楽しまねぇとな。 
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