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ナルキッソス

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第一章

                 ナルキッソス
 人だけでなく神々もニンフ達もどの者達が見てもだった、ナルキッソスは美しい少年だった。
 その為多くの人間、神々、ニンフ達が彼と求めた。だが。
 彼はいつもだ、悲しい顔をして言うのだった。
「申し訳ありませんが」
「またその言葉なのね」
 告白をした森のニンフも悲しい顔になった。
「貴方は」
「はい、私を想ってくれることは嬉しいのですが」
 長い睫毛に憂いを湛えた湖の目、巻き毛の金髪は豊かで短く刈って耳と項を見せている。高い鼻に雪の色の肌には薔薇の赤が差し込んでいる。細い顔で唇は紅色で小さい。
 中背であり女の様に華奢で細い肢体をしている、薄い生地の丈の短い服とサンダルがよく似合う姿である。
 その姿でだ、ナルキッソスはニンフに言うのだ。
「愛情というものが」
「わからないのね」
「はい、ですから」
 それ故にというのだ。
「私は貴女の、そして他の方の申し出も」
「受け入れられないのですか」
「若しもです」
 ナルキッソスはニンフにこうも言った、二人が今いる山の草原の上で。
「私が貴女の申し出を受けますと」
「是非受けて欲しいけれど」
「愛がなくとも」
「貴女と共にいられるのなら」
 彼女の想いをだ、ニンフは語った。
「貴女に愛がなくとも」
「それは出来ません」
 やはり悲しい顔でだ、ナルキッソスは答えた。
「それは貴女を傷つけてしまいます」
「貴女に私への愛がないなら」
「そうです、愛はです」
 それはというと。
「共になければ。弄んでしまいますので」
「私を弄びたくないと」
「はい、誰も」
 それ故にというのだ。
「私は何があってもです」
「私の願いを聞いてくれないのね」
「他の誰も」
「その人への想いがないから」
「そうです、ですから受けることは出来ないのです」 
 例え誰のものであってもというのだ。
「このこと、お許し下さい」
「許すも何も」
 ニンフは涙を落としそうな顔になりナルキッソスに答えた。
「私への想いがなく弄びもしないのなら」
「それならですか」
「許すも何も。何をしても」
 自分の恋が破れた、このことを感じ取りつつの言葉だ。
「仕方がないから」
「だからですか」
「許すも何も。ただ」
 ニンフが言うことは。
「さようなら」
「そう、ですか」
「私は貴方の前を去るわ」
 こう言ってだった、ナルキッソスの前から姿を消した。ナルキッソスはまだ愛を知らずそれが為に誰の告白も断っていた。
 そして羊飼いの仕事を続けていた、そんな中で。
 ある山で羊達を見ているとだ、遠くに。
 見事な金色の巻いた髪と白い何よりも白い肌、何処までも青い物憂げな瞳と細い顔に小さな唇に高い鼻を持つ華奢な少女を見た、その少女を見てだった。
 ナルキッソスは興味を覚えてだ、羊達と共に彼女のところに来て興味を感じた。
「もし」
「はい、何か」
「貴女は一体」
「私はこの近くの街に住んでいる人間の娘です」
「そうなのですか」
「はい、時々ここに来てです」
 そしてというのだ。 
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