暗い黄金時代
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第三章
何とだ、少し試合に出てだ。
「あれっ、帰ったで」
「ちょっと出ただけでか」
「何やあいつ」
「どないなってるんや」
流石にこれはおかしいと誰もが思った、しかも。
グリーンウェルは引退した、この事態に阪神ファン以外の野球ファンは爆笑したが当の阪神ファン達は違った。
「何やあいつは!」
「中々来いひんでちょっと来て帰って引退か!」
「金返せ金!」
「幾ら金払った思うとんじゃ!」
契約金に年棒でだ。
「またかいな!」
「最近スカの助っ人ばかりやっちゅうのに!」
「こいつは最悪や!」
「国際詐欺ちゃうんか!」
怒り狂うファン達だった、だが最早阪神にとっては幸いと言うべきである最下位にはならずに済んだ。しかし。
その翌年はヤクルト、また次の年は横浜のそれぞれの優勝に『貢献』することになった。最下位でしかもだ。
「何でこんな負け方じゃ!」
「神宮でヤクルトに十七対一か!」
「何ちゅう恥ずかしい試合や!」
「九十一年の再現か!」
この年の六月阪神は十連敗した後やっと一勝したと思ったらその後七連敗をしている。そしてその七連敗の止めにヤクルトに十九対三で惨敗したことがある。この六月阪神はたった三勝しか出来なかったことも特筆すべきであろう。
「ファン舐めてんのか!」
「幾ら何でもないやろ!」
「何でヤクルトにここまで負けるねん!」
「野村覚えとけや!」
阪神に常に大勝利を収め嫌味を言う野村にも矛先が向かった。
「来年や!」
「来年こそはや!」
神宮にヤクルトファンの歓声と共に阪神ファン達の断末魔にも似た絶叫が轟いた。そしてその翌年は甲子園で。
「新庄三振かい!」
「佐々木のフォーク打てんか!」
「こっちはマシンガン打線に打たれてな!」
「こっちは手も足も出ん!」
「横浜優勝や!」
「三十八年振りや!」
「天国と地獄や!」
まさにそれだというのだ。
「暗黒時代やこっちは!」
「九十二年以外あかんやんか!」
「あの日本一が夢みたいや」
「嘘みたいやな」
「ほんまな」
「最下位街道驀進や!」
「止まることはないわ」
その最下位への道がというのだ、しかし。
このニュースにだ、彼等は復活した。
「えっ、新監督ノムさか!?」
「それホンマか?」
「ノムさんがうちの監督になるんか」
「阪神のか」
ヤクルトの監督だった野村克也が監督に就任すると聞いてだ、彼等は蘇った。墓場から出て来たゾンビの様に。
「これは期待出来るで」
「南海とヤクルトを優勝させてきたんや」
「知将やしな」
「しかも再生工場もある」
プラス要素がどんどん出て来た。
「来年は阪神優勝や」
「これはいけるで」
「ノムさんが来てくれたんや」
「猛虎復活やで」
誰もが思うことだった、そのうえで。
新外人達も迎えてそのシーズンを迎えたのだった。
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