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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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初めてのS級クエスト

 
前書き
今回のストーリーで舞台となるカノッコ村はカノコユリから名前をつけました。シリルとウェンディで百合だからユリの花で最初に目についたものから選びました。

水竜「百合じゃないよ!!」 

 
「カノッコ村?」
「そう!!そこが今回の依頼の村」

その村に向かうために列車へと乗り込んでいる俺たちは、依頼書の詳細に目を通している。簡潔に言うと、つい数日ほど・・・二週間ほど前から山賊が村を襲撃して乗っ取られてしまったらしい。傭兵ギルドや他の魔導士ギルドに討伐を依頼したそうなんだが、かなりの手練れがいるようで誰一人倒すことができずに依頼を放棄してしまったらしい。

「そんな人たち相手に私たちだけで大丈夫なの?」
「そうよ。私たちも多少は戦えるようになったけど・・・」
「シリルたちに任せっぱなしになっちゃいそ~」

それを聞いて心配そうに口を開いたウェンディたち。彼女たちの心配する気持ちもよくわかる。どれくらいの人たちが依頼を引き受けてたのかはわからないけど、皆が匙を投げてしまう依頼をこの少人数で受けて、果たして大丈夫なのだろうか?

「大丈夫だよ!!私たちなら絶対!!」

何の根拠があってそう言っているのかはわからないが、両方の拳を握り気合い十分なことをアピールしている天神。まぁ、俺もこの前カグラさんに勝利したことで実力が上がっているのを実感できているため、そこまで不安を感じてはいないけどね。

「私も頑張ります!!いい実践の機会ですし!!」

シェリアと同じくらいハイテンションなサクラは、どこからか取り出したメガネをかけて魔導書を読んでおり、勉強に余念がない。でも今回のクエストで使う魔法は使用経験のあるものに限定した方がいいかもね。いきなりチャレンジして失敗されたら最悪だ。

「次の駅で降りるよ。みんな準備してね」

そろそろ目的地が近付いてきたので、持ってきたものを忘れないように持って準備をしておく。それにしても傭兵ギルドがやられる山賊か・・・どれくらいの実力があるのかな?


















レオンside

評議院にこれから依頼に向かうことを伝えた後、目的地目指して歩を進めていく。

「ねぇ、いつくらいに着く予定なの?」
「さぁ・・・もうすぐなんじゃないの?」

人の姿に変化して隣を歩いているラウルの問いかけに地図を見ながら答える。俺たちが目指しているのは霊峰ゾニアと言われる雪山。何か国語の時間にそこに纏わる話を習った気がするけど、ボーッとしてて覚えてない。そもそも、そんな話これからの依頼に関係はないだろうし、どうでもいいんだけどね。

「でも、なんでこんな依頼が100年もクリアされなかったのかな?」
「それは俺も不思議に思ってたんだよ」

今回の依頼の内容が書かれている依頼書に持ち変え詳細を確認する。その依頼は何でもその山にある金色の宝玉を取ってきてほしいというものなんだけど、とても難しいものには思えない。

「何か取れない仕掛けでもあるのかな?」
「100年前の仕掛けじゃそこまでの物はないと思うけど」

現代と古代では当然前者の方が優れているのは言うまでもない。たまに古くから存在するもので驚くほどの技術を見ることがあるけど、それは所詮その当時で考えればという話。今の技術で考えれば攻略できないものなんて存在しないだろう。

「着いた」

この依頼の困難な理由を推測していると、目的地である雪山、霊峰ゾニアへと到着する。

「うわぁ、寒いね」
「そうか?」

体を小刻みに震えさせ、手で自身の体を擦っているラウル。俺は氷の魔導士だから、この程度の寒さでは寒いとは感じない。冷気耐性ってのがあるらしいけど・・・詳しい要因は不明だな。

「それで、どの辺にお宝があるの?」

俺が見ている依頼書を後ろから覗き込み問いをぶつけてくる。

「それも含めて調査するんだってさ」

しかし、その金色の宝玉がある場所はどこにも記載されていない。なぜならここから生還したものがほとんどおらず、唯一帰ってきた人も途中で断念したせいで宝玉の在処を一切知らないらしい。

「もしかして・・・寒くて凍死しちゃったんじゃないの?」
「それはあるかもな」

道がわからず、帰る方向が特定できずに遭難してそのまま凍死、もしくは餓死してしまいクエストを失敗。その可能性は大いにある。

「やばくなったら言えよ」
「レオンもね」

ラウルは凍死、俺は餓死、それぞれに注意していないと万が一が起こりうる可能性もある。ただどっちもわずかに違和感がある時点で言っておかないと手遅れになる可能性が高いので、より注意が必要なわけか。

「パパッと終わらせて帰ろうか」
「終わるといいね」

とりあえずそれらしきところを片っ端から探してみることにした。さてさて、無事に帰ることができるかね。



















シリルside

「そういえばシェリア」
「どうしたの?」

カノッコ村を目指して駅から歩き出したんだけど、とあることが気になったので確認してみることにした。

「依頼主は今どこにいるの?」

村は山賊たちに占拠されていると依頼書には書いてあった。だから、助けを求めてきた村の人たちはどこにいるのか、それが気掛かりで仕方ない。

「村の近くの山奥に隠れて暮らしてるんだって。だからそこに一度行ってみようと思うの」

村人たちの居場所もちゃんと把握できているらしい。どれだけの人が無事なのかはわからないけど、とにかく大丈夫ならよかった。

「山賊なら山で暮らしてればいいのに~」
「山賊のほうが表現しやすいからじゃないの?」
「そうかもですね!!」

山賊とは主に山を拠点に活動する盗賊のことなんだけど、元々山で活動していた組織が降りてきたと推測されるからそう呼んでいるんだろう。でも、山賊なら山賊らしく山で活動していた方が動きやすいと思うけど・・・なんで近くの村を乗っとるなんて真似したんだ?

「あたしたちでそんな奴ら倒しちゃうもん!!」
「うん!!悪い人たちは懲らしめないとね!!」

シェリアに乗せられてかウェンディまでテンションが上がってきている。レオンに負けたくない気持ちは大いに賛同できるけど、二人が気合い入ってるとドジッてしまいそうで怖いところがある。だからといって、抑えようとしても収まるとは思えないしどうすることもできないんだけど。

「山にいるっていうのはいいんだけどさ・・・」

助けを求める依頼主のいる場所を探して山の中を彷徨いているんだけど、どこもかしこも木ばかり。人がいるようには思えないんだけど・・・

「!!」

そう考えながら人の匂いを探っていると、木の上からある匂いがすることに気付いた。

「危ない!!」
「「キャッ!!」」

先を行く二人を後ろから押し倒す。その真上、二人の頭部があった場所を銃弾が通り過ぎていく。

「そこか!!」

銃弾の匂い、飛んできた角度からおおよその居場所を突き止め水の手の平サイズのボールを作り出し投じる。

ゴンッ

「うわあっ!!」

鈍い音とともに木々を折りながら人が落下してくる。依頼内容にあった山賊かと思い捕まえようとしたが・・・

「え?」

動き出そうとした体をすぐさま止める。

「子ども?」

木から落ちてきた、俺たちを狙い撃ちしてきたのはどうみても子ども・・・俺たちよりも小さいことから、山賊の手先とは到底思いないんだけど・・・

「いってぇ・・・何すんだよ!!」
「それはこっちのセリフ!!」

受け身を取る技術などなかったようで、激痛の走る部位を押さえながら怒鳴り散らしてくる少年。いやいや、先に仕掛けてきたのは君だから怒鳴りたいのはこっちなんだよ。

「アロワ!!」

しかし、なぜこの子が攻撃を仕掛けてきたのかわからずどう処理しようか考えていると、俺たちの後ろから少女の声が聞こえたので振り返る。

「あ・・・」

俺たちを見て立ち止まる少女。シェリアと同い年くらいかな?そんな印象を与える彼女は、しばらく立ち止まった後、何かを決心したように脇を通りすぎていき地面にお尻を着けたままの少年を抱き締める。

「大変失礼なことをしてしまい申し訳ありません!!お願いですから殺さないで」

それと同時に地面に膝をつけ頭を垂らし涙ながらに命乞いをしてくる少女。少年の方も彼女に無理矢理頭を下げさせられており、あまりのことに目を点にしている。

「えっと・・・」
「頭を上げてもらえませんか?」

なんで命乞いされているのかわからないので説明が欲しく、土下座をやめてほしいところなんだけど二人は一行に聞き入れてくれず頭を上げてくれない。

「あの・・・何か勘違いしていませんか?」
「かん・・・違い?」

困り果てているとウェンディが後ろから顔を覗かせそう言う。それを聞いた少女は恐る恐る顔を上げてキョトンとした顔をしていた。

「私たち、あなたたちを殺したりなんかしませんよ?」
「え・・・そうなんですか?」

エンジェルボイスだからなのか相手の心を徐々に開いていってくれる天竜。ここはしばらく彼女に任せることにしようか、俺たちが割って入るとまたややこしくなりそうだし。

「山賊たちじゃ・・・ないんですか?」
「違いますよ!!」

あらぬ誤解を受けていたことに驚愕して少女の声が大きくなる。でも、二人はそれに怯えるようなことはなく、俺たちの顔をゆっくりと見回しホッと一呼吸置く。

「なんだ・・・違うんだ・・・」
「女の子しかいないじゃん」
「おい!!」

なんとなく山賊=男の印象があるから、女の子だと候補から外されるのは同意できるんだけど、女の子しかいないというのは聞き逃せない。確かに女子率は高いけども!!

「うん!!みんな女の子だから心配しないで」
「山賊じゃないからね」
「ウェンディ!!シェリア!!」

落ち着けるためなのはわかっているんだけど、二人までそんなことを言うのは悲しすぎる。俺の扱いって一体どうなっているんだろうか・・・

「ここにいると危ないですよ」

そして、誤解が解けたのと同時に注意をしてくる女の子。それを聞いてある推測が頭の中を過った。

「もしかして二人はカノッコ村の人?」
「え?えぇ・・・」

話の流れやここまで危機感を持っていることから彼女たちは俺たちに依頼を出したカノッコ村の人なんじゃないかと思って尋ねてみると、やはりその通りだった。

「あたしたち、依頼を受けてきた蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の魔導士です」
「「えぇ!?」」

シェリアの言葉を聞いて目玉が飛び出るのではないかというほど驚いている二人。驚きすぎ驚きすぎ。

「姉ちゃん!!こんな子どもばっかりで大丈夫なの!?」
「で・・・でも魔導士だし・・・」

今まで何人も失敗していることは村全体で把握しているはずだから、俺たちみたいな子どもが来たら不安になるのもうなずける。二人ともこちらを見ながらコソコソと何か話しているのがその証拠だろう。

「他の皆さんはどちらにいるんですか?」
「・・・こ・・・こちらです」

一瞬迷いが生じたようだったが、信じることにして他の村人たちの元へと案内してくれることになった。でも、前を歩く二人の不安はなくなることがなく、チラチラと付いてきている俺たちを見ながら村人たちの元へと向かった。

















「ただいま戻りました」
「おおっ!!二人とも無事だったか」

木々が先程までよりも深くなった場所、上から見ると木の葉で中の様子が隠れそうな、そんな場所にカノッコ村の人たちは隠れていた。

「ん?その子たちは?」

帰ってきた二人を温かく出迎えた白髪の老人、彼は彼女たちの後ろについてきていた俺たちを訝しげな目で見ていた。

「依頼を受けて来ました、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の魔導士です」
「!!君たちが?」

先の二人と同様に驚愕しているおじいさん。だけど、彼は前の少女たちとは違い、俺たちを見た後その表情が和らいでいく。

「以前何かで見たような気がするのぅ」

たぶん大魔闘演武の際に、どこかの魔水晶(ラクリマ)で見たのかもしれない。それを記憶の片隅に覚えていた老人は、任せて大丈夫と考えてくれるらしくことの次第を話してくれる。

「え?たったの五人ですか?」

しかし、話を聞いていて思わずキョトンとしてしまった。なぜならこの村を占拠しているのはわずか五人の賊らしいからだ。てっきりもっと大人数で襲ってきたと思っていたんだけど、これには驚きしかない。

「最初は四人だったんですが、あとから一人合流してきたらしくて・・・」

村に襲撃してきた際は四人だったが、つい最近・・・他のギルドの人が討伐に来た時に聞いた話だと一人増えて五人になっているとのことだった。

「その五人がとにかく強くて・・・」
「人数が少ないから逃げてくることはできたんだけど・・・」

老人が話している間にその後ろへとやって来ていた村の大人たちが悔しそうな表情でそう言う。

「でも五人って・・・」」

たかが五人と侮りそうなところではあるが、その人数で今まで多くの敵を退けてきたと考えるとかなりの強敵であることが容易に想像できる。

「一度様子見に行った方がいいかもしれないわね」
「僕もそう思う~」
「私も賛成です!!」

口頭だけでの情報ではどれくらいの山賊なのか想像できないところがある。なので、シャルルたちの言う通りどんな人物か見に行く必要があると思う。

「俺が見てくるよ。ウェンディたちは見張りをお願い」
「うん!!わかった!!」

見つかりにくくするために少人数の方がいい。それに、全員で行くともし山賊たちが村人に危害を加えようと企てていたら守ることができないし。

「セシリー、行くよ」
「わかった~」

いつでも逃げれるようにと逃走にセシリーを連れ、山の麓にある村へと降りていく俺たち。

「俺って・・・女の子ですよね?」
「えっと・・・言いにくいんですけど・・・」
「男なんです!!あれでも!!」
「「「「「えぇ!?」」」」」

後ろの方でとんでもなく失礼な会話が繰り広げられているような気がしたが、振り返ることはしない。ここで振り向いたらそれこそあいつらの思うツボな気がするし・・・




















「あれかな?」
「あれだよね~」

村の全貌を見渡せる位置で身を小さくし、草むらから様子を伺っている。しかし、どこにも敵の姿は見えず、静観な景色だけがそこには広がっていた。

「留守かな~?」
「五人だけだと手薄になりやすいのかもね」

そもそも全員で昼に活動していたら夜に村を奪い返されると考えるはず・・・そうなると、代わり番子に起きて見張りをしていることもあるかも。

「でも誰もいないと情報収集にならないよね」
「寝てても誰かの掛け声で起きるだろうしね~」

しかし、よく考えてみるとおかしな点が多数ある。なんでたかが五人で村一つを占領しなきゃいけないんだ?金品がほしいなら奪ってすぐに逃げてしまえばいいだけなのに。

(何か他に狙いが・・・!!)

顎に手を当てて考えていると、後ろから人の気配を察知し振り返る。そこには、こちら目掛けて武器を振るう男がいた。

「危ない!!」
「わう~!!」

セシリーを押し倒しギリギリで攻撃を回避する。頭の真上を通過した武器・・・それが直撃した木は、あまりの衝撃に一瞬のうちに斬り倒された。

「不審者はっけ~ん。お前ら逃げ・・・」

運悪く見張りをしていたと思われる山賊に見つかってしまい、慌ててその姿を確認する。だが、互いに相手の顔を見て一瞬固まった。

「「「あぁ~!!」」」

見覚えのある顔に指を指して声をあげる。そいつは以前、アイーアの街で取り逃がした山賊の一人だった。












 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
皆さん記憶に新しいであろう山賊さんの登場です。名前ちゃんと覚えてますか?

尻流「トリ」
冷温「鳥類」
変態「知らないし」

クエスト開始と同時に敵と遭遇しての戦闘開始です。ちなみに今回のストーリーは新たな取り組みをやってみようと考えているので作者の頭が追い付かなくなるかも・・・更新が遅くなったら困ってるんだと認識しておいてください。 
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