何時かなれる
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第二章
「変わるんだ」
「本当に?」
「そうなれるの?」
「だから絶対にだ」
たにしの言葉は強いものでした。
「そんなことを思うんじゃない」
「なれないなんて」
「そうだ、なるんだ」
こうヤゴに言うのでした。
「絶対に」
「それは私もなのね」
「そうだぞ」
たにしはおたまじゃくしにも言いました。
「御前さん達は絶対になるんだ」
「蜻蛉に」
「蛙に」
「今はその為に身体を大きくするんだ」
こう二匹に言うのでした。
「もっと食べて身体を動かして、そして」
「そして?」
「そしてっていうと」
「勉強もするんだ」
それも忘れるなというのでした。
「いいな、じっかりとな」
「それじゃあ」
「今の私達は」
「蜻蛉や蛙になる用意をするんだ」
「なれるかなって思うよりも」
「そっちの方をするべきなのね」
「そうだ、わかったらな」
たにしは二匹に穏やかな声で言いました。
「よく食べて動いて勉強するんだ」
「うん、わかったよ」
「じゃあそうするわね」
二匹はたにしの言葉に頷いてでした、そのうえで。
田んぼの中で沢山食べて同じ田んぼの中にいる泥鰌やザリガニに色々なことを教えてもらって泳いでいきました、そうしているうちに。
ヤゴは大きくなってきておたまじゃくしもでした。
「足、出て来たね」
「ええ、後ろ足がね」
見ればおたまじゃくしには二本の足が生えてきています、しかもです。
「それで少しずつね」
「前足もだね」
「出て来てるわね」
「本当に蛙になってきてるね」
「そうね」
こうヤゴに言うのでした。
「そうなってきてるわ」
「そうだね」
「それとね」
「それと?」
「尻尾も何か」
おたまじゃくしのそれもというのです。
「縮んできているみたいね」
「そういえばそうだね」
ヤゴはおたまじゃくしのその尻尾も見て言いました。
「尻尾がね」
「だから私はね」
「蛙になるんだね、そして僕も」
「大きくなってきてるわね」
「段々ね」
田んぼの上、あぜ道の方を見て言うのでした。
「上がりたくなってきたよ」
「陸地に」
「何かこう思えてくるらしいんだ」
「貴方達は」
「それで陸地に出たらね」
その時はというのです。
「羽化してね」
「蜻蛉になるのね」
「そうなるって言われたよ、ザリガニさんに」
「そうなのね」
「だから僕はね」
「羽化をして」
「蜻蛉になるよ」
こうおたまじゃくしに言うのでした。
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