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IS ーインフィニット・ストラトスー 〜英雄束ねし者〜

作者:龍牙
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19話『トーナメント開始』

「そうか、そっちの方はまだ大丈夫か?」

『ああ、こっちの事はオレ達に任せて、お前はトーナメントに出るんだろ? 頑張れよ』

「サンキュー、太一」

 キャノンビーモンの一件でデジタルワールドでのデジモン誘拐が起こっているのではと予想して、太一達に警備と調査を頼んでいたが、幸か不幸か大規模な異変は起こっていない様子だった。
 ……寧ろ、始まりが静かなほど気付いた時には自体が大きくなっている事は多々有るので、返って後々厄介な事態に繋がるのでは? 等と思うと不安も有るが、今は向こうの事は友人である太一達に任せるしかない。
 今は学園のトーナメントの方を気にするべきだろうし。

「ゼロ炎の追加装備の完成はクロンデジゾイドの人工精製の成功待ちか……」

 そう考えて先ほどまで太一と会話していたスマホをポケットの中に放り込んで、開発中のウイングゼロ炎の強化パーツへと意識を向ける。
 既に完成している新しい頭部ユニットは別として、メイン武装の製作に使用する人造クロンデジゾイドの精製に成功して居ない為、完成が遅れているゼロ炎の追加装備の開発状況を見てそう呟く。

『まあ、そう簡単にはいかんだろうな』

「確かに」

 デジヴァイスから聞こえてくるデュナスモンの言葉に同意する。デジタルワールドにのみ存在する超金属クロンデジゾイド。通常のランクの品でさえ究極体・完全体の中でも一部しか持って居らず、高位のクロンデジゾイドの武具を纏えるのは正に『最上級』の究極体と言える代物だ。
 人造とは言え簡単に精製できる代物では無い。通常の金属で代用すると言うアイディアも有るのだが……ある理由からそれは採用されていない。

「まあ、暫くはヴレイブを使えば問題ないか……それに」

 今のゼロ炎でも十分過ぎるだけのスペックを持っている。寧ろ、試合として対IS戦には下手に使えないシステムを二つも搭載しているのだから、はっきり言って危険極まりない。
 そして、その一方でヴレイブ専用の追加装備である二つの複合武装の完成も近い……其方は余計なトラブルさえなければトーナメントには十分に間に合うだろう。

(……G-アームズのオペレーション『シャドウ・フレア』の決行も近いからな……)

 秘密裏に行なうデュノア社への襲撃作戦『シャドウ・フレア』。其方もトーナメントの開催に合せて決行されるらしい。最優先はインフラックスの奪還の一点なのだが、警戒している組織との繋がりがあれば、上手くその尻尾を掴めれば良いのに、と何度も思ってしまう。

「まあ、どっちにしてもトーナメントには間に合わないだろうからな」

 そもそも四季の為だけの機体であるヴレイブとゼロ炎だが、そのデータのフィードバックを受けてインフラックスの様な機体や量産機の開発に活かされている。DEMで開発された新型の武装のテストもヴレイブで行なっていると言う訳でもある。

「……っと、後は観戦に来る各国の政府や企業の関係者か……」

 今回のトーナメントは外部からの招待客も居る。ヴレイブを通じてDEM製の機体の優秀さを見せるのは良いが、当のDEMも学園側からトーナメントの観戦に招待されているが完全に不参加である。四季の晴れの舞台で公式戦初参加でも有るが、これはDEM社の持っているIS学園側の防衛戦力に対する不信感の表れからである。

 各国政府や企業としては優秀なIS操縦者のスカウトや自国の代表候補生の能力の評価の為となる。
 その為、一年生では将来のための最初の関門となる……一斑の生徒は此処でしっかりとした結果を出せれば卒業後の成功にも繋がり、逆に代表候補生は無様な試合を見せてしまえば代表候補生の地位も専用機も失う危険もある。
 更に言えば今年の一年の試合は、世界初の男性操縦者三人が参加する初めての大規模な試合なのだから、その分世間からの注目も強く集まる事だろう。何人かの生徒は『第三世代の量産機が有ればよかったのに』等と残念がっている者も多い。

 四季にとって『優勝』の二文字は詩乃の為に捧げると誓っているので優勝以外は眼中にないが、それでも他の生徒の必死さも違うだろう。

「……今回は詩乃と約束している以上……負けるわけには行かない」

 彼女の為の勇者になると言う誓いである『Hi-νガンダム・ヴレイブ』と共に今回のトーナメントでは必ず優勝すると誓う。

『……最近、あの娘の友人達からの視線がきついな……』

『……四季、最近悲しませてるし』

 デュナスモンとギルモンの呟きに凍りつく四季。まあ、主に四季達三人との交際がトーナメントの賞品扱いされている事が原因ではあるが。……黙っていた四季も四季だが、女子間のネットワークで詩乃さんの耳に入って……と言う流れで知られてしまった。

「言わないでくれ……」

 悲しませてしまっていると言う自覚は有るが、流石に原因に身に覚えがないので対処も出来ないのが現状なのだ。
 まあ、その噂の原因と言うのは四季も知らないことだが、一人その事に頭を抱えている箒が秋八に対して『優勝したら付き合ってくれ』と言う言葉が原因であり、それが原因で四季が優勝を本気で狙う様になったのだから……哀れとしか言いようがない。

「……他にどんな武器を用意するべきか……」

 DEMで開発された武装の一覧に目を通しながらそう呟く。当然ながらDEMの規格である全身装甲(フルスキン)にあわせて有るが、どの武装も『打鉄』や『ラファール・リヴァイブ』の様な量産機を初めとした一般的なISにも装備可能な武装だ。
 DEM社製のISにしか装備できない武装は『専用武装』と呼ばれている。四季のヴレイブ・ブースター等が代表的な例だろう。
 近接様のブレードだけでも様々な種類があり、ミサイルやガトリング砲に単純なマシンガンまで存在している。

『下手な武装は止めて置いた方が良いんじゃないのか?』

「確かに……」

 デュナスモンの言葉に同意する。確かにデュナスモンの言う通り、四季の場合バズーカの様な武装よりもビームライフルの様な連射が効く武器を好む。
 元々基本武装だけで高いレベルに纏っているヴレイブなだけに下手な武装の追加はバランスを崩しかねない。……そもそも、ブレードとビームサーベルが二本有るのだから、近接武装の追加は殆ど必要ないだろう。

「武装の追加も複合兵装の完成が終われば問題もないか」

『そうなるな。まあ、奥の手も使えるのだし、余計な武器は必要ないだろう』

 四季の言葉にデュナスモンが同意する。目の前のモニターには大量の武装をゴテゴテしく装備したヴレイブのデータが表示されている。……はっきり言ってバランスが滅茶苦茶だ。









(くそっ! なんでこうなるんだよ!?)

 苛立ち交じりで心の中で叫ぶ秋八。当然ながら彼は今回のルールが発表になって早々に箒とタッグを組んでいる。そして、彼の予想通り一夏とシャルロットの二人が組んでいる。
 セシリアと鈴が不参加で無いと言うのは予想外だったが、あとは抽選でラウラと組むのが誰になるのか確認しようとしたら……一般生徒では無く何故か四季だった。少なくとも四季とラウラと組む事は無いだろうと考えていたのだが、二人してタッグ相手を選ばずに抽選でこの二人が組む事になると言うのは完全に予想外の事だ。

 彼の知る知識ではラウラの実力はこの時点では一年生の専用機持ちの中でも最強だったはずであり、己の居る世界では一組の専用機持ち全員に全勝している四季の存在もある。はっきり言ってこの時点で優勝が確定してしまうレベルの最強クラスのコンビである。

(試合はタッグなんだ! あの二人が幾ら個人で強いからってタッグで強いとは限らないはずだ!!!)

 そう考えて精神を落ち着かせると一度深呼吸し、箒へと視線を向ける。

「それじゃあ、今日も連携の訓練をしようか」

「あ、ああ。だが、その……私は」

「大丈夫だよ、武装が近接系だけだから、簡単な連携の打ち合わせは剣道場や部屋でも出来るから。あとは箒が借りられた時、打ち合わせ通り動けるようにすれば良いんだからさ。さっ、時間は有限だから効率よくやろうか」

「あ、ああ、そうだな」

 内心で『さっさと姉に強請って専用機を貰え』と考えながらも笑顔を浮べて、着々と箒の篭絡を続けている。既に必要もないだろうが、秋八は意外と釣った魚に餌を与えるタイプかもしれない。

(……下手に雑に扱ってこいつに手を噛まれても面倒だ。まったく、ゲームで例えるならステータスは上がっても常にレベル一の状態のパートナーって言うのも本当に面倒だな……さっさと姉に強請れば良いのに……)

 それでも大事なコレクションの一人であり、『天災』を篭絡する餌でもあるのだから……色々と彼女の持っている価値は高く、失くすには惜しい物だ。そんな事を思いながらも表情には出していない。








 そんな感じで一夏を除いた二人の男性操縦者のトーナメント前の決意であるが……四季は四季でその後、己の運を心底疑問に思っていた。……まあ、一夏の所では……シャルロット相手に一夏が無意識でフラグ立ててたり、鈴にまで正体知られて四季の知らない所で更に一人秘密を知る者が増えていたりと、特に本来の歴史と大きく変わらないので、此処では省略しておこう。








 DEMフランス支社。深夜の月の光に照らされ、此処の防衛を任されているガンダム達に見送られ、G-アームズのメンバーと合流し、補給を終えた遊撃部隊の戦艦は空へと飛び立っていく。

 漆黒の空に飛び立った戦艦の向かう先に有るのはデュノア社の本社。その上空で戦艦のカタパルトが開き、そこに全身を黒く染めた『シャドウ・フレア』モードのキャプテンガンダムをリーダーとしたガンダム達が現れる。ガンセイヴァーΖ、ガンイーグルν、ガンパンツァーΖΖ、ガンダイバー、そしてキャプテンガンダム。
 隠密行動に適した姿ながらもフル装備のG-アームズのメンバーの眼下にあるのはデュノア社の本社ビル。

『3』

 彼らが無言のままカウントダウンが開始される。

「先頭は可能な限り回避、オレ達の目的は情報だ。みんな、それを忘れるなよ」

『2』

「「「「「了解!」」」」」

『1』

 彼らが作戦の内容を確認する中、カウントダウンは進む。そして、

『0』

「GO!」

 決行の合図が響いた瞬間、キャプテンガンダムの号令で六人のガンダム達がカタパルトから飛び出していく。一斉に飛び出していくG-アームズのメンバーが飛び出した姿を確認すると、艦はゆっくりとその場を離れていく。
 流石にステルス性が高く無音で飛んでいて、夜とは言っても大型の戦艦が飛行している姿は目立つ事この上ない。空戦部隊の二人以外のメンバーが自由に飛べない事を考慮しての艦の出撃だ。長時間の飛行はなるべく避けるべきとの判断だ。

「決行したか」

「はい」

 そんな艦の様子を伺っている影が二つ。円卓の騎士の一角を担う『闇騎士マーク2』と新生武者五人衆の一人『武者百士鬼改』の二人だ。
 闇騎士は流星の騎士団の一人である嵐騎士の兄であり、敵側に洗脳されていた際には暗殺部隊の隊長を任されるほどの実力者であり、百士鬼改も母より忍びの技を受け継いでいる。共に隠密行動は専門分野である為、シャドウ・フレアの補佐の為にデュノア社の正面玄関付近で待機している訳だ。

「では、オレ達も動くぞ」

「分かりました」

 音もなく姿を消す二人のガンダム。一階及び地下階の探索を担当するのはこの二人となる。囮及び二階より上の階の探索を担当するのがG-アームズのメンバーとなる。恐らく二階より上の階には探している情報は少ないだろうと考えていたために、重要な情報は地下に有ると推測している。

 一斉に飛び出したG-アームズのメンバーに続き闇騎士と百士鬼改は音もなくデュノア社に侵入する。

 ……それから数分後……闇騎士と百士鬼改が地下施設への入口を見つけた瞬間、デュノア社の本社が内部から吹き飛んだ。

 内部からの爆発では周囲の人々も気付いても無理は無いだろう。とっさに危険を察知して外に飛び出す事に成功したガンダム達は無事だったが、デュノア社の本社ビルは既に瓦礫の山となっている。

 何が起こったのかと彼らが瓦礫の山へと注意深く視線を向けている中、再び内部から巨大な黒い龍の頭が飛び出してくる。巨大なドラゴン型のモンスターかと警戒するガンダム達だが、飛び出した頭が地面に叩きつけられるとデュノア社の地下から漆黒の巨体が現れる。片腕には狼の頭を持った巨大な騎士を思わせる巨人……『オメガモンズワルド』はマントを翻し飛び去っていった。

 後に残ったのは残骸と化したデュノア社のビルだった物と、警戒しているガンダム達だけだった。








 ……さて、G-アームズのデュノア社襲撃より時は過ぎ、トーナメントの時を迎えていた。

 控え室で互いに無言のまま前の試合をモニターで眺めている四季とラウラの二人。モニターに映っているのは秋八と箒のタッグと一般生徒二人のタッグの試合。その前ではセシリアと鈴のタッグの試合も行なわれていた。
 やはり、専用機持ちの秋八なら専用機を持たない代表候補生でもない一般の生徒では相手にならないだろう。危なげなく試合を終えていた。

(……今更だけど日程に無理が有るな)

 招待客の都合もあるのだから仕方ないと言えば仕方ないが、専用機を持たない生徒のISは当然ながら学園に配備されている量産機である打鉄とラファール・リヴァイブだ。
 当然ながら各種最低四機程度は存在しているだろうが、それでも機体のダメージは試合毎に蓄積していく。学園専属の整備員や教師、整備専攻の生徒達が総出で修理しているのだろうが、それでも無視できるものではない。

(まあ、オレが気にする必要は無いか)

 そう考えて先ほどまでの思考を斬り捨てる。そもそも気にした所で何か出来るわけでもないのだから。四季としても整備は専門外だ。

「そろそろ時間だな」

「そうだな」

 ラウラの一言で意識を現実へと戻す。そもそも、元々会話するほど彼女との間柄は良好ではなかった筈だったりする。……それでも、何気に四季がIS学園での会話時間はラウラが実はセシリアに次いで二番目立ったりする。

(……一兄達が相手か。油断は出来ないかもな)

 例によって各国の国家代表・代表候補生の専用機のデータは何気に全てDEMのデータベースに存在している。
 シャルロットの専用機『ラファール・リヴァイブ・カスタム』。その名の通りデュノア社の製品であるラファールのカスタム機に当たる。
 ……現状、学園内に存在している専用機の中では数少ない第二世代機と記憶している。……ある意味一夏の白式や秋八の黒式とは対極に当たる豊富な後付武装(イコライザ)が特徴的と言える。……拡張性を犠牲にした近接特化の白式の相方としては良い組み合わせだろう。

 確かに一度四季は一夏に勝っている。……だが、その後の僅かな期間で四季の『回羅旋斬』を見様見真似で会得した爆発力と言うべきであろう、才覚。はっきり言って四季としては世間では天才だ神童だとか言われている秋八よりも一夏の方がよほど才能が有ると思っている。

「勝ちたかったら何もせずにいることだな。私が全て一人で倒してやる」

「でも、一兄もドイツの専用機の全能力知ってるぞ」

 己の強さへの自負からか、四季へとそう言い切ったラウラの顔が凍りつく。

「お前か!? また、お前の仕業か!? 他所の国の機密をベラベラと喋る趣味でもあるのか!?」

「いや、セシリアと鈴姉と一兄と一緒に訓練した序でに零落白夜のちょっとした応用の一例として……」

 つまり、セシリアと鈴も全て知っていると言う事になる。だが、秋八と箒は知らないし、知っていたとしても四季が喋ったわけではない。

「応用……私の……っ!? まさか……」

「序でに相手はそれに対して堂対応するのかの一例も挙げておいた」

「お前は私の国に対して何か恨みでも有るのかぁ!?」

 涙目になって怒鳴るラウラだが、四季は気まずそうに視線を逸らす。

「いや、セシリアと鈴の機体の事も全スペック把握している上に喋ったぞ」

「……お前は機密と言う言葉を知っているのか?」

「知っているけど、オレの母国は日本であってドイツでもイギリスでも中国でもないし、所属はDEMだからな」

 単なる一企業……千冬(ブリュンヒルデ)と言う絶対に敵に回したくないであろう後ろ盾を持つ一夏と秋八と違って、後ろ盾が一企業と言う四季が研究材料にならない点は……独自のルート……主にガンダム達の力によって入手した各国の機密情報がある。
 下手に四季に手を出したら己の国の最新鋭の情報が……それこそ、何人もの人間が命を賭してでも守るべきであろう重大な情報が簡単に全世界に公開される事になる。四季が抵抗なく各国のISの情報を喋っているのも、彼女達を通じて国の上のほうへの一種の脅しとも言える。……最低でもその程度の情報はこっちの手にあるぞ、と言う。
 まあ、それでも四季を研究材料にしようとした者もいたが、そんな連中は研究所毎物理的に消された挙げ句社会的にも抹消されたそうな……。
 まあ、それがDEMの悪名が刻まれる原因ではあるが。

「……では、私も情報の開示を求めても良いと言うことになるのか?」

「聞かれれば、な」

 四季の返答に頭を抱えたくなるラウラだった。彼女も軍人であるが故に四季の持っている情報の重さは理解している。……改めてDEMを敵に廻したく無いと言う方針を採っている上の考えを僅かながらに理解してしまったわけだ。

「それじゃあ、ピットで会おう」

「何処へ行く気だ?」

「試合前には一人で集中したい」

 そう言って手をヒラヒラと振って控え室を出て行く四季を『そうか』の一言で見送るラウラだった。








 自販機を見つけるとコーヒーを買って壁に背中を預けて口を付ける。

「ふぅ」

 今回のトーナメントは四季としては絶対に勝つと決めている為に余計な気負いが入ってしまっている。

「それで、何時まで其処に居る気ですか?」

 気配を感じて其方へと問いかける。

「ふふっ、気付かれてたのね」

 其処に居るのは三年生と思わしき制服の透き通るような水色の髪が特徴的な一人の女性。見るからに悪戯好きな雰囲気からチェシャ猫の様な印象を受ける。

(タイプは違っても猫の様な所と言う点が良く似てるか、詩乃に)

 真っ先に詩乃さんに思考が行く辺り四季の中での彼女への愛情が伺える。

「ふふっ、私は更識楯無よ」

「っ!? ああ、あんたが、ね」

 『更識楯無』の名前に一瞬だけ殺意が湧く。……が、直ぐにそれを霧散させる。彼女の家に於けるその名の意味は理解しているのだ……故に直接的に彼女とは因縁は無い。

「……それで、態々五峰の関係者に対してその名前名乗るなんて……何を考えてるんですか、先輩?」

「ふふっ、IS学園の生徒会長として一年生最強と名高い君に興味が有ったのよ。……それに更識と貴方のお義父さんの間の因縁くらいはしっているわ」

「……まあ、オレとしても許す気は無い事実ですけどね」

 『オレが義母と呼んでいたかも知れない相手を殺したのだから』と冷たい殺意を乗せて呟く。

「まあ、こうして会って見ると結構好きなタイプですね。……二つほど理由がなければ」

「なぁんだ、残念」

 『残念』と書かれた扇子を広げる楯無。まあ、少なくとも嫌うようなタイプの相手では無いと四季は考える。

 少なくとも昼休みに感じていた気配の主の一人であるのは間違いなく、相手の狙いが分からない事だけは不安だが。

 そんな訳でコレが後に『最強機動』の二つ名を冠する、とあるIS乗りの誕生の最初の一歩だったりする。 
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