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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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何やってんだ

 
前書き
アイリーンとエルザは親子でしたね。てかそれだとアイリーン若すぎなんじゃ・・・気にしたら負けか。 

 
アイーアの街での依頼を終えて数日、俺たちはある依頼を受けとある場所に来ていた。

「ねぇ、なんでこんな依頼が来るわけ?」
「俺に聞くな」

スーツに身を包み髪型を整えた氷の神と、同じくスーツに身を包んだその従兄。

「なんでこんなことに・・・」

そして、二人と同じようにスーツを身に纏い、シークレットブーツで身長を嵩ましているのはこの俺、シリル・アデナウアー。髪型もなんとか男っぽくしているのだが、如何せん背丈が足りないせいか、全然女性を魅了できるような気がしない。

「大丈夫だよ、男の娘っぽくて人気出そうだよ」
「それは全く嬉しくねぇな!!」

俺たちと同じような格好をしているラウルがそう言う。言っておくがお前も小さいから、ショタが好きな相手にしか通用しない気がするぞ?

「皆さん、今日はよろしくお願いします」

俺たちが着替えを終えて更衣室から出ていくと、そこにはこのお店の支配人がピシッとした立ち姿で俺たちのことを待っており、全員が出てきてから深々と頭を下げる。

「して、これから俺たちは何をすればいいんだ?」

ネクタイが曲がっていないか確認しながら今回の依頼の詳細の説明を求めるリオンさん。今日俺たちが来ているのは隣街にあるホストクラブ。なぜこんな依頼を引き受けることになったのかというと・・・


















「「「ホスト!?」」」

昨日いつものようにギルドにやって来ると、待ち受けていたリオンさんに速攻で捕まった俺たちは彼の口から聞かされた言葉に目を見開く。

「あぁ。なんでも隣街のホストクラブで人手不足らしくてな。できるだけ顔立ちの整っている奴を貸してほしいと依頼が来た」

それはまたすごい依頼が来たもんだな・・・最近冬が近付いてきたせいか、気温が下がってきて体調を崩す人が多いらしく、様々なギルドの人にお願いして人のやりくりをしているらしい。

「あまりにも人がいなくてこの間は傭兵ギルドにまで依頼を出したらしくてな・・・引き受けてくれるはずもなかったが」
「でしょうね」

ありとあらゆる人たちに助っ人を頼んでいて、もうなんでそんな人に頼んだの?っていうところにまで依頼をしているらしいのだが、ホストなんてやったこともないのにいきなり店に出るなどできるはずもなく断られることが多いらしい。

「それで、ついには魔導士ギルドにまで助けを求めたってわけね」
「そうらしい」

リオンさんもどうしようか迷いはしたらしいが、困っている人を見捨てることができるはずもなく、俺たちを巻き込んで依頼を引き受けようと考えたらしい。

「ダメです!!シリルにそんなことさせられません!!」
「レオンだってまだそう言うのは早いよ!!」

ただ、首を縦に振らない者が約二名いたりする。俺とレオン、それぞれに抱き付いた少女たちは不安な気持ちに駆り立てられたらしく、その依頼を断らせようと躍起になっている。

「二人の気持ちもわかるが、ここは譲歩してくれないか?」

だけど、リオンさんも一人で行っても数の足しにならないのは重々わかっていたため、何とかして俺たちも一緒に連れていきたいらしくウェンディたちを説得している。もうこれどうすればいいのかな?

「シリル先輩需要あるんですか?」
「あら?そう言うのが好みの物好きな女もいるんじゃない?」
「物好きとか言わないの~」
「うん。趣味は人それぞれ」

影ではサクラたちが何とも失礼な会話をしているのが聞こえてくる。特にシャルルの言葉は悪意の塊でしかない。ちょっとボコボコにしてやりたい気分である。

「だったら私たちも行く!!」
「うん!!二人の見張り番してます!!」

すると、向こうは向こうで何ともややこしい結論を出そうとしていて一気にそちらに視線が移る。え?ウェンディたちも付いてくるの?

「裏方なら・・・大丈夫・・・か?」

これ以上ゴネられると面倒だと判断した青年は仕方ないといった感じでそれを了承していた。うわぁ・・・また面倒なことにやりそうな気がするな・・・


















「リオンさんはいいけど、俺たちでよかったのかな?」

支配人と会話をしているリオンさんの後ろでレオンにコソコソと耳打ちをする。彼は大人だしこういうのもできそうだけど、他の面子はぶっちゃけ子供っぽさが拭えない。果たしてこの人員で本当によかったのだろうか?

「いいんじゃないか?数合わせにさえなれば・・・」

興味が全然ないといった表情で頭をポリポリ掻いているレオン。せっかくセットした髪の毛が崩れるから、あんまりお前は頭を触らない方がいいと思う。

「大丈夫大丈夫!!なんとかなるよ!!」

それを見ていたラウルはもう開き直るしかないようで、とにかく頑張ろうと気張っているのが見てとれる。

「レオン、シリル、ラウル。接客の仕方を教えてくれるらしいから付いてきてくれ」
「「は~い」」
「了解」

先を行くリオンさんの後ろを付いていき、今日の仕事のやり方を教えてもらうことになった。あまり気は乗らないけど、ここまで来たらやるしかないのかなぁ・・・


















それから数時間後、接客のノウハウを教えられた俺たちはお店に出て実践をしてみることになった。

「いらっしゃいませ、お嬢様」

トークが出来るか不安があるという理由により、店に来たお客さんの案内役を担うことになっているレオン。彼の見た目はすごいいいので、来客した人のほとんどがレベルの高い店だと思っているらしく、嬉しそうな表情をしていた。

(実際は見た目だけの残念な奴なんだけどな)

もうあいつがトークができれば間違いなく人気No.1になれると思うけど、物事に興味を示すことがほとんどないせいか、会話を作るのが非常に下手くそなのである。天は二物を与えずというし、そこは諦めるしかないのかな?

「シリル、あそこの席に入ってくれ」
「わかりました」

お客さんを席に案内しているレオンを見ていたら、リオンさんから指示を出されたのでその席へと向かう。

(とは言ったものの、知らない人としゃべるのは緊張するなぁ)

ホストクラブなので相手は全て女性。しかも初対面の人ばかりの中で、盛り上げていくなんて俺にできるのだろうか?

「お待たせしました、お客様」

軽く会釈をして席へとつく。俺の席にはエルザさんたちくらいの年齢の女性が二人。本来なら同人数で対応するものなんだろうけど、人手不足なため今の時点では俺一人しかホストがいない状況になっている。

「あら♪可愛い子」
「新入りさん?」

常連と思われる二人の女性は俺のことを見てそう問いかける。

「はい!!今日から入りましたシリルと言います」

ニコッと爽やかな笑みを作って二人に自己紹介をする。本当は今日一日だけのはずだけど、その旨を伝えることもあるまいと新入りということにしておく。

「わぁ!!笑顔も可愛い!!」
「さっきの子もよかったし、今日はツイてるわね!!」

カッコいいじゃなくて可愛いというのが引っ掛かるが、あえて触れないでおこうかな。いや、むしろそれを利用して話を盛り上げた方がいいのかな?

「いえ、お二人の美しさには敵いません」

言ってるこっちが恥ずかしくなるようなセリフに思わず鳥肌が立った。さっき指導された通り相手を褒めようと言ってみたけど、恥ずかしくて顔から湯気が出てきそうだ。

「えぇ!!やっぱり?」
「よくわかってるねぇ」

受け流されるのかと思っていたら、二人はすでにどこかでお酒を飲んできていたらしく、ホロ酔い気味に頭を撫でてくる。と・・・とりあえず掴みはOK・・・かな?

「今お飲み物を出しますね」

コップに氷を入れてお酒と水を加えていく。見た感じで配分をするようにと言われたけど、俺の目があればバッチリ合わせられるぜ!!こんなところで魔法使うなって?気にしたら負けだよ、負け。

「どうぞ」

コースターをそれぞれの前に敷いてグラスを置く。ちなみに俺が持っているのはかなり薄くしたお酒だ。本当はお酒を飲んではいけない年齢だけど、飲まないと変な空気になってしまう恐れがあると言われたので、限りなく水に近いお酒にして対処することにした。

「ねぇ、そんなとこじゃなくて真ん中に来なよ」
「へ?」

言われてから気付いたが、俺がいる位置は二人の真ん中ではなく端の部分。そのため、片方のお客さんとは会話しやすいけど、もう片方のお客さんとは距離が離れている格好になっている。

「じゃ・・・じゃあ失礼して・・・」

断るのもおかしいので言われた通り二人の間へと腰掛ける。しかし、これが思わぬ事態を生むことになるとは、俺には全く予想できていなかった。

「あ!!近くで見ると肌も綺麗ね!!」
「!?」

不意に頬を触られ体がビクッとなってしまう。だが、それに相手は気付いていないようで、まるで人形でも観察するかのような視線で俺の顔をマジマジと見ていた。

「え?あの・・・」

吐息が当たるのではというほどに顔を近付けてくる女性に思わず後退りする。しかし、今の俺は間に挟まれているわけで・・・

「やだぁ!!緊張しなくて大丈夫!!」
「ヒャッ!!」

後ろにいたもう一人の女性に抱き締められ、動きを封じられてしまった。

「お!!お客様困ります!!」
「いいじゃんいいじゃん!!」
「これくらい大丈夫だって!!」

こんな仕事したことないからボディタッチがどこまで許されるのかわからないけど、二人は気にしちゃダメとふくよかな胸を押し寄せてくる。お客さんだから邪険に扱うわけにはいかないし、柔らかい感触と香水の匂いで飲んでもいないのに酔ってきてしまう。

「こちらの席、よろしいでしょうか?」

なんかもうどうでもよくなってきたところで、救いの神がやってくる。いや、救いの神というより、救いの女神か?

「あれ?あなたも新入りさん?」
「はい!!そっちの子と一緒に入りました」

俺と同じ程度の決して高いとは言われない背丈。腰元まである長い藍色の髪を縛り、胸を張って堂々としている――――

「ウェンデルです。よろしくお願いします」

どう見ても男装した女の子にしか見えない天空の巫女がそこにはいた。

(何やってんだウェンディ!!)

思わず叫びそうになった言葉を懸命に呑み込み、最初に俺が座っていた位置と反対の位置に腰掛けるウェンデル。似たようなタイプのホストの登場でどうなるのかと観察していると、ウェンデルの隣の女性が彼?に興味を示している。

「あなたも可愛いわね」
「ありがとうございます」

そりゃあ元々美少女なわけだし、可憐な見た目になるのは至極当然なこと。だが、彼女の目を見た瞬間、あることに気付いてしまった。

(ウェンディの目・・・笑ってねぇ!!)

笑顔で対応しているかと思っていたら、彼女の目は明らかにその表情とは真逆になっていた。俺にくっついていた二人を見てジェラシーが燃え上がったらしく、ここに乱入してきたというのがようやくわかった。

「あ、シリル。口に水が・・・」

殺気の沸き上がっている少女に恐怖を抱いていると、彼女が身を乗り出し持っていたハンカチで口元を拭ってくる。

「ちょっ!!ウェン――――」

客を差し置いて何をしているのかと注意しようとしたら、物凄い目で牽制されて声が出せない。蛇に睨まれたカエル状態になっており、されるがままでいるしかない。

「二人は仲いいのね」
「フフッ、可愛いわ」

仲間外れにされて機嫌を悪くしないかと二人の様子を観察すると、彼女たちはまだ幼さが残る二人がじゃれているのを見て癒されているみたい。もしかしたらBLっぽく見えているから嬉しそうなのかもしれないけど、本当はその真ぎゃ・・・いや、恋人同士のじゃれ合いなんだけどね。

「ウェンディ、もう大丈夫だから」

お客がいいからいいのかもしれないと一瞬思ったけど、これ以上は仕事に差し支える。そう判断した俺は彼女の耳に小声でそう呟き、押し返そうとする。

「シリルはあっちの方がいいの?」

しかし、彼女は顔を近づけたまま、お客さんには聞こえないように小さな声でそんなことを言ってくる。

「そんなわけないじゃん。ウェンディが一番だから」
「だって・・・」

自分の胸に手を当てて顔をうつむけるウェンディ。だけど、これはあくまで仕事なわけで、相手が綺麗な大人だからとか、胸が大きいからとか全然気にしていない。俺にとってはウェンディが一番大切な存在だから。

「後で言うこと何でも聞くから!!ね?」
「それならいいよ!!」

両手を合わせ懇願すると彼女は納得してくれたらしく体を引っ込め元の位置へと腰掛ける。

「何何?二人は怪しい関係?」
「えぇ!?」

元の状態に戻したかと思ったら、そのまま仕事に戻れるような生易しいことはあるはずなかった。俺の右隣、つまりウェンディとは逆の位置に座っている女性がさっきのやり取りの長さで何かを感じ取ったようで、ニヤニヤしながら問い掛けてくる。

「二人とも可愛いから、私はアリだと思うなぁ」
「えっ・・・と・・・」

酔いすぎて思考がおかしくなっているのか、はたまた元からこうなのかわからないけど彼女の脳が腐りかけていることは何となく理解できた。助けを求めようとウェンディの方を見ると、彼女はすでに違う女性と盛り上がっており割り込んでいくことができそうにない。

「いやいや、そういうのじゃないですよぉ。お客様はいい人いないんですか?」

こうなったら自分で乗り切るしかないと、適当に否定して話題を反らしに掛かる。

「えへへ♪実はね・・・」





















それからたくさんのお客さんの相手を終え、営業終了時間っとなったホストクラブ。最初のお客さんから今の彼氏さんのお話を聞かされたけど、いい人いるならこんなとこに来ちゃダメなんじゃないかな?よくわからないけど。

「つ・・・疲れたぁ・・・」
「お疲れ様~」

慣れない仕事に疲労の色が見えているラウルはセシリーから労いの言葉をかけられ、体内のお酒を薄めるための水に手を伸ばしていた。

「眠い・・・」
「こんな時間起きてないもんね」

案内役に徹していたレオンは普段起きていない時間帯とあり、ショボショボとした目を擦り帰り支度をしている。俺も彼と同じだから、早く帰ってベッドに入りたい。

「よし!!シリル!!行くよ!!」
「え!?」

帰り支度を早々に終え、他のみんなを待っていると突然ウェンディから手を引かれる。

「ちょっと!?ウェンディ!?」
「仕事終わったら何でも言うこと聞いてくれるんでしょ?」

勝手に接客に変身し、同じ業務をこなしていたはずの少女はその疲れを感じさせないほどに生き生きとしており、これから朝明けの街を探索しようと言い出したのだ。

「え!?ウソでしょ!?誰か!!ダレカタスケテー!!」

出口から飛び出そうとしているウェンディに引っ張られながら仲間たちに助けを求めるが、みんな疲れていて動きたくないらしく、見てみぬフリをされてしまった。その後俺たちは、ウェンディの体力が尽きるまで街の中を探索し、家に帰ってきたのはその日の夜になってからだった。








 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
いつもは百合ばっかりだからBLが書きたくなった今回の話。実際は百合なんだけどね。

シリル「百合じゃねぇって言ってんだろ!!」

次からはオリジナルの長編をしようと思ってます。構想は冥府の門(タルタロス)の時からずっと考えてたからそれなりの物にはなってると思うけど・・・細かいところはいつも通り書きながらって感じかな? 
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